✿6 アンコール

 ぶたいの幕が下りると、大きなはくしゅが起こった。


「うっうっう……」


 泣いていたのは、愛原だった。

 ふだんのツンツンした様子はなかった。

 南条が、愛原の頭を優しくぽんぽんとした。


「空っち……。感動したよ!」


 学ランにひっついて、なみだでぬらしていた。

 羽生は、ぼーっとしていた。

 それを見て、神がはっとして、南条に告げた。


「アンコールだよ。幕、幕!」


 幕が上がりながら、南条はマイクを持ち、四人でばたばたと登場した。

 配役を読み上げる。


「野美ひなぎく役、羽生志澄香」


 羽生は、最初に呼ばれたので、訳も分からずに、ぺこりとおじぎをする。

 ワー!

 パチパチパチパチ!

 

「三上直役、神海」


 神にだけ、黄色い声が聞こえている。

 キャー!

 カッコいい!


「室生つぼみ役、愛原ジュリ」


 愛原は、素敵なポーズで、さっきまで泣いていたのをカバーしている。

 ワー!


「ナレーション、南条空でお送りしました」


 ワーワー!

 キャーキャー!

 パチパチパチパチ!


 幕を下ろしてもらい、ぶたいそでにもどる。

 音楽講堂の片付けは、次の演目があるので、さっさとしなければならない。

 あわただしく、講堂を後にした時、不思議な空気が流れた。


「私達、和歌花絵です。こちらが和歌で、私が花絵です」


 みんなで、講堂の前で固まってしまった。


「素晴らしいぶたいに招待してくださり、ありがとうございます」


 お祝いの花束をくださった。

 にこにこして、愛原が受け取った。


 ◇◆◇

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