野良犬の慟哭

酩酊。

思考が徐々に回転を緩め、穏やかになる。

後は、ワイヤーロープ。

これで、良い。

楽に逝ける、と、聞いた。


懺悔の手紙を、定まらない筆圧で綴る。

申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない。



不意に、沸いた感情は「怒り」だった。


何故、死ぬ時まで、他人に気を遣わないといけないんだ。


俺は、何の為に、死のうとしているんだ。


酒が足りない。

良いんだ、もう、考えなくて。


ウイスキーを2本空けた。残りの1本に手を伸ばす。



俺が死ねば、全て丸く収まって

その後は、、、




【そこまで悩んでるなら、相談してくれれば良かった】とか

身勝手な事を宣う輩が湧いて、、、




、、、じゃあ、聞けよ。今、俺が生きてるうちに、聞けよ。



電話をかけても、出やしない。

たまに出ても、助けてなんてくれない。




ふざけんなよ。



【生きて】【ください】



ふざけんなよ。





今、聞け。この、俺の慟哭を。

俺は負けてない。負けてない!

身なりはボロボロだが、それはずっと戦ってきたからだ。



何を喚いたのか、定かではない。


俺は、気がつけば眠っていた。



翌朝、俺に残されたものといえば

ワイヤーロープと100円玉が2枚と


もう一度、立ち上がる気力くらいなものだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る