第2話 わかってる。最低だなんて。

大学内の食堂で僕は一人項垂れていた。

俺は屑だ。

自分でよくわかってる。彼女に暴力を振る人間なんてクソ以下だと思う。自分でわかってるんだ。なのになんで出来ない。

「おーい!修!」

「わっ!トモ…どうしたの?」

「それはこっちのセリフだよ。ぼーっとして」

と気さくに話し掛けてくれるのは親友の灯だ。

明るい短髪に市民バスケをやっていて、もうすぐある夏の全国大会に向けて、今猛特訓をしてるらしい。明るい灯は僕と違って色んな人から好かれる。

それに比べて僕は、

根暗だし、自信ないし、運動出来ないし。あんまし頭も良くないし。

なよなよしてて長い前髪の下に太い黒縁の眼鏡。

黒髪は肩にくくらいまで伸びたせいでより陰キャ感が増した。

「な、なんでもないよ」

「アホ。お前がなんでもないって言う時はなんかある時なんだよ」

僕の肩をバシバシ叩いて、隣に座る。

「…」

「言ってみろよ。それだけで楽になるかもしれねぇぜ?」

純粋な笑顔でそういう彼はすごく頼もしい。

(でも、言ったら…嫌われちゃう…そんなの、ヤダ)

「だ、大丈夫…ぼ、僕の事はほって置いて!」

席を立とうとした時、灯は僕の肩を掴んだ。

「おい待て!お前、最近…!」

「何してるの?」

間に綺麗で冷たい声が入ってきた。声の方を見ると、ミカがいた。綺麗な白髪のボブヘヤーに頬には大きなガーゼ。ピンク色の瞳。端正で愛嬌のある顔立ちが微笑む。

「シュウちゃん、何してるの?その人、お友達?」

「あ、えっと、うん。し、親友」

少し目を細めて見定めるようにトモを見るミカ。

「親友…初めまして。シュウちゃんの彼女です」

「ど、どうも」

同様する灯から離すように僕に抱き着くと、

「お話、まだある?」

「あ、いや」

灯は僕とミカを何度も見合せて、溜息を着く。

「ねぇよ。デートでもなんでも行ってこい」

「ありがと。行こ?シュウちゃん」

僕を引っ張って大学から出る。

「え、うん」

(何だか、ミカと灯、仲悪いのかな?)


ミカは僕の家でよくご飯を作る。僕は一人暮らしだし、料理は得意じゃないから凄く嬉しい。

「シュウちゃーん、お皿出してもらえる?」

「うん。今日は何?」

「パスタだよ」

「そうなんだ。ミカの作るご飯、全部美味しいから好きだよ」

「ふふ、ありがとう。私もシュウちゃんが美味しそうに食べるところ大好きだよ」

「あ、ありがとう」

お皿をおいて、パスタを盛りつけるミカを見る。家に置いてある黒い半袖と白い短パンの上下から伸びる綺麗な手足には似つかわしくない痣と包帯とガーゼが着いている。

「…」

「シュウちゃん?」

「ん?!あ、な、何?」

「大丈夫?嫌いなもの入ってた?」

「ううん!違うよ!そう、考え事しちゃって…ごめん、すぐ持ってくね!」

「うん…」

心配そうに頷いて調味料と飲み物をテーブルに並べ、手を合わせる。

「「いただきます」」

パスタを食べ始めると、

「あれ?その入れ物あったけ?」

ミカが持ってる胡椒入れが適当な安い入れ物から、可愛らしいアンティークものになっていた。

「これ?買ったの。あれ結構量の調整が難しくて…ダメだった?」

「良いよ」

「ありがとう。ねぇ、シュウちゃん」

「何?」

パスタを口に入れる。

「今日一緒にいた人、なんて言うの?」

「一緒にいた人?…灯の事かな?」

「うん。多分そう。すごく仲良いの?」

「うん。灯は高校からの友達」

「フーン。あの人、スポーツやってるのかな?」

「ん?嗚呼、市民バスケやってるよ凄いよね、主軸メンバーなんだよ。僕みたいなやつとは大違い」

「そんな事ないよ。シュウちゃんはすごく優しくてずっと、私の王子様なんだよ」

柔らかい白いボブヘヤーを耳にかけながら言うミカ。

「ミカだけだよ、そんなこと僕に言うのは」

「そうだね。私の王子様だもん」

「えぇ…」

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