囚われのエクストリテ設定集

・世界


 日本及び世界はプレケスの侵攻を受けており、世界人口の半数が消えた。

 プレケスの存在は、巧妙かつ厳しい情報統制により隠ぺいされているため、実際に襲われ生き残った人間と軍部の人間しかその存在を知らない。

 人口が減った事により、ライフラインの維持等が難しくなったため設備のほとんどが自動化されている。

 プレケスの侵攻により、親を失った子供たちの多くは貴重な労働力として各地の工場等で働いており、積極的にそういった子供たちを受け入れている職場もあり、真一の働いていた工場もその一つ。

 食品や生活用品は希少な物となっており、物価はプレケス来襲以前よりも三倍に跳ね上がっている。そのため和弘のように、家庭を支える為に働く子供もいる。




・軍


 軍の拠点は日本国内には十数か所あり、極東北方基地もその一つ。

 軍は強い権力を持ち、軍人たちの中にはその権力を笠に着て横暴を働く人間も多い。給料はこの世界ではトップクラスで、なりたがる人間は多いが死亡率も高く危険な仕事である。

 日夜プレケスに対抗するための手段を模索、開発しているが現在プレケスに対して有効的な兵器はエクストリテのみとなっている。

 航空戦力や戦車隊、また各地の山野に偽装した砲台等を備えているがどれもプレケスに対しては効果が薄い。




・極東北方基地


 日本国内にある軍事基地の一つ、司令官は稲山修二。

 数ある基地の中では僻地にありここに配属されるという事は出世コースから外れる事を意味する、と軍内部では言われているが働いている職員たちはそういった悪評を気にしていない。

 僻地という事もあり、プレケスの襲撃する可能性は低いと考えられており、配置されている兵器群はやや型遅れで、かつ職員たちの意識も低い。

 そのため今回のプレケスの襲撃では初動が遅れ、多くの民間人及び現場の軍人たちが犠牲となってしまった。


 敷地内地下施設にはエクストリテ、コード・ナートゥーラが保管されており調整と実戦配備の準備が行われていた。

 今回の襲撃は、エクストリテに呼び寄せられたのではという声もある。



 

・プレケス


 十年前に突如として現れた敵性存在。プレケスはラテン語で『祈り』を意味する。

 清水中尉は偽りの救済と祈りの塊と評した。

 その体を構成する物質は謎に包まれており、傷付けられると赤黒い液体が流れ出す。

 現在に至るまで数種が確認されており、今回工場地帯を襲ったものは一番多く確認されているタイプ。

 大きさは三十メートルほどで白い四枚の羽、緑と白が混ざり合った色をしており、両手は胸の前で祈るように合わせられている。

 顔には凹凸が無く、つるりとした卵のように見える。

 戦闘時には、背部の光輪が二本の腕に変化し、光の槍を使用する。

 真一との戦闘では彼の攻撃をあえて受ける事によって、動きや攻撃方法を学び彼を圧倒した事から、学習能力及び適応能力はかなり高いと推測される。


 現在に至るまで、行動理由を始めとする一切の生体が分かっておらず、意思疎通が可能なのか、そもそも感情と呼べるものが存在しているのかも分かっていない。

 体表は特殊なエネルギーに覆われており、襲来する以前からあった既存の兵器はどれも効果的な打撃とはならず、精々が足止め程度にしかならない。

 過去には討伐作戦『オペレーション・フラッシュブレイク』が発動され、二発のSLBMを使用したが大きな打撃を与える事は叶わなかった。

 にもかかわらず未だに数多の兵器群が造られ続けるのは、兵器産業の利権が絡んでいる。

 現在、プレケスに決定打を与えることができうるのはエクストリテのみであり、その撃破例は少なく、国内での撃破は真一のものを含めて二例のみである。


・攻撃方法


 祈りの光


 プレケスが背中の光輪から放つ光。

 効果は対人間に特化しており、その他の動植物には影響を及ぼさない。

 直接光を浴びた人間は、今までに感じた事の無いような幸福を感じつつ笑顔で分解されていく。

 モニター越しなどであれば問題は無いが、現場で直接光を浴びてしまうと分解されてしまう。そのため航空機や戦車などの有人兵器を投入した場合は、そのほとんどが光による攻撃で壊滅させられてしまう。

 物陰に隠れるなど、遮蔽物を使えばある程度はその効果を軽減できる。

 

