第8話 エピローグ

 俺は相変わらず家で仕事をしている。

 誰にも会わない孤独な日々。


 それでも、次第に孤独ともうまく付き合えるようになった。

 寂しくなったらセフレに電話して慰めてもらう。

 その中から誰かと結婚しようかな、なんて、淡い希望を抱きつつある。

 俺が結婚!

 まさか・・・。考えただけで照れる。

 しかし、コロナのせいで結婚したくなる人が増えているらしい。

 人は孤独に向き合うと、誰か一緒にいてくれる相手が欲しくなる。


 そんな時、珍しく電話がかかって来た。

 真理佳の番号だ。まだ、茶番を続けるのか。

 俺はおかしくなって電話に出た。


 しばらく話していて、最後に彼女は明るく言った。


「江田君!今から家突しちゃうからね!覚悟しといて」

「はは。〇〇〇洗って待ってるから。よろしく」

 俺は笑いながら答えた。あのおばさんの処女をもらってやるし、その話をゼミのメンバーにされて、笑われてもかまわない。そんなのどうだっていい。みんな暇人で、俺だってそう。


 髭をそり、シャワーを浴びて、風呂場でムダ毛を剃る。

 

 それから、30分後くらいにもう一回、同じ番号からかかってきた。

「もしもし」

 俺は半分笑いそうだった。

「まだ?俺、待ってんだけど・・・」

 沈黙があった。凍り付くような静寂。

「江田君?」

 沢柿の声だった。

「あ、どうした・・・?」

 俺は焦った。

「あのさあ、真理佳が死んじゃってさあ・・・!結局、助からなかった。俺も最後会えなくて」

 彼は泣いてた。ガチ泣きのようだった。俺はてっきりドッキリを仕掛けられていると思い込んでいた。

「え?」

 俺は固まった。さすがに人が亡くなったという設定は悪ふざけが過ぎるし、それに対して笑ったら人格を疑われる。

「この番号から、君の携帯に何回も連絡してるんだよね。誰がしたんだろうな・・・発信履歴に出てる時期って、あいつ入院してたんだけど。携帯、俺が持ってるし・・・。死ぬ直前も発信履歴あってさあ・・・。物理的に無理だよね。こういう現象って・・・君のことよっぽど好きだったのかなぁ・・・俺に電話しないで、君にかけるってどういうこと?」


 その後、沢柿のFacebookを見たら、妻が病気のため急死しましたと本当に書いてあった。


 俺は彼女が「今から行く」と言っていたのが怖くて仕方ない。

 

「江田君が何時に起きて、一日何回トイレに行って、ごはん何食べて、どんなテレビ見て、誰に電話して、週何回オナニーして・・・そういうのを見てるのが楽しくて仕方ないの!あはは!」


 俺の頭の中で彼女の声がこだまする。

 ずっと見られている気がする。


 ついでに言うが、あれから俺は彼女の処女をもう百回以上もらっている。 

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自由恋愛 連喜 @toushikibu

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