策略の交差
新しい職場で、順風満帆に歩を進める。
微塵も臆さず、仕事をこなす。
懸念すべきは、他にあった。
過去に、俺と工藤さんが『伝説』を創った職場。
パンデミックの最中、クラスターを押さえ込む為、一ヶ月を2人で回し切り
利用者様方々の生活リズムまで整えて見せた
『伝説』
あれから、数ヶ月
俺と工藤さんの評価は、天井破りに上昇していたが
ここ最近、様子がおかしい。
『判断に困ったら、事実のみを見よ』
これは、俺の、情や言葉に左右されない為の『思考の指針』、その一つである。
上層部は変わらず、俺への気遣いや丁重さを見せて下さるが
新しいシフト表をまじまじと見る。
月の勤務時間数は削られている。
心の病理、その影響で、数度細かなミスを犯したとはいえ、削られた時間数の穴埋め、任された仕事は
当初の『夜勤』ではない。
又、契約外の曜日にも、数時間の勤務に当たるよう、示されていた。
下降気味。である。
自分自身の社内的な価値、少なくとも上層部から俺への『評価』が下がりつつある事を、察さずにはいられない。
現場で『一番難しい』とされてる施設で『伝説』まで創ったのだが、、と
少しばかり憤りそうになるが、仕方あるまい。
新しく引き当てた職場で、俺は実に4年ぶりに『介護職員』として働くに至ったが
勤務に当たる度に、信頼を寄せられ、任される『数字』が増大している。
、、、、頃合いである。
、、、試さないといけない。
その方法は、
考えなくても良かった。
『豪運』は俺に災いを降らせたから。
然るべき時に然るべき災いを。
俺は、新しい職場の勤務中
巡回時、利用者様に突き飛ばされ
臀部、腰部、後頭部を打撲
その折、神経系統の一時的麻痺により、失禁。
下半身が動かなくなった。
1人夜勤。故に、施設長に息も絶え絶えで連絡し
救急搬送されるに至った。
上記は、検査の結果、判明したことであり
当初は『半身不随』まで疑われた。
『排泄障害』が残る、と予測された。
蓋を開ければ、重度とはいえ椎間板ヘルニアであったが。
職場の反応、その差は歴然であった。
要約すれば、金銭的に困窮している俺の事情を知る職場からは
『全快したら、またよろしく』と、直属の上司から一通のメッセージのみ。
要約すれば、金銭的な困窮のことは知る由もない職場から
理事長から社長、管理者に至るまで
『この人を守らなければ』と生活を担保してくれるばかりか、気遣いのメッセージが多数。
そろそろ。
冬が来る。
年末年始は、福祉従事者にとって『儲け時』
である。
俺は病室でカレンダーとスケジュール帳を照らし合わせていた。
また、必要であるかもしれないな。
一日に数度、着信する『オファー』
その一覧に目を通す。
せっかくだから、楽しむ事にした療養生活。
別段、悲観することは無かった。
考える事は無数にある。
例えば、、、。
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