第4話 爪を立てた猫のような

僕は真っ暗な部屋で一人泣いていた。

ミカと灯が浮気した。

こんなに好きなのに。ネオン街の裏手に二人が入って行くのを見つけた。人気のないビル裏で、少し話してミカとが灯の首に手を回していたのを見た。そのから先は辛くて見てない。

だって思わないじゃないか。二人が、二人が…!

「う、うぅ」

玄関の鍵が空いた音がした。

(ミカだ)

電気の着いていない玄関の前に立ち塞がる。

「ただいま〜じゃなかった_ってシュウちゃん?どうしたの?電気つけないとくらいよ?」

とミカはニコニコやさしい笑顔で玄関の鍵を閉める。服装も可愛らしいワンピースでより怒りが増してきた。僕はミカに逃げられないように腕をドアに縫い付けて、服の上から肩に噛み付いた。跡がつくように、逃げられないように、血が出るくらい。

「いっ!」

「なんで灯と居たの?なんで?」

「トモ君?別に大した事じゃないよ」

「じゃあ、なんで抱き合うの?僕だけじないの?」

「シュウちゃん…」

何処か弱い声に僕は心底の怒りを覚えた。暗くて顔は見えない。でも、細い首を握る事は出来る。

「何で、よりによって灯なんだよ!」

「が!…し、ちゃ…ぐ…」

ミカの頬が僕に触れてハッとした。

(僕、今ミカを殺そうと…!)

そう思った瞬間体が震えて力が抜けていく。ミカは数回咳き込んで心配そうな声で、「シュウちゃん?」と呼びかける。

僕は駆け足で寝室に入ってミカを入れないようにドアに腰掛けて蹲る。

「うぅ、ぐずっ」

「シュウちゃん」

扉の向こうからミカの心配そうな声が呼びかける

「ミカ、別れよう」

「え?」

「逃げてるのはわかってる!でももう、僕には耐えられないよ。傷つくミカもミカを殴ってる自分も…だから別れてくれ!僕から逃げてくれ…!」

ミカの冷たいのか優しいのか分からない声で

「嫌だ」

聞こえた。

「嫌よ。私にはシュウちゃんしか居ないの。シュウちゃん、覚えてる?私達幼稚園出会ってるのよ?」

「どうでもいいだろ!」

「シュウちゃん、幼稚園の時、私はひとりぼっちで虐められてた。でも、シュウちゃんがシュウちゃんだけがあの時助けてくれたんだよ?」

「でも」

「私を一人にしないでよ。シュウちゃん…」

か弱くて今にも死にそうな声に思わずドアノブを回してまった。刹那、一気にドアが開かれミカが僕に抱きつく。

「開けてくれた!シュウちゃん!紛らわしい事してごめんね?シュウちゃんの事をお話してたの。嘘じゃないよ?ホントだよ?」

「う、うん」

「許してくれる?」

「うん…僕もごめん」

「良いよ」

ミカは僕の眼鏡を取ってそのまま唇をくっ付けてきた。

「このままシよ?我慢できない」

何だか、ミカに全部食べられそうな、そんな感じがした。

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