野菜ちゃん
夢美瑠瑠
第1話 野田青果店へようこそ
(これは、今日の「野菜の日」にアメブロに投稿したものです)
掌編小説・『野菜ちゃん』
「野田青果店」は、郊外型の大型スーパーだった。直営の農園から仕入れてくる新鮮でバラエティに富んだ、豊富な品ぞろえの野菜や果物が、「売り」だった。
農園の規模はかなり大きくて、東京ドームがゆうに10個分入るくらいはあった。
有機農法で、害虫駆除にはバイオテクノロジーを応用していて、完全無農薬だった。
世界中の珍しい野菜やハーブも網羅していて、漢方薬も自家製で、安く大量生産できた。
近くの農業大学と提携していて、いかに栄養価と効率とコスパを挙げるかにも腐心していて、「超」スーパーフードの新種の野菜の栽培に成功して、新聞に載ったりもしていた。
安くて美味しくて栄養価も高い、安全新鮮いいことづくめの野菜と果物が評判を呼んで、「野田青果店」の業績はうなぎ登りに上がっていった。農園もどんどん整備されて、設備や農法は近代化というよりむしろ「未来化」という感じに革新されてきた。2年後にはなんとオーナー社長がフォーブズというアメリカの雑誌の「世界を変える100人の二十代」に選出されたりもした。…
そう、オーナー社長は、なんとまだ弱冠28歳の女性で、野田日菜子という童顔の美人だった。
名前も職業にどんぴしゃりの漢字で、ニックネームは「野菜ちゃん」だった。
勤勉で聡明な「野菜ちゃん」は、かなり名の通った大学で農学の修士号を取っていて、修士論文は「バイオファームの未来像のグランドデザイン」というタイトルで、これはもう今の日菜子の仕事にぴったりすぎるくらいの研究内容なのだった。
今、「野田農園」で、総力を挙げて取り組んでいる事業課題は、「高麗人参のスーパーフード化」だった。もともと「和漢の王様」と言われている高麗人参だが、その神秘的な薬効はまだまだ完全に解明されているとは言えなくて、なぜあらゆる慢性病などに著効を示すか等、研究の余地が大いにあった。
品種の改良で「スーパー高麗人参」という夢の野菜ができれば、もしかしたらそれは様々な不治の病をも癒えさせるような「奇跡の薬」にもなりうるかもしれない。
そこまでいかなくても”パワーアップした高麗人参”という謳い文句は計り知れない商品価値を生むに違いない。
「野田農園」発の夢の新野菜…空前絶後の目玉商品としてうってつけのタイトルとして、「スーパー高麗人参」の研究は着々と進んでいた…
<続く>
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