 そのため地下シェルターを造り、居住地を地下へ移す計画も発案されたが突然の襲来により準備ができず計画は頓挫してしまった。


 笑顔で安らかに死ねるという攻撃の性質上、密かにプレケスを神格化するグループも確認されており、彼らはこれを本当の救済と信じている。


 光の槍


 祈りの光が通じない相手、主にエクストリテとの戦闘で使用する光の槍。

 使用する際は光輪が変化した二本の腕に持ち、突き刺す、もしくは切り裂くといった攻撃を繰り出す。

 槍は超高熱で、エクストリテの特殊装甲を三秒で融解させる威力を持つ。

 現在エクストリテ以外に使用されたケースは公式には確認されていないが、もし現存する構造物や人間に使用した場合は、跡形も無く消滅すると考えられている。




・エクストリテ


 対プレケス戦用に開発された機動兵器。

 搭乗者と融合し、その負の感情をエネルギー変換し攻撃や動力に使用するタルタロス・システムを搭載している。

 建造される上で特に重要視されているのは『人型ではないか』という点である。


 プレケスとの戦闘において最も危険な攻撃は、祈りの光による分解攻撃である。

 そのため従来の戦車や航空兵器といった『人間のまま』動かす兵器では、攻撃が効かないばかりか兵士を無駄死にさせるリスクが高かった。

 

 そのため搭乗者はタルタロス・システムを用いる事で、エクストリテと融合し一時的に『人間ではないもの』になる事によって、プレケスの光による攻撃を完全に無効化する事ができる。

 また融合する事で、機体の思考操縦が可能になるため経験の浅い真一にも動かす事ができた。

 機体は特殊装甲に覆われており、並の攻撃では傷一つ付かない。

 だが光の槍による攻撃は、三秒しか耐えられない。


 搭乗者との融合係数は、そのまま機体の動きのキレに繋がるため、低い融合係数ではまともに動かす事すらできない。




・エクストリテ、コード・ナートゥーラ


 極東北方基地地下に保管されていたエクストリテ。

 ナートゥーラはラテン語で『本能』を意味する。装甲色は黒。


 三叉槍のような特殊な形状の頭部を持ち、三つの先端部分には青色のバイザーが装備されている。

 胸部装甲の下には赤い球体があり、その下にコクピットは位置している。

 腕部は長く、だらりと垂れさがっているような印象を受け五本の指の先端には近接戦闘用のクローが装備されている。

 

 脚部には歩行用の足は無く、その代わりに二基のスラスターが装備され、また背面にも三基の大型スラスターが装備されており、それにより高機動戦闘が可能となっている。

 基本武装は腕部クローのみとなっており、装備自体は非常にシンプル。

 最大稼働時には脚腕が展開し、四本の腕を使い戦闘が可能。


 その他オプション武装はいくつかあるが、今回は急な戦闘だったため使用される事は無かった。


 日本国内で初めて製造されたタルタロス・システム搭載型エクストリテで、一時期は実戦配備されていたが、最初の搭乗者が死亡してからは長らく一線を退いていた。

 二号機であるコード・ラティオーが開発されてからは、そちらに資金や技術者が流れてしまったため極東北方基地に移送、保管されていた。

 だがパイロット候補生の清水中尉が一定以上の適合係数を示したため、再び実践配備のための調整と整備が行われていた。


 清水中尉搭乗時は、ある程度は動けていたがプレケスとの力の差は歴然で槍を使うまでもなく吹き飛ばされてしまった。

 だが幸か不幸か、そのおかげで機体の主要部分には大きな損傷が無かったため真一が乗った時も戦う事ができた。


 最初期の機体という事もあり、タルタロス・システムにはリミッターが付いておらず融合係数が上がった分だけ搭乗者と融合してしましまう。

 そのため高い融合係数を持つ人間が乗る事で、高い戦闘力を発揮するが逆に機体ダメージがそのまま搭乗者に跳ね返るという欠点もある。


・武装


 腕部クロー

 

