第2話 リアル家出ゲームですわ
-side エリーゼ-
「分かったからには、なんとかしないといけませんけど、この家では何にもできませんわね。箱入り娘ですわ〜。」
エリーゼが生まれたのは、シュタイン公爵家という家である。
端的にいえば、お金持ちで甘やかされて育って何もできない、どうしようもないボンボン——それが彼女だ。
彼女の身なりはとても良い。金髪青眼、色白、美人すぎる顔立ち。
前世では絶対に自分から近づくことはしないだろう、というような他を寄せ付けない圧倒できない美人である。
実際にエリーゼは、友達も少なかったはずだ。取り巻きが2人いたのみ。これは彼女の性格のせいでもあるらしい。
「私、どうしようもない箱入り娘ですが、お外に行ってみたいですわ。
家出したいですわ〜!」
そう考えた彼女は、変装して、平日真っ昼間に家から外に出ようとした。しかし--。
「いけません!お嬢様!」
「止められましたわ〜!」
門番にとめられてしまったようである。
これは、いくら変装して、誰かわからないような状態であれ、堂々と正門から歩いて出ようとした場合、当たり前の事だった。
だが、これは、彼女の想定内。
「いけそうですわね。逃げます!パワープレーですわ。ゴリ押したらなんとかなりそうですわ〜!」
「待ってください!お嬢様!」
「旅に出るから、探さないで欲しいですわ!」
じゃあ、こんなド派手に家出をするなよ……と言いたいところだが、彼女にはこれしか方法はなかった。
シュタイン公爵家のセキュリティは王都一と言われているくらいガッチガチだからである。魔法で結界が張られている上、屋敷の壁——というよりも、城壁に近い壁も高く、人もとても多い。
彼女が色々なところを観察して見つけた、唯一のセキュリティホール。
それが、門番の足が自分よりも遅い、とのことだった。
なお、これを見つけた時の彼女の反応は、「致命的過ぎますわ〜。」だそうである。
しかし、これは門番や公爵家にとっては仕方のない誤算である。
悪役令嬢のスペックは高い。主人公を操作しているプレーヤーにとって、ライバルが弱かったら、ゲームとして面白くないからである。大体のゲームの場合、初期の頃は、主人公よりも少し強いくらいに作ってある。
そのくせ、なぜか実力よりも下の主人公に奇跡を起こされ、負ける。それが、悪役というものだ。
しかし、悲しきかな。神はその高スペックを1番与えてはいけない人に与えてしまったようである。
「脱出成功ですわ〜!」
こうして、お転婆すぎる令嬢は、リアル脱出ゲームを成功させたのであった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「さて、これからどうしましょう?
私が知っているここから1番近い聖地だと……そうだ!幼い頃の勇者がいる孤児院が良いですわ!
あのゲーム。主人公のキャラデザ良かったし、きっと私が大好物な可愛いショタですわ〜。ゴッド!最高ですわ!
グヘヘへへーですわ〜!
待っていて。私の可愛いショタ、ですわ!」
「ですわ」口調で誤魔化しているが、かなり危ない発言をしているので、ここで、一旦審議が入るようである。
彼女は一応5歳児なので、前世のことを加味した上で、限りなく黒に近いグレーという判断が下されたようだ。
そんな、かなり危ない彼女が狙う先にいるのは……、それは男の方の主人公である。
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