第6話 野菜と日本の未来
企業活動というのは、言うまでもなく利潤の追求が目的であるが、資本主義というものが、かつてのように、あるいはいまもそうであるように?、人間疎外の元凶、社会悪の温床、あるいは戦争や環境破壊という「絶対悪」をも運命的に結果せざるを得ない呪われたイデオロギーだという…
人類はそういった旧弊な絶望的な認識を乗り越えて、企業という経済の構成単位をイデオロギーの枠組みにとらわれない、全く新しいものに変貌していくべきだ…
日菜子が日頃から考えているのは例えばそうした未来ビジョンのような漠然とした発想だった。
エコロジーや、SDG’sな発想は、企業倫理とかCO2排出量の逓減とか、最低限のルールとして、むしろネガティブな文脈で今は語られているが、現状を革新して、
さらに飛躍的に未来を薔薇色のものとしていくためには、例えば企業そのものがもっとクリエイティブで豊かな発想に裏打ちされた、極めてシュープリームな有機体であらねばならない…
環境や地球の未来を守ることをむしろ積極的な根本原理とするような、そういう発想の経営者でなければ生き残れない…企業が資本主義において活動し続ける社会であり続けるならば、そういう意識改革が不可欠ではないか?
古い言葉だが、そういう「緑色革命」、新たなそれを、日菜子は希求しているのだった。
植物という、地球において動物と相補関係にある存在。環境を守り、癒して、動物を優しく包み込むような、女性的な繊細さと静謐さを具えた存在。
日菜子は運命的にそういう地球のすべての生命の源のような、大いなる自然の申し子のような、植物と、とりわけ野菜というものに出会い、魅かれて、それに全人生を捧げるようになった。
それは日菜子にとって限りなく幸福な帰結で、いわば輝かしい天からの恩寵だと、日菜子はつくづく思うのだった。
<続く>
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