第2話(5)薙刀の遣い手 レイジョーブラウ

「こ、これは……!?」

「さあ、お行きなさい! 暴令嬢戦士、レイジョーブラウ!」 

「いや、あのウワーーーッ!?」

 青山さん……レイジョーブラウが、戸惑う間もなく、怪人が襲いかかってくる。

 デッキブラシは柄にロココ調の模様が描かれた薙刀に変化していて、レイジョーブラウは得物を構えて応戦した。その技は軽やかで、まるでダンスを踊っているようだ。怪人も押されている。

「すごい! 青山さんこんなに薙刀できるんですか! 全国優勝狙えますよ!」暴令嬢戦士の

「ち、違うんだ、身体が勝手に軽くなって……!」

「変身して能力が上がったってことですか? じゃあ私も!」

 加勢しようと足を踏み出したところを、レイジョールージュに肩を掴まれた。

「貴女には無理ですわ、下がりなさい黄薔薇の蕾」

「えっ、なんで!? 私だって変身したのに」

「貴女は心が未熟すぎましてよ」

 その声は驚くほど冷淡だった。

「何よ偉そうに……私から抜いた剣使ってるくせに!」

「おい、揉めてる場合じゃないぞ!」

 レイジョーブラウの声に振り返ると、怪人の背中からは新しいモップがどんどん生えてきていて、力もますますパワーアップしているみたいだった。

「マドォ………マドォ……!!」

「窓が汚いのが許せなかったんですの? じゃあこうしてあげますわ!!」

 レイジョールージュは怪物からモップを取り上げて、思いっきり振りかざしたかと思うと、そのままフルスイングで寮の窓を叩き割った!!ええーーーー!?

「ギャアアアアアアア!!!!!」

 怪物には効果的だったようで、もんどりうって倒れる。

「イヤアアアア!!ヤメテヤメテやめてええええ!!」

「今ですわ! 喰らいなさい!」 

 弱った怪人の胸を、レイジョールージュが持つ黄薔薇剣がひとつき。真っ赤な血ではなく、深紅の薔薇の花びらが舞い散り、怪物は大輪の華になって爆発した。

「えええ!? 寮長!!」

 華が爆発したあとには、すやすや眠っている寮長の姿だけがあった。生きている。良かった!





ガッシャーン……パラパラパラ……

ガッシャーン……パラパラパラ……

レイジョールージュがモップをフルスイングして、寮の廊下の窓を割っていく。

 怪人が元の寮長に戻ったと言うのに、何故彼女がこんなことをするのか理解できるものは誰もいない。けれども、夕陽の光を受けてきらめきながら舞い散る硝子の破片は、とても綺麗だった。あと正直言うと止めるのが怖い。

 やがて満足したのか、レイジョールージュは高笑いしながらその場でくるりとターンすると、薔薇の花に包まれて消えてしまった。



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