 ナートゥーラの指先に装備されている近接格闘用のクロー。

 タルタロス・システムから供給されたエネルギーでその表面を覆う事によって、切れ味を増幅し、かつプレケスにも有効な攻撃手段となる。

 突き刺す、引っかくといった単純な攻撃しかできないがその分取り回しがよく、扱いやすい武装。

 少ないエネルギーでも稼働が可能なため、エクストリテの標準武装となっている。


 脚腕


 ナートゥーラの脚部に格納されていた、二本の腕。

 最大稼働時のみ使用可能。


 脚部のスラスターを格納し、その代わりに展開する。

 脚腕の長さは元からあった腕の半分程度の長さだが、その分パワーは二倍以上の数値を出せる上に、普通の腕と同様に追加オプション武装等も装備可能。

 手数を増やす事で攻撃力を増加させる事ができる分、二基のスラスターが無くなった事で高機動戦闘ができなくなってしまっている。

 そのため、相手に組み付いた状態で使用するのが望ましいとされている。


 腕部格納型パイルバンカー・ウォルンタース


 ナートゥーラの手の平に装備されているパイルバンカー。

 ウォルンタースはラテン語で『意思』。

 稼働時には腕部クローの五倍のエネルギーを消費するため、適合係数が低い場合はそもそも起動する事すらできない。

 

 長さ五メートルの特殊合金製の杭を撃ちだす本武装は、エネルギー消費に見合っただけの威力を持ち、一撃でプレケスの腹を貫く威力を持つ。

 一発撃つごとにエネルギー充填が必要となるため、本来であれば連射するような武器ではないが、真一が使用した際は想定以上のエネルギー供給があったため連射ができた。



・エクストリテ、コード・ラティオー


 コード・ナートゥーラから得たデータを元に建造されたエクストリテ二号機。

 搭乗者は阿賀達あがたちはるか

 装甲色は紺と白。

 

 頭部は三角錐型で、緑のバイザーを装備している。

 両腕は通常形態と、砲撃形態をとる事が可能となっている。

 背部にはナートゥーラと同様の大型スラスター二基、二門の大型キャノンを併せ持つ複合兵装アニムスを装備している。


 ナートゥーラと比べて砲撃戦を主体としており、全体的に装甲が厚くなっている。

 精密射撃もしくは高火力砲を使用する際は、二本の足がわかれ四脚形態を取る。

 

 国内で初めてプレケスを撃破した機体として、軍部では軍神的な扱いを受けており、反撃の象徴と呼ばれる。

 極東北方基地からの応援要請を受け、長距離高速移動用のD型装備で駆け付けたがすでに戦闘は終了していた。


 二号機という事もあり、ナートゥーラには無かったリミッターが搭載されている。

 融合係数が規定値よりも高くなり、搭乗者が必要以上に機体と融合するのを防いでくれる。


 ラティオーはラテン語で『理性』を意味する。


・武装


 腕部クロー


 ナートゥーラと同タイプの近接戦闘用クロー。

 プレケスに対して有効な武装ではあるが、砲撃戦主体のため使用するのは緊急時が多い。


 エネルギー式腕部キャノン砲


 両腕に装備されたキャノン、タルタロスシステムから供給されたエネルギー弾丸として撃ちだす。

 威力重視の単発モードと連射性能重視の速射モードと、二種類のモードを使い分ける事が可能。

 融合係数の高さが弾丸の威力に直結する。


 複合兵装アニムス


 背部に装備された二基の大型スラスターと二門の大型キャノンを併せた、複合兵装ユニット。

 アニムスはラテン語で『魂』。




・タルタロス・システム


 特殊なコアユニットを基盤とした造られた、エクストリテに搭載されているエネルギー変換及び機体制御システム。

 搭乗者の憎しみや怒り、絶望といった感情を増幅しエネルギーに変換、機体各所へ供給する役割を担っている。いわばエクストリテの心臓部である。

 またそれに伴い、搭乗者と機体を融合させる事で思考操作も可能にしてくれる。


 タルタロス・システムが作り出すエネルギーを用いた攻撃だけが、プレケスに対して有効である事は多くの犠牲の果てに辿り着いた結論である。

 

 搭乗者の心の中にある負のエネルギーが強ければ強いほど、深く搭乗者と結びつき、エクストリテの性能を引き出す。

 だが深く結びつきすぎたり、長く結びつきすぎると自分と機体との境界線が曖昧になり、心を負の感情に飲まれていく。

 また長く乗っていなくても、搭乗者は凶暴性・暴力性が増すなどのリスクがある。


 真一は時間としてはそれほど長く乗ってはいなかったが、融合係数が爆発的に上がったためシステムと深く結びつきすぎたため、殺意の暴走や言動が荒くなるといった意識の変化が見られ、また体が急激な融合に耐えきれず鼻血が出るなどの身体的ダメージも受けてしまった。


