傍の天女
実に、三ヶ月ぶりに髪を切った。
未だ、メガネは自宅内で紛失したままだ。
両眼で見据え切れなければ、耳が冴える。
「どうぞ。よろしくお願いいたします」
新しい職場、その管理者からジャラリと鍵束を手渡された。
【即戦力】そう認められるまで
2日間、要した。
スケジュールを改めて確認すると、
自分でも悉く『よくも、まぁ』といったところ。
引き当てたピースは、最適にハマり、且つ、他のスケジュールの補助や保険の様な働きまで担っていた。
未だ1日に2.3本のオファーが届く。
「既にスケジュールが埋まっていて、また、ご縁がありましたら」と、丁重に断る。
俺は、福祉のプロなんだ。
無理矢理にでも、笑顔を作る。
がむしゃらにでも、胸を張る。
月が変わろうとする頃
「残った休日を頂けませんか?」と新しい職場の責任者から言われた。
週3で働いてほしい。という申し出である。
これを、保留とさせて頂きつつ、頭の中でざっと算盤を弾く。
そこまでしなくても、収入は、病理を患う以前を超える計算になっていた。
皆、『身体』を心配して下さるが
懸念すべきは『心』であった。
毎夜、不意に【くる】
焦燥感、冷や汗、どこまでも落ちていく様な感覚。
落ちて落ちて落ちて、最後は、地面にたたきつけられる、そんな恐怖に似た、幻想の不安。
保ってくれ。
大丈夫だから。
天女は、傍に、いる。
コロコロ、ジャラジャラ 大量のサイコロを部屋に撒く
4.5.5.5.6.5.6.6.6.5.4.5.5.4.4.....
ツイてるんだ。憑いてるんだ。
キテるんだ。確実に。
乗らずして、どうする。
豪運の濁流に、飲まれて、どうする。
確約されている。
信用されている。
残されたのは『己の経験』と『僅かな人望』
死んで、たまるか、、。
聞いてくれ。俺の慟哭を。
負けてない。まだ、終わってない。
それどころか
始まるんだ。始めるんだ。
ここからの人生を。
ドン底の底の、底の
沼。
足掻けば沈む、沼の中で、不意に、足が突起に引っかかり
抜け出した、沼。
泥だらけ、半死半生の、亡霊のような自分でも。
ドン底から、飛べ。
飛んでみせろ。
もう、土竜道化は、死んだんだ。
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