忘却された『秘宝』
毎夜、毎夜。
頭を抱える。病理が『くる』度、過ぎ去るのを待つ。
全身に、冷や汗をかき、時折、手招きをする死神を振り払う。
よく見えない。両眼。滲んだ視界。
自宅の荒れ様は、日に日に、悪化していく。
俺は、何を、している。
どこだ。何を、探してる。
視力を後回しにしていても、とりあえず目の前の一歩は進める。
ただ、一歩。あと、一歩。
前に、前に、それでいい。
見えなくていい。漠然とした不安の中で、きちんとした現実なんて。
見えない方が、良い。
自分でも気づかなかった
そう【思い込んでいる】事に。
見据えられなければ、聴覚が、冴える。
新しい職場の鍵を、虚ろに見ながら
『やらなければ』と考えている
【お片付け】
あとでいい。そんなのは。
【お片付け!】
よく見えない両眼のせいで身体をあちこちにぶつけながら、何回も転びそうになりながら
片付ける。
あたまがまわらない。
寄せて、まとめて、捨てる。
まとめて、捨てる。
動かして、拭く。
不要な書類の束の下から、出てきた
メガネ。
三週間か、そこら、放って置かれたメガネを
おずおず、かける。
当然の如く、いきなり戻ってきた視力に、一瞬、目が慣れず、思わず瞼を閉じた。
次瞬だった。
心理学には【拡張自我】という言葉がある。
人間は、身につけているもの、全てを合わせて『自分』だと認識する。
俺は、『自分の一部』が欠損したまま、だったのだ。
戻ってきたのは、視力だけじゃなかった
【潜在意識って知ってる?】
【人はね、見たい物しか見ないの】
【初対面の天才だよ】
【努力の狂人】
沼の底から、拾い上げた ドン底の、秘宝
かつて、戦友にも、恐れ多くも伝授した
豪運の核たるモノ
【マインドの】【変化】【習慣の】【力】
ふつふつと、怒り
自分に対する、怒り
誰だと、思ってるんだ
俺は、、、
【女帝って言葉嫌いなのよね】
【お先に失礼】
【帝王と呼びなさい】
帝王になる男だぞ。
部屋の片付けは、格段に効率が増した
スケジュールを、まとめ直す
加筆していく
徐々に、徐々に
戻ってくる。
本来の、自分が。
【ナルシスト】【天狗】
笑われた過去。
やかましい。
満ちてくる。
そんな事を、言ってくる奴らを
俺は『成果』で黙らせてきたんだ。
新しい職場の鍵を手のひらで転がす。
『やらなくてはいけない仕事』?
『楽しいから働く』んだろ?俺は。
サイコロを2つ、片付けたばかりのテーブルに転がす
5ゾロ。
おかえり。帝王の豪運。
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