第2話 スーパー高麗人参
「野田農園」挙げての一大プロジェクト・「スーパー高麗人参品種改良・栽培計画」は、野田社長の陣頭指揮で、着々と進行していた。野田日菜子・通称「野菜ちゃん」の、柔軟で怜悧な発想と思考回路は、日々フル回転していて、その余人の追随を許さない決断力と実行力は、とても二十代のうら若き美女のそれとは思えなかった。
「高麗人参というのは千年以上前からその驚異的な薬効でとみに有名で、漢方薬の代表的な素材として珍重されてきました。…」
日菜子は定例のミーティングでプレゼン中だった。
いつものように野菜を連想させる明るいグリーンの、作業着風のユニフォーム姿だった。
童顔で、黒目勝ちの美貌の印象は、いかにも利発そうに表現力豊かに千変万化した。
「…滋養強壮や虚弱体質改善の漢方薬には例外なく配合されていて、生活習慣病の改善にも著効が確認されているのはご存じのとおりです。高麗人参が育った山には他の植物が生えなくなるなどという伝説もあるくらいに土地の栄養を根こそぎにするパワーがある。主な薬効成分はジンセノサイドというサポニン。その他にも38種類の有効成分が確認されています。最近の健康ブームで、サプリメントやハーブティーなどにもいろいろと製品化が進んでいて、ドラッグストアには高麗人参のドリンクなども主力商品になっていたりする。…」
日菜子は高麗人参についての蘊蓄を縷々延々披露して、オタネニンジンとも呼ばれるこのハーブが、いかに貴重で有用で、人類にとっての一種の”福音”とも言いうる奇跡の薬草であるかを力説した。
「それを踏まえたうえで、我が『野田農園』では、ご存じのようにプロジェクトを計画して、高麗人参の品種改良、夢の「スーパー高麗人参」の創造に取り組んでいます。そうしてこのほど、ある研究者の偶然の発見をもとにして、プロジェクトに一大進展エポックが生じたのです!」
日菜子は言葉を切って、居住まいを正し、しばらく虚空を見つめた。
<続>
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