第9話 聖女覚醒ですわ〜!
-side エリーゼ-
聖女--それは、回復魔法のエキスパートにして、世界を救う人である。
この、ニーナという少女も将来、そうなるだろうと、いう片鱗を見せていた。
……たとえ、さっきから、信じる者は救われるという発言を連発しながら、回復魔法をかけずに、大勢の怪我人をそのままにしていたとしても。
この状況に、エリーゼは動揺しながらも、ニーナに声をかける。
「おち、おち、おち、落ち着くのですわ。」
「お嬢様が一番落ち着いてないのでは?」
「うるさいですわ。」
少女は、そのやりとりに目をぱちくりとさせて、エリーゼに挨拶をした。
「ど、どうも。」
「ご機嫌ようですわ。この騒ぎはどうしたのですの?」
「実は……、先ほどまで、町が魔物に襲撃され、町中で魔物が、暴れてまわっていたようなのです。もう、落ち着きましたが。」
「なるほど、それで、これだけの怪我人が……、それで、貴方は何をやってもおりますの。」
「私は、何もできないので、エールを送っていましたわ。」
「何もできないって……どうしてですの?貴方は回復魔法が使えるのではありませんの?」
間違いなく、聖女だと確信しているエリーゼは、まるで、使えて当然というふうに疑問をぶつける。
聖女や、勇者という者は、女神に祈ることで認められることで覚醒してなる固有ジョブである。一方、まだ、覚醒前で、聖女になる前、つまり、回復魔法が使えない状態の彼女は目をぱちくりさせる。
「えっと……、とりあえず、貴方祈ってみれば?きっと、回復魔法が使えると思いますの?」
「は、はあ……。」
ヤバえ聖女に変な目で見られながらも、促すヤバえエリーゼ。
その光景をじっと見守る周囲。ごくりと周囲が息を呑む中、聖女は祈った。
--ピッカーーー!!!
すると、やはりというべきか、祈りが女神に通じて、彼女は聖女に覚醒したようである。というか、他人に信じるものは救われますと言いつつ、自分は全く神を信じていないニーナが今まで祈っていなかったから、このようなことが起こったのだが。
「え、なに?何が起こったの?」
「貴方が、聖女に覚醒したのですわ。ほら、あそこに手を向けて、エリアヒールと唱えてみてくださいまし。」
「エリアヒール!!」
--ピッカーー!!
再び、大きな光が出たと思うと、回復魔法エリーゼの手から放たれる。次に光が収まった時には、大勢の怪我人が治っていた。
「……!!」
「よくやりましたわ!えーっと、名前はなんでしたっけ?」
「ニーナです。貴方は?」
「エリーゼですわ。」
「エリーゼ様。教祖様は、エリーゼ様と言うのですね!」
「きょ、教祖?」
「ええ!神の奇跡を予言するその奇跡のお力、まごうことなき、教祖様です!!」
『教祖だって』『確かに、一部始終見ていたが、聖女を覚醒させたのはあの少女だったな。』『きっと、高名な方に違いない。』
「アーサー。」
「ええ。」
「逃げますのよ〜!!」
「待って下さーーーい!!」
騒ぎを起こしてしまったエリーゼは、その場から逃げ出すことにしたのだった:
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「ここまで来たら、大丈夫かしら?」
「ええ。おそらくは?」
「……それにしても、なかなかの腕前だったわね。公爵家で雇いたいくらいですわ。」
「そうですね。」
「い、良いんですか?」
「「……!!」」
ばっと、振り返ると、聖女のニーナがそこにいた。
「なっ……!!追いついたのですか?」
「謎の光を辿っていくと、貴方様達の元へと辿り着きました。これも神様のお導きでしょう。」
「な、す、すごいですわ。」
流石、聖女、しっかりとチートスペックを持っているようだ。
「それよりも、私を貴方の元で働かしてくれないでしょうか?教祖様?」
うるうるとした目で見つめられるエリーゼ。断る理由もないので、そのまま受け入れることにする。
「多分大丈夫ですわ〜!お父様に交渉してみますの。」
「本当ですか!!やった!!」
こうして、聖女がエリーゼの部下になったのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「というわけで、行くあてのないこの子をメイドにしてほしいのですわ。回復魔法が使えるし良いですわよね。」
「ああ。いいよ。」
あっさり、父親のエドワードが承認して、聖女が公爵家に来て、8年後、その間、エリーゼ達はストーリーをガン無視して、アーサーと、ニーナを引き連れ、転移魔法を使い、世界各地を旅をしていた。
そんなある日、なぜか訪れてしまった。
--そう、なぜか、断罪の時が。
「ストーリーガン無視していたのに、なんでですの〜!!」
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[作者コメント]
次回最終回だと思います!!
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