 システムのコアユニットの作成方法は、軍上層部しか知らない。




・融合係数


 搭乗者と機体との融合度を示す数値。

 高ければ高いほどエクストリテの性能を引き出せるが、高すぎた場合は機体のダメージなどがそのまま搭乗者に跳ね返るため、機体が動いても中身が駄目になる可能性がある。


 エクストリテを動かすためには、数値は最低でも五十は必要で戦うためには六十以上が目安とされており、最大稼働には八十以上の数値が必要となりその状態を『オーバーエイト』と呼ぶ。



草壁くさかべ真一しんいち(18)


 極東北方基地近くの軍需工場で働く少年。

 元は別の地域に住んでいたが、家族がプレケスに殺された事により施設を転々としていた。

 現在は工場近くの空き家を借りて一人暮らしをしている。


 温厚で人と争う事を嫌う性格をしている。

 人付き合いは少し苦手で、できれば話しかけてきてくれる方が助かるタイプ。

 仕事は真面目でミスもほとんどなく、上司からの信頼は厚い。

 

 過去に両親と妹をプレケスに殺されており、そういった経験から自分の大切な人間がいなくなる事を恐れており、友人の和弘を守るために銃口の前に飛び出す事もある。

 家族の話を『終わった話』という一方で、その事を許した事は一度も無く。

 家族が殺されてから十年間、片時もプレケスに対する恨みと憎しみを忘れた事は無かった。


 巻き込まれる形でナートゥーラの搭乗者になってしまったが、初期テストで融合係数が七十を超えており、その事からもプレケスに対する憎しみと恨みが深い事が伺える。

 最大融合係数は八十六。



清水しみずまもる(35)


 極東北方基地所属の軍人、階級は中尉。

 前職は小説家だったが、妻子がプレケスに殺された事により軍に入った。

 その後エクストリテの存在を知り、搭乗者となるべく訓練を積み、晴れてナートゥーラの搭乗者となった。


 適合係数は候補生の中ではもっとも高かったが、それでも五十を超えるのがやっとで、時には四十を切る事も多々あった。

 今回のプレケス強襲にあたり急遽出撃したが、融合係数が低かったためまともな戦いにならず、敗北した。


 融合係数が低い状態で何度もエクストリテを操縦した事により、精神と体はすでにボロボロで白髪になったのもそれが原因だった。

 真一に機体を託した時点ですでに体は限界を迎えており、ただ死を待つような状態だった。


 結局最期までプレケスを倒す事は叶わなかったが、彼がいなければ真一や他の住人達など多くの人命が失われたに違いない。

 

 最大融合係数は五十六。




春野はるの和弘かずひろ(18)


 真一の友人であり同僚。

 細かい事を気にしないカラッとした性格をしているため、職場での人間関係は良好。

 仕事は真一よりも速いが、ミスは彼よりも多い。

 

 曲がった事や間違った事が嫌いで、相手の立場に関係無く意見を言う事ができる。

 真一と比べると感情で動く場面も多く、時々人ともめる事もある。


 両親と妹がおり、家族仲は良好。

 時折真一を家へ招き、一緒に食事をする事もある。ちなみにこの時間を真一は、とてもありがたく感じている。


 真一の家族がいない事は知っていたが、特に深く追求する事無く今まで付き合っていた。

 仮に家族がいない理由を尋ねたとしても、プレケス被害の遺族たちはその存在を語る事が許されていないため、その存在を知り得なかった。



稲山いなやま修二しゅうじ(42)


 極東北方基地司令官。

 口元の濃い髭がトレードマーク。


 僻地の基地の司令官という事で出世コースからは外れたと言われているが、他の市職員たちと同様あまり気にしてはいない。

 温和で部下思いの性格と、今回のプレケスの襲来で見せた高い指揮官能力から部下からの信頼は厚い。

 だが優しすぎる面もあり、ナートゥーラと搭乗者が高い融合係数を見せた時は、搭乗者の過去を思い胸を痛める場面が見られた。




阿賀達あがたちはるか(19)


 コード・ラティオーの搭乗者。

 過去にプレケスを撃破した事もある、優秀な女性。


 冷静かつ軍務を順守する事から堅い印象を受ける人間も多いが、戦闘を終えた真一に労いの声をかけたり、気分は良かったかと分かり切った質問をするなど、優しくとっつきやすい一面もある。


 歴史的、世界的に見てもトップクラスの融合係数を叩きだし、さらに数値が大きく変動することもない安定性から最強の搭乗者とも言われている。


 最大融合係数は九十五。

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囚われのエクストリテ 猫パンチ三世 @nekopan0510

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