第2話 ポメぬいでの予行練習

バイトが終わった夜遅く。家で職場の先輩と電話をしていた。

『ほんっとウブ〜!ツンデレじゃん!』

「違います!」

電話の相手は高藤怜奈。バイト先の女性の先輩で俺の相談によく乗ってくれる。先輩自身にも彼氏がいて、恋愛のエキスパートらしい。本人いわく。

『いいなぁ恋してるって感じ!』

「先輩は、こぅきょ、距離感掴みたい時ってどうします?」

『う"〜ん距離感ねぇ…あ!ぬいぐるみ!』

「はい?」

『ぬいぐるみ置いて、その人に見立てて話しかけたり、頭撫でたり、キスしたりしてた!それ日課にしたら自然と近くなったかな?まぁ、あの頃は血迷』

「いいですね!それ!」

『え?』

「僕もやって見ます!」

『待て待て後輩よ!あの時の私は頭がイカれてた、だか』

「ありがとうございます!」

俺は先輩にお礼を言って電話を切った。

「ぬいぐるみって言ってもなぁそんな都合良くある訳…あった」

ポメぬい。手の広サイズの毛玉を机の上に置きつぶらな瞳と見つめ合う。

(先輩なんて言ってたっけ?えっと、話しかけたり、頭撫でたり、キ、キスしたり…)

「いやいや!キスなんてそんな…」

(でも、家だし、練習だし…)

「何のだよ!!」

クッションをベットに殴りつけて、もう一度ポメぬいに向き合う。

「…よ、よろしく?えっと…いいや、ポメぬい」

恐る恐るヒビぬいの頭を撫でてる。ふわふわしていて癒される感触にだんだん絆されて、コレならキスとかも出来そうと安心した。

(よっしゃ!そろそろ寝るか)

と電気を消して布団に入った。真っ暗な中ふわふわの手触りに口付けて目を瞑った。

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