床下の紫陽花
くじらのなみだ
紫陽花とひとりぼっち
私はひとりぼっちだ、昔から友達が少なかった、私はどうやら人の気持ちが分からないらしい、
お母さんや先生によく言われる
「あなたはもっと人の気持ちを考えなさい」
その言葉が分からなかった、私は人の気持ちがわかっているつもりなのに、その上での行動が軒並み否定される、なんでそんなことになるんだろう、
例えば学校の友達グループでA子ちゃんがいじめに近いようないじり方をされてる時に私は周りを良くないよと言って止めた、
きっとA子ちゃんは心の中では泣いているはずなのにその場面では、
「こんなの冗談じゃん真に受けちゃダメだよ、面白ければいいじゃん」
って貼り付けたような作り物の笑みで私に言ってきた、
私は間違ってるのだろうか、ずっとそんなことばかり続けて気づいたら高校生だ、
あの一件以来学校では居心地悪いし、高校を頑張る意味もわかんないし、やりたいこともないから、最近は学校をサボって町の散歩をしている、
幸か不幸か親は私には基本的に無関心だ、父は私が高校さえ卒業すれば何をやっても構わないと言っていたし、母は父の言葉に反論どころか意見すらしない、だから私はとても自由だった。
町をあてもなくぶらついていると空気が湿り出したことに気がついた、今は梅雨真っ盛りだ、たまたま今日は雨が降ってないから街に出たのだがこの調子だったらすぐに雨が降りそうだな、いつ雨が降っても良いようにバッグの中から折り畳み傘を取りだしておく、
まだ家に帰りたい気分ではなかったので適当に雨宿りが出来そうな場所を考える、ファミレスやカフェが思いついたのだがお腹も空いてないし、バイトをしていない学生はファミレスのドリンクバー代も渋るのだ。
しばらくあてもなく歩いていると小学校時代の通学路を通っていた、
そういえば通学路を少し外れて山を少し登るとボロ小屋があったことを思い出す、
昔悲しいことがあった時や1人になりたい時よく行っていた事を思い出す、ちょうどいいしそこに行ってみることにした。
しばらく歩いて山の麓まで来ると雨が降り出した、思ったより強い雨だったので私は慌てて傘をさして早足で小屋を目指し歩き始めた。
5分もしないうちに小屋に辿り着いた、昔はここまで来るのにとても疲れていた覚えがあるのだが、成長した今疲れもなく難なく登ってこれた、
小屋の前はひらけており町が一望できた、
お昼時だからだろうか?大通りを色とりどりのたくさんの傘が行き交っている、
その光景がまるで紫陽花のようで少し綺麗だと思ったが、その下には疲れた顔した人間がいることを考えるとロマンチックな思いも塵のように飛んで行った。
ボロ小屋に目をやると昔よりさらにボロボロになった気がする、昔雨宿りしていた入口前の屋根に穴が空いて雨が落ちてくる様子がさらに老化していることを物語っていた、このままでは雨宿り出来ないので扉を開けて中に入ってみることにする、昔は勝手に入ることに気が引けて扉を開けることはしなかったが、雨が降ってることと手入れされていない様子のボロ小屋なら入っても大して問題ないと考えた。
中の様子はボロボロの壁に床、そして中央にくたびれたカーペットが敷いてあるだけであった、頭の中では物置として使われていて見たことないような物が沢山あるなんて妄想をしていたのだがそんなことも無く1人で勝手にガッカリした。
私はしばらく床にタオルを轢いてスマホをいじっていた、するとどこからかくしゃみのような音が聞こえた、一番最初に頭に浮かんだのは心霊現象だ、私は慌てて小屋を飛び出した、確かにおかしいと思った手付かずの小屋がずっとあるには何か理由があるはずだ、その理由が幽霊だと言うなら納得だ、私は関わらないようにしようと決めて帰ろうとするが、バッグを中に忘れてきたことを思い出して頭を抱えた、意を決して取りに戻る、
「あのぉ〜幽霊さん〜すみません〜荷物を取らせてもらいますねぇ〜」
震える声でそう告げて荷物を掴んだ、その時声が聞こえてきた
「誰かいるの?」
「ひっ」
私はびっくりして腰が抜けてしまった、ドンという大きな音を出して尻もちを着いてしまった、
「わぁ!びっくりしたー」
また声が聞こえる、少女のような幼さもあり優しさを孕んだ綺麗な声だ
「どうしたのー?」
おしりの下から声が聞こえることに気がついた、ちょうどカーペットが敷いてある、
「この下にいるの?」
恐る恐るカーペットをめくってみる
少しめくったらどうやら下は空洞になっていてガラス張りになっているようだ、
意を決して一気にカーペットをめくりとる、
私は息を飲んだ中は紫陽花が沢山咲いている花畑のようになっておりその中心で丸まるようにして少女が目を押えて寝転がっていた、
周りの綺麗な紫陽花に負けないくらい儚げで美しい少女だ、ほんのり青みがかった白いふわふわの髪が腰あたりまである、肌は真っ白で陶器のようなツヤがあった、天使だと錯覚するくらいとても美しく可愛い少女だ。
「わわっ!まぶしいよー!」
小屋の中は薄暗いのにそれでも眩しいという彼女の言葉から相当長らく閉じ込められていたことが伺える、
「お姉さん!私を外にだしてー」
目を輝かせて私を見上げる少女と明らかに犯罪の現場から目をそらすようにして少女見蕩れる私の姿が暗い部屋の中にはあった、頭が真っ白になってさっきまで苛立つほどうるさかった雨の音さえも聞こえなくなっていた。
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