第3話 夜明けが来るまで

 僕は武器屋の旅商人と言う設定でアルタリアに乗り込む。そして道中のあちこちに目印をつけ罠を作った。


 罠の作成にかかる時間とその罠作成中に襲い掛かってくる魔物たち。魔物も倒しつつなのが正直面倒だとは思うけれど、これを作っておかないと自分の命は恐らくないと思うと作らない訳にはいかなかった。


 念には念をいれて必ず作動してくれるように祈りつつ、慎重に罠とその目印を作っていった。


 できることなら雨も降ってほしくない。その祈りは届いたのか、乾季だったからかは分からないけど、雨は降らないうちに軍事国家アルタリアの首都ニーベラへ着いた。


 そして僕は情報収集にひたすらいそしむことになる。


 その間も騎士団長のサリアさんに毎日の報告もしていた。伝書鳩でんしょばとみたいな便利な魔法があるので、それを使っていた。


 また、せっかくなのでアルタリアに潜り込んでいるスパイさんも教えてもらい、そのスパイさんとも情報交換をおこなった。


 もうず――っと前からサンクチュアリのスパイさんがこの軍事国家のアルタリアに住み、住民として溶け込んできた人がいる。


 騎士団長のサリアさんに許可をもらい、そのスパイさんたちとも情報を交換する。


 外から入ってくる者にはかなり警戒している。しかし国の外へ出ていくものには、それ程、注意はしてないようだと言うありがたい情報も頂いた。


 そして色んな人から色んな情報を聞いて、それを総合的に判断すると見えてきたのは、どこかの国に戦争を仕掛けるつもりなのではないか? という推論だった。


 まず武器や防具を種類を問わず大量に買い集めていること。食料を大量に買い叩いていること。馬も買い集めていること。


 そして1ヶ月前に徴兵を実行したという事実。


 あとはどうも兵たちの雰囲気が浮足立っているように感じること。これは僕の勘でしかない。ないけれどアルタリアの国の状況について集めた情報、そして勘を働かせると嫌な予感しかしなかった。


 それも騎士団長のサリアさんにはきっちり報告済みだ。最悪の事態が起こったとしても、安心してるところに急襲されるよりは、警戒してるところに敵が来た方が対応も幾分いくぶんか楽だろうと思ったからだ。


 そして、僕は次に王城の内部情報も集めた。断片的な情報でもかき集めてまとめれば、思わぬ状況がうまれていることだってあるのだ。

 

 城の内部の地図もスパイの方々から頂いた。命がけで集めてくれた情報をくれるのだ。本当に心からお礼を言った。すると返ってきた答えは


「この国は裏切りを恐れ、密告者に多額の報奨金を支払っています。情報統制は徹底的で、それを恨みに思っている人だってとても多いんです。そのうえ、クーデターを恐れて緘口令かんこうれいまででている始末。でも、だからこそ人との繋がりはあまりない。繋がりを作りたくても密告を恐れて他人に気を許せない。だから私たちはこの軍事国家が滅んでほしい。そう願っているんです」

 

 だから協力は惜しまないとのことだった。今までのスパイの人たちの命と引き換えに、手に入れたとさえ言える機密きみつ情報の王城の地図を頭に叩き込む。


 そして逃げる手順と持ち物、移動経路をもう一度確認した翌日。朝起きてすぐに騎士団長のサリアさんに今日の深夜2時、アルタリアの王城に忍び込むと報告した。その後、月の明かりを頼りに僕は軍事国家アルタリアの心臓である魔剣グラムの奪うのため、王城に忍び込むのだった。


 色んなぎだらけの情報をまとめて精査すると、10分間だけ兵士がいなくなる空白の時間があることが分かった。


 その間に魔剣グラムを奪えれば僕が優勢。それができなければ苦しい戦いをしなくてはならなくなる。


 とはいえその空白の時間は8時間ごとに訪れることも分かっている。けれど深夜2時に忍び込むことを考えると8時間後はもう日が出ているだろう。チャンスは一度だけだと僕は気合を入れなおす。

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