コハクの片鱗

琥珀が好きだ。

大昔は、なんの価値も無かったモノが

徐々に長い年月をかけて輝きを纏う。

その輝きは、宝石と比べても、何ら劣らず、しかし奥ゆかしい。


徐々に徐々に。

なんの価値も無かったモノが。


『死ねよ、クズが』

『どけよ、むかつくんだよ』

『オマエが何を考えてるのか、父さんには分からん』

『指が短くて、指輪が可哀想ね』

『誰がアンタなんかに惚れるの?』

『ごめんなさい』



人生で一番好きだった人。

嫉妬で胸が焦げ、何年も片思いをした女性は

泣きながら俺を振った。



もう、いやだった。

本気で人を好きになる事は、本気で傷つく勇気がいる。


長い長い夜を、独りで過ごす度に思い出す。


『生涯孤独』


伝わらない。このまま。一生。


手を繋げば、離さないといけない時が来る。

会えば別れる時が来る。


楽しい一時の後は、いつまで続くか分からない『独り』に怯える。




欲しい。欲しい。欲しい。

俺にも、琥珀の輝きが。

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