第4話 最高機密を聞いちゃった

 僕は慎重に王城へ忍び込んだ。兵士に気付かれないようにアクシデントが起きないように祈りながらの移動だった。


 のんびりみんなと笑って過ごしていける世界。仕事して喧嘩して笑って仲直りして、そんな日常を歩いて行ける世界。それらを守るためならやるしかないと僕は改めて腹をくくった。


 そしてその空白の10分になった。衛兵がいなくなったのを確認した後、速やかに移動して扉の鍵を魔法で開ける。カチリと音がして扉は開く。


 その扉を開けるとそこには魔剣グラムが鞘に収まり僕が来るのを待っていた。慎重に罠がないかを確認しつつ足音を消し気配をなくし、僕は魔剣グラムの元に近づいていく。


 そして魔剣グラムを前にして、罠がないのも確認した。そして僕は魔剣グラムを手に入れた。目的を達成し速やかに僕は移動する。できる限り最高速度で足音を消し気配をなくし僕は逃げた。

 

 そして10分の空白時間は終わる。警笛が鳴り響く。さすがに対応が早い。軍事国家なだけあると思った。


 僕はそそくさと王城の外へ移動し、近くに隠してあった武器屋の馬車に乗り込む。そして魔剣グラムを、1本銅貨10枚の投げ売りされている武器の入った樽へと雑に突っ込む。


 そして馬車で逃げ出した。警笛を聞いて付近で怪しい奴は見なかったか聞き取りし、周辺を調査をするだろう。


 その後、追手は準備をして各東西南北の4か所の関所に早馬を飛ばすだろう。


 それを勘案すれば稼げる時間は恐らく1~2時間だ。それだけ稼げればうまくいったと言えるだろう。


 そして僕はその時間までにここから先、サンクチュアリに帰るためには突破しなくてはいけない関所は三ヶ所ある。そのうちの最初の関所は、どうしても追跡部隊が来る前に抜けておく必要があった。


 関所には兵士が立って警戒をしていた。だが情報通り外へ出ていく人への警戒は薄い。


「深夜に申し訳ないです、お役人様。たった一人の母が危篤きとくという連絡を受けて居てもたってもいられずあわててやってきたんです」


と理由を話した。


 時間の節約も兼ねて


「いつも私たちを守ってくれてありがとうござます。せめてものお礼です」


といって金銭を多少握らせたら


「良い心がけだ。いつまでも親はいないんだ。大事にしてやれよ」


鷹揚おうようにうなずき関所を通してくれた。


 僕は早々にその場から逃げる。第一関門はクリアだ。次は第二関門。追手が来る前に2番目の関所をクリアできてるかどうか……


 心配も杞憂きゆうに終わり、誰にも会わずに第二の関所までこれた。空も白んできている。僕は安心した。うまくいけばこのまま逃げられるのではないかと。


 第二の関所にたどり着き先程と同じ理由を話しそでの下を渡す。


 普通なら充分という額を渡してしまったせいだろうか。逆にもっとしぼり取れないかと、欲深いこの兵士は思ったらしい。


「この積み荷はなんだ?何を運んでいる?」


と問われた。僕は


「武器屋の旅商人ですので武器を取り扱っています。なかなか掘り出し物も少なくて困ってるんです」


と答えた。


「最近は我が国も武器を買い集めている。良い値段で売れただろう?」


とこちらの懐具合を確認してきた。これ以上の時間はかけたくない。背に腹は代えられないと思った僕は、さらに賄賂わいろを渡そうとしたその時だった。


「あれ。この剣は立派じゃないか? 10銅貨でホントに買えるのか? 俺様が買ってやってもいいぜ?」


と笑いながら聞いてきた。兵士が手にしていたのはまさに魔剣グラムだった。僕は心は平静を装い、けれどもなげいた振りをながら話をする。


「お役人様。その剣は呪われた魔剣なんです。見た目は良いですが、その剣を手にした者は例外なく非業ひごうの死を遂げる。そういういわく付きのものなんです。さすがにそんな呪われた魔剣を、あなた様のような国を守る方にお売りするわけには参りません」


と僕は言い訳する。兵士は慌ててその剣をたるの中へ投げ込み


「そ、そうか。そんな呪われた剣ならお主も処分に困るであろう。なんならサンクチュアリの国王にでも売りつければいいのではないか? あの国も10日後には我らが攻め込むのだ。魔剣グラムがあれば、どうせ滅ぼすのも時間の問題だ。サンクチュアリを魔剣グラムで焼き払い、そのまま奪い取る。それは決定事項だからな」


 僕はその情報に目が点になる。しかし、必要以上に驚いてるようには見せないように気をつける。


「左様でございますか。貴重な情報をありがとうございます。帰りは巻き込まれないように、サンクチュアリは避けて母の元に帰ろうと思います」


とお礼を言って、関所の扉をあけてもらい僕は逃げた。


 そして慌てて騎士団長のサリアさんに今の話を魔法を使って報告する。返事がないのが不安になるが、文句を言っても夜中だし仕方がないだろうと僕はさらに逃げた。

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