第3話 たまごたっぷりプリンをめぐる仁義なき戦い!
第3話(1)土下座先輩、風邪をひく
朝。目覚めると、まだ隣のベッドの中で土下座先輩こと灰野紅緒先輩が眠っていた。
珍しい。灰野先輩は、いつもわたしより早く起きているのに。
「先輩、おはよーございまーす」
「う、うぅ……」
あれ? 様子がおかしい?
「先輩……? ちょ、大丈夫ですか!?」
苦しそうに呼吸する先輩の頸の後ろに手をやると、びっくりするほど熱かった。
「うわ、ひどい熱……!! って、何起き上がろうとしてるんですか!?」
「いや、たいしたことないですから……いつもの掃除を……」
「無理だってば!」
案の定、起き上がろうとした灰野先輩はふらふらとよろけてしまう。わたしは先輩を支えて、ベッドに再び寝かせた。それにしても前髪が鬱陶しい。
「先輩、一応確認なんですけど、サンドルに校医って来てくれるんですか?」
「えっと……頼んだことがないのでわからない、です。すみません……」
「謝らないで。とりあえずサンドルの仕事は私が何とかするから、先輩は寝ててくださいよ。救急箱、この棚にありましたよね、っと……」
救急箱から体温計を探し出して、熱を測ってみると、38.5度だった。
救急箱の中には、一応解熱剤と風邪薬もある。とりあえず何か食べさせて薬を飲ませないと……
「食堂行ってご飯もらってきますね。何がいい?カツカレー? 味噌ラーメン?」
「えっ、何故そのチョイス……」
「風邪ひいたときには栄養つけなきゃでしょ?」
カツカレーと味噌ラーメンは、昔から私が風邪をひいた時の定番メニューだ。モリモリたべて汗かいてたらいつの間にか治ってるものなのよね。
「カレーとラーメンは、また今度にしてもらって……あ……購買の、たまごたっぷりプリンが食べたいです……」
「たまごたっぷりプリンね? わかった、水枕といっしょに購買で買ってくるから!」
私は灰野先輩の仕事をなんとか一人で終わらせると、貯金箱に貯めていた学内通貨のフルール・コインを握りしめて、購買へと向かう。
……正直に言うと、灰野先輩の体調不良には10%くらい私にも責任がある気がして、罪悪感を覚えていた。昨日も特別講習に参加したくて先輩に
うちの学園の購買は、朝の7:30に開く。昼はともかく朝はあまりお客さんもいないはずだからすぐに買えるだろう。
…………そう思ってやって来たのに、購買には生徒達の行列ができていた。
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