紫陽花が色づき始める

一旦整理しよう…私は雨宿りのために町から少し離れた山の上にあるボロ小屋に来た、

その小屋の床下には2畳ほどの空間があり、その中には美しい紫陽花と儚くも美しい少女が捉えられていました…


「お姉さんー聞いてるー?私出たいよー?」


「えっと…何個か聞きたいことがあるんだけどいい?ですか…?」


得体の知れない少女にしどろもどろになりながらよく分からない敬語を使って質問してみる、


「いいよー!答えたら出してね!」


「ありがとう、じゃあ1つ目いつからここにいるの?」


「わかんなぁい、えっと!でも!たくさんここにいたよ!」


「そっか、じゃあ次ね、あなたは何者なの?」


「私はばけもの!だよ!」


私は言葉につまる、この子はその意味を理解してるのだろうか?


「えっと、誰かに言われたりしたの?」


「うん!変な髪型して板みたいな棒持った人がたくさん来て悲しい顔でいってた!」


よく分からないなぁ…


「そっか、次の質問ねなんでここから出たいの?」


「ここ退屈なんだもーん!でたいよー!」


退屈…かぁ…ここを出てもきっと退屈だろうなぁ、それなら外を知らずにここにいた方が幸せなんじゃないかな?

話した感じからずっとここにいて人間の世界を知らないように見える、そんな子がここから出てもいいことにはならないだろう、


「ここを出ても何もないよ…ほんとに…ここを出てもいいことないよ…きっとガッカリする…ここにいた方が幸せだよ…」


「えー!そんなのみないとわかんないじゃーん!」


「でも…ひとりぼっちになっちゃうよ?きっとここと変わらない」


「んー、ひとりぼっちはかなしいねぇ」


そうだよ、きっと、いや絶対ひとりぼっちになる、どうやって諦めさせよう、


「そうだ!いいことおもいついたよ!」


「いいこと?」


「うん!お姉さんが私をここから出して、その後も一緒にいるの!これでひとりぼっちじゃないよ!」


この子は何も分かっていない、ここの外がどんな場所かを、この子が思ってるほど綺麗なものじゃない、だけどひとりぼっちの私は少女の提案に魅力を感じてしまった、


「…わかったちょっと待っててね」


「えっ?ちょっと待ってよ〜」


私は引き止めるその声を無視して雨に濡れることも気にせず小屋から駆け出した、

いつか本で読んだことがあるガラスを割る時にはガムテープを貼った上から叩けば破片が飛び散らずに済むらしい、

そのために1番近くのコンビニに走ってガムテープを買うことにする、


たくさんの人とすれ違う、紫陽花の下はやっぱり疲れた顔した人間だ、とてもじゃないけど綺麗なものでは無い、だけど彼女といればひとりぼっちじゃない、こんな世界でも色づく気がする、そんな予感がしている、

皆怪訝そうな顔で私を振り返るがそんなのどうでもいい!きっと私の明日は輝くんだから!



下着が透けることも構わず大通りを走り抜けるJKの姿がそこにはあった。

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床下の紫陽花 くじらのなみだ @Qujilatear

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