第2話 「ウマい亭」のミスランさんが連れていかれた理由

「なんでそんなことになったんだ?」


「あの軍事国家に文句をいったらだめだろう!」


「あいつら攻めてきたら俺たちはみんな奴隷兵にされて殺される!」


 さまざまな意見が飛び交うが、まずは僕は落ち着いてください。と言って平然と振る舞う。


「無意味な混乱より情報を集めましょう。ミスランさんは何人のアルタリアの兵士に連れていかれたんです?」


「3人の兵士だ」


と短く答える「ウマい亭」の店主のガイツさん。


「何が口論の元になったんです?」


と僕が聞くと


「兵士たちがお前のことを、いつも酒飲んで食事してるだけのガキンチョだ。この前、最弱のスライムの核を集めて来いってクエストすら失敗してたらしいぜ。ヤツも以前は勢いがあったらしいけど、今はまったくどうしようもないな。って兵士が大声で笑ってた」


 なんか会話の雲行きが怪しくなってきた。


「そしたら、うちのミスランがそんなことない。シグライザーさんはそんな弱くない! シグライザーさんのこと何も知らないのに、なんでそんなこと言えるの? ってアルタリアの兵士相手に啖呵たんかをきって怒りを買って、連れていかれた」


「はぁっ!?」


 思わず僕は驚きを口にしてしまう。何が原因か調べてみれば原因は僕だった!?


 ちょっと落ち着いて話す必要がありそうだと僕はガイツさんと改めて話をするのだった。



 そしてでた結論はミスランさんを助けに行く。ついでだしミッションも受けて秘宝も奪ってくる。そう決めた。


「お前、あのミッション受けるのか!? 正気か? 死ぬつもりか!?」 


「時間的にはまだそんなに経ってないから、今すぐ追いかければ次の街で追い付けるはずです。国境を超える前だったらなんとかなる。時間はないんです。急ぎますよ!」


と言って僕は武器屋の旅商人になりすまし、準備を整えて馬車を走らせるのだった。


「も~~。なんでこんなことになるかなー!」


と僕はため息を吐く。想定外だったのは間違いない。でもミスランさんが僕のために文句を言ってくれたのは、正直言って僕は悪い気はしていなかった。


 でも誰かが止めなければあの軍事国家は世界を滅ぼす。そんな気もしていた。


 やっと次の街に着いた僕はギルドに聞き込みした後、報奨金は高めに設定しさらに早ければ早いほど多く支払うからとギルド嬢に「探し人」の依頼をだした。


 酒場を片っ端から探しまわった。すると怪しいアルタリア兵たちがいるという情報が入ったので至急、ギルドに戻ってほしいと僕に連絡が入った。


曰く、「猿ぐつわをされたような女性の声がする動くズタ袋を担いで、宿屋に入っていくアルタリア兵を見た」とのことだった。分かりやすすぎて一瞬、困ったレベルだ。


 場所と時間を確認してとりあえず前金の報酬を支払った。成功したら改めて残りのお金を支払うということで合意して僕はその現場へ急いだ。


 店の主人が「アルタリア兵の方以外は入れません」と言っていたことなど無視して、扉を一つ一つ蹴り飛ばし破壊して確認していく。そして今にも貞操ていそうの危機にあるミスランさんを見つける。


 僕はそれを見て間に合ったと安心すると同時に行動を開始する。相手の目に素早く2本のナイフを投げ2人を行動不能にし、ミスランさんに襲い掛かろうとしているアホには急所を蹴り飛ばしておいてやった。


 使い物にならなくなるといいと思った。僕を馬鹿にしてたというので容赦もしない。


 ミスランさんは僕をみて泣きながら抱きついてきた。


「よかったです。間に合って本当によかった」


と落ち着くまで「大丈夫です」「安心してください」と声をかけながら、肩を軽くぽんぽんとたたき続けた。


 ミスランさんが落ち着きを取り戻した後、ギルド嬢に協力をしてもらった礼をいい、情報提供者には残りの報奨金に色をつけて渡したら大喜びしていた。


 そしてギルドの護衛をつけて、ミスランさんには心配しているであろうガイツさんの元にすぐ帰るように説得した。渋々しぶしぶではあったがミスランさんは納得した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る