第4話 あれ?俺……

響夜の手作りのチーズフォンデュを食べながら久しぶりに色々話した。と言ってもバイト先の愚痴だとかこの講義は嫌いだとか最近ハマってる漫画だとか、そんなものだ。そんなたわいもない話が凄く楽しい。響夜が喋るの上手いからかもしれない。それでも、楽しくて安心してしょうが無い。

そのせいで酒がどんどん進む。

「みーくん、飲みすぎじゃない?大丈夫?」

「いいよ!明日講義ないし、バイトも入れてないし!ふへへ」

「ふーん、ねぇ最近みーくん変わったよね」

「んあ?あ〜!ぽ…どぅきょにんのおかげだな!」

(危ねー口滑らすところだった…)

「同居人?」

「お、おん!同居人!!」

「最近距離が近くなった理由ってそれ?」

(ポメぬいの効果絶大)

「そう…だな!アイツのおかげだな!」

「アイツ…」

響夜は缶ビールを一気飲みすると、斜めから俺の隣に座りの直した。いつもの俺なら暴言でも吐いてすぐに離れていたが、今の俺は完全に酔って頭が回っていない。

「さっきのキスも"アイツ"と間違えたの?」

何時もより一つ低い声で言う。

「う…ん?そう、な」

それから先が言えなかった。

唇で、塞がれた。

キス、された。

少しして顔が離れた。響夜は凄く泣きそうな、やってしまったと言いたげな、そんな顔になっていた。

「ひび」

「ごめん!俺意外とよってるみたい!寝るね!帰りたかったら帰っていいよ!鍵開けっぱでいいし」

逃げるように、空き缶を片付け始める響夜。

「響夜…」

「ごめん」

「え?」

「ホントにごめん」


「っていう…」

「いや、アンタそれ…」

怜奈先輩は、茶色のナチュラルメイクが俺を引いた目で見る。薄茶色に染められ、巻かれた長髪の間から見えるのは大きい花のピアス。黒のフリルが着いたオフショルに白いレースの上着。きらつく金のブレスレット。高いヒールを鳴らして歩く姿は、美人そのものだ。

「え、気付いてないの?」

「え?」

「やっぱアンタ鈍感だわ」

次の日、響夜家から帰宅途中にバッタリ怜奈先輩と会った。俺のあまりの落ち込み様に驚いて話を聞いてもらっていた。

「…俺、嫌われましたかね…」

「は?」

「あの後、お互い一言も喋らなかったし、それに…確実に響夜を傷付けました」

「お互い様ね」

「え?」

「私も昔同性を好きになったことあんのよ」

「え?!」

「それでさ、抑えきれなくて告白したのそしたら相手、なんて言ったと思う?」

「…」

「「気持ち悪い」だってさ。私それが相当ショックだったし、友達にも、クラスメイトにすら戻れないってわかったて凄く苦しかった」

「…」

「ミク、アンタは私と同じ想いを其の、響夜君にさせる気?」

「っ…俺、」

「ミク!!」

と後ろから腕を引っ張られ体が後ろによろけた。

「響…夜?」

息を切らした響夜が立っていた。

「同居人ってその人?」

「え?」

先輩を睨みつけるように見る響夜。先輩は両手を上げて無害な事を示す。

「違う。私は後輩の相談に乗っただけ。気になるならミクに聞いて見れば?」

と俺に視線を向け顔で指示する。見たこともないほど焦る響夜に何度も頷いた。

「う、うん。ホント」

「あ!このままミクの家に行けば〜?そしたら同居人とやらに会えるかもよ〜?」

「なっ!先輩!」

先輩はイタズラな笑顔で舌を出す。

「響夜君」

「はい」

「頑張って!」

「は?」

先輩は手を振って背を向けた。


俺の家。ものすごく気まづい。

「誰も居ないね」

響夜の声は少し低かった。向かい合うように座る。俺は冷やせをかいて正座だ。

「ぅん」

「同居人って誰?」

「え、えっと…」

「はぁ…ほんっと鈍感」

「は?!お前に言われたくねーよ!アホ!」

「じゃあ、いい加減俺がお前を好きだって気付けよ!!ミク!!」

響夜は俺の胸ぐらを掴んで押し倒す。

「お前がアイツからお前が振られた時、凄く嬉しかった誰のもにもならないって...なのに、同居人とか何だよ!」

俺の胸を上げてもう一度床に叩き付ける。その衝撃てポメぬいが顔に落ちてきた。俺はポメぬいを泣いてる響夜の顔に突きつけて、

「同居人!!俺の…同居人、お前がくれた!」

「は?」

響夜は全部の力が抜けたみたいにへたりこんだ。

「何だよそれ…俺の早とちりじゃん。だっさ」

「ふふ、ふははは!」

「みーくん?」

「俺、愛されてんなーって」

俺は起き上がって響夜に向き合う。自分の素直な気持ちで。ちゃんと前を真っ直ぐ見て響夜に向き合った。

「響夜」

「何?」

「お前の事好きだ」

「…知ってる」

「嘘つけ」

「嘘じゃないよ。確信してたから焦ってたの」

響夜は涙を拭って座り直す。

「そっか。返事は?」

「分かってるくせに…」

「うん。でも聞きたい」

「好きだよ。俺も。だから、俺と付き合って下さい」

「はい…」

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