第4話 大騒ぎですわ

-side エリーゼ-




「ただいまですわ〜!」

「だ!?誰だ?——ってエリーゼお嬢様?

 た、大変だーーー!」

「まあ!どうかしたのかしら?」

「なんか知らねえけど、お前、また巻き込んだんじゃねえの?——ってか、そろそろ降ろせ。逃げねえから。」

「まあ!失礼ですわね。」



 そう言いながら、エリーゼは少年を降ろす。



「はあ……。それにしても、良いところのお嬢様だとは思っていたが、何者だよお前……。」

「私は公爵家の一人娘ですわ。」

「貴族の事はよく分からねえ。」

「そうですわね……、簡単にいえば、王家に次ぐ権力者の娘という事ですわ。」

「なっ……!本当にやべえ奴じゃねえか。

 俺……、どうしよう。誘拐犯と間違われたら。ここで死ぬなんて、冗談じゃない……!」

「大丈夫ですわ。誘拐したのは、私の方であると、説明しますから。」

「……ま、紛れもない事実だが、それで納得するのかよ?」

「ええ。大丈夫ですわ。お父様はチョロいからいけますわ。」

「お前の“いけますわ”は信用できないんだよなあ。ああ……ここで終わりかもな。

 俺の人生。」



 少年が一人で絶望していると、「エリーゼ!!」と叫ぶ声が遠くから聞こえてきた。

 遠くから金髪青眼の背丈が高い美青年が走ってやってくる。



「お父様!」

「エリーゼ!ああ。愛しのエリーゼ。

 お家に帰ってくれて良かった。」

「ええ。こんなにも早く、帰る気はさらさらありませんでしたけど、気が変わったのですわ!」

「そうだったんだね。帰りたく無いほど、外で、嫌な事があったんだ。

 何があったんだい?」

「——いや、極解っ。(この親にしてこの子ありだな。)」



「ん……?その子なのか?エリーゼを苦しめていたのは?」

「(ほらきた。やっぱりだ。)いいえ、ちがいま——。」



 どちらかと言うと、苦しめられていた方です——っと少年がダメもとで弁明しようとした時だった。



「いいえ違いますわ!お父様。この子は、私が使用人にするために連れて帰ってきた子供ですわ〜!」

「使用人?こんな子供を?どうしてだい?」

「それは、かわっ……可哀想だからですわ!」

「(今、可愛いからって言おうとしたな。分かりたくなかったが、このお嬢様の事だんだんとわかったきたぞ。)」

「ふむ——。何か事情があるようだね。詳しく聞かせてほしい。」

「ええ。私がたまたま通りかかった孤児院に、彼はいたのですわ。」

「(たまたま通りかかった——?あれが?)」

「そして、彼の様子を見て話を聞いたところ、孤児院での扱いが良くなかったらしいですの。

 具体的には、物を投げつけられたり、教会の方の暴行を受けたり——。」



 少し嫌がらせされたくらいで、そこまでの、扱いは受けてねえよ。

 話の5割くらい創作じゃねえか!——っと少年は思ったが黙っておくことにする。



「まあっ!それは可哀想だね。分かった。うちで保護しよう。」

「(チョロ……。本当に、お嬢様が言った通りじゃねえか。)」

「ただし——、うちのエリーゼに手を出したら、たたじゃおかないよ。」



 そう言って、お父様と呼ばれた、美青年は鬼のような表情をした。



「(いや、怖っ!前言撤回。こいつは、ただの親バカなだけだっ!)わ、わかった!」

「よし、では、ついてきなさい。

 早速、その汚い身なりを整えよう。

 これから、エリーゼの前に立つのなら、なんとかしないと。」



 少年は目の前にいる親の正体を、見事に1発で見破り、大きな屋敷の中に入っていったのだった。




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