邪道の歩き方
常識。
非常識。
皆、常道を行く。
『ちゃんと』勤め、『真っ当に』生き、『懸命に』頑張り、そして
病んでない人間の方が珍しい世の中。
年間自殺者、二万人超えの、豊かな国。
それでも、根強く残る、心の病への偏見。
ストレスの発散すら『わがまま』
愚痴も弱音も、気軽に吐けないから
気づいた時には病理が深刻化している。
蔓延る。病みに蓋をして、健全である事を全面に押し出さないといけない空気。
『疲れていないと』『ストレスを抱えていないと』カッコ悪いとされるような風潮。
合わない。
そんな世の中、真面目に付き合ってられない。
非常識で、ズルいと囁かれる、邪道。
面白くて仕方ない。
笑って生きる。楽しく歩く。
ズルいと言うなら、お前らもやればいいんだ。
ぐちゃぐちゃ言って 殻にこもってないで
やりたくないことなんて さっさと辞めて
楽しく笑って、邪道を行けばいいんだ。
そんな勇気も、指さされる覚悟もないくせに。
『生きればいいんだ』『歩けばいいんだ』
脚。
左脚。
主に脚の裏側と、つま先に力が込められない。
病室。
重度椎間板ヘルニア。
無論、福祉職である、知識としてヘルニアを知っている俺が
「見なきゃよかった」と思うほどの
MRIに写された『神経系への圧迫』
あんなものを見たら、刷り込まれる。
『いつ重篤化してもおかしくない』という暗示。
壁に手。腰の痛みをかばいつつ、身を捻り
ベッドから立ち上がる。
まず、右脚だけで、立つ。
左脚に、徐々に重心を移していく。
『これ以上は転ぶ』
重心を右脚に返し。
舌打ちしそうになる。
『歩けるわけがない』と、思いそうになる。
思っているうちは、思っているようにしか、ならない。
潜在意識。
「ついてる」口に出す。
「動く」極めて明るく。
「大丈夫だ」口にだす。
自分の言葉が音となり、耳から侵入し
脳髄に届く
心に着弾すれば
『大袈裟な医者だ。重篤化なんてするわけない』
マインドの変化が巻き起こる。
左右の脚、重心のキャッチボールを、繰り返す。
筋力が落ちれば、あり得なくもない、重篤化の可能性を、潰す。
汗。
これくらいで?
『片手素振り3000本達成』『小手の副将』
『秒殺』『努力の狂人』
歩けるよ。邪道なら、またすぐに。
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