第3話

結局、いつも私は昼まで寝て、起きたいときに起きて、出るとしたら夜で。

そんな1日をひたすらぐるぐると過ごす。


私は、みんなと話して、そしてただただ惰性で生きていて。

それでいいのかと不安になるときも多々あるけれど、一歩踏み出す勇気がどうしても出ないのだ。



無価値な自分に、外で居場所はあるのか。



意識してなくても両目から勝手に涙は溢れて、理由がわからないけど息が詰まる。

誰からもいらないと言われてるような、透明になってしまったような。



「あー、死にたい」



それしかない。頑張るってなんだろう?頑張ったら振り向いてもらえるの?謝るくらいなら言わないで。同情するなら理解してほしい。ただそれだけだ。



喉が渇いて、冷蔵庫からペットボトルを出して飲む。この狭い六畳間が、今の私の全てだ。

そして今日もネットへアクセスするのだ。しかし、今日は先約がいた。



ー涙鳥 さんが入室しました


「涙鳥さん!?」


最近見かけなくなっていた、涙鳥さんだった。文字だけでしか知らないけれど、すごく繊細そうな人の印象があるひとだった。



涙鳥:なかなか顔を出せなくてごめん。僕、こないだから入院してた。やっと退院したんだ。



え、涙鳥さん、入院してたんだ…。


驚いたけれども、すぐにそうだよな、とぼんやり思う。ここには、死にたいけど死んでない人しかいないのだ。そして、私はみんなのことを、ネットの中の姿しか知らない。どこに住んでて、何が好きで、本当の名前はとか、全然知らないのだ。


不意に怖くなった。急にみんなと話せなくなってしまったら、私はどうなってしまうのだろう…。

それでも、今は声をかけるのが優先だ。そう思い、指を滑らす。



ーイヌサフラン さんが入室しました

ー子猫 さんが入室しました


イヌサフラン:おかえりなさい。待ってたよ。

子猫:涙鳥ちゃーん!おかえり!!またいっぱい話そう!!


ー花緑青 さんが入室しました


花緑青:お久しぶりですね。体調は大丈夫ですか?無理しないでくださいね。

涙鳥:落ち着いたから、大丈夫だよ。うっかりお酒でOD(オーバードーズ。精神的苦痛から逃れるために薬を大量摂取すること)をしちゃってね。

子猫:もー!やりたくなったらここにきなさいー!やりたくなる気持ちはわかるけどさー!あたしもやっちゃったことあるもん。やー、うっかりうっかり。


あはは、と笑いながら言ってそうな子猫さんの言葉が続く。もっとも、本人の顔はわからないけれど。



花緑青:ODは私には合わなかったですねー…気持ち悪くなって終わってしまいましたね。

イヌサフラン:わかります。それから薬に対しての体質も私は変わっちゃいましたね…。



久々の涙鳥さんを労りながら、久々の仲間に嬉しくなりつつ夜が明けるまで、また私達は会話をするのだ。

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