第2話

 シスターに教会内の案内を始めたら、アルバートさんとロブさんは休憩も兼ねて教会の外で待つことになり、代わりにリラさんが俺とシスターと共に行動することになった。

 一応、二人にも頭上と足元に注意することを真っ先に伝えた。

 二人が頭上を見上げてる時、リラさん側から鼠がチューチュー鳴きながら横断すると、シスターとリラさんが「ひぃっ!」と一、二歩下がった。

 とりあえず頭上一割、足元九割注意で、と付け足した。

 二人とも「は、はいっ!」と返事をした。

 シスターに各部屋へ案内すると、持参してきたであろうボードを左腕で抱えるように持って、真剣に色々と書いていた。

 さっきまで鼠に怯えていた子とは思えないくらいに。

 そんな事を思って見ていると、シスターがチラッと俺を一瞬見て、そのまま書きながら話しかけてきた。

 「ロイさんって、兄妹とかいらっしゃいますよね」

 「はい、いますよ。なんで分かったんですか?」

 「私を見る目が、まるで妹を見てるかのような目だったので」

 ドキッと心臓の鼓動が少し速くなったのを感じつつ、急いで頭を下げて謝罪した。

 「す、すみません!シスターをそのような目で見てしまい!」

 一度ならず二度までも。

 触る行為みたいに罰則は確かなかった筈だが、シスターを不快にしてしまう行為には変わりない。

 「いえ、別に謝るような事ではありません。頭を上げてください」

 はぁ……とシスターがため息を吐く。

 「参考までに、どんなところが子供っぽいですか?」

 俺は少し考えた後、話した。

 「一生懸命……な、ところですかね。早く立派になりたい……みたいな?まぁ単純に背が小さくて、童顔だからだと思いま…………す?」

 童顔だからだと思いま、のところでシスターの顔を見たら、わなわなと顔を真っ赤にして全身が震えていた。

 あれ?怒った?

 シスター?と言おうとした瞬間、ビシッと肘まで覆われた白い手袋の人差し指が向けられた。

 「本来なら刑罰パニッシュメントです!ですが!ですがですよ!シスターは寛大な心でなくてはならない!小さな事は目を瞑る!だから!許します!許しまぁぁす!」

 言葉では許すと言ってるが、明らかに顔は怒っている。

 横で見ていたリラさんが肘で脇腹を小突く。

 「シスターを怒らせちゃダメだよー、ロイくん」

 全然そんな事思ってないじゃん。面白がってるよ、この人絶対。

 「シスター、すみませんでした!」

 「ミーファ=アラベルは貴方を許します!!!」

 全然許してませんよね?口調が強いよ。ぷんぷんだよ。

 トラブルがあった中、教会の調査は終わった。

 気のせいだと思うが、シスターが俺を視界に入れないようにしてる気がするが、気のせいだろう。そうだよね?

 教会の外に出る最中、俺はシスターに質問をした。

 「大体、建て替え費用はいくらになりますか?」

 「……建て替えは無料で行っています。なので、費用面はご心配なく」

 よかった。無視までされるんじゃないかと若干ヒヤヒヤしていたが、無視はされなかった。

 というか、無料で建て替えてくれるとは思わなかった。素人予想で百万〜三百万ルドくらいかなと思っていた。

 「無料とは凄いですね!ありがとうございます」

 「感謝するべき人は私ではなく、プリースティス様です」

 ミシエルには何回か外交で小さな頃に行ったことあるが、教会には行ったことはなかった。

 あそこの海鮮系は美味しくて好きだ。

 もしミシエルに行く機会があれば、プリースティス様に会って、お礼をしよう。あとシスターの件も謝罪しよう。

 教会から出てくる俺たちに気づいてアルバートさんが振り向いた。

 「お?終わったか?」

 「はい。終わりました」とシスターが答えた。

 「もうミシエルに戻られるんですか?」

 俺の問いかけにアルバートさんが答えた。

 「いや、流石に疲れちまったから、今日は近場のモーテルに泊まろうと思っている。それでいいよな?リラ!」

 「はい!私は構いません!」

 リラさんの返答を聞いた後、シスターへと視線を向ける。

 「シスターもよろしいですか?流石にシスターを部屋に一人にはできないので、リラと同部屋になります」

 「問題ありません」

 「というわけで、ロイ。近くのモーテルへ案内してくれないか?」

 「分かりました。自分が宿泊しているモーテルへ案内します」

 「お前、ここの住民じゃないのか?てっきりここの住民だと思っていた」

 「はい。ここの住民ではないです」

 「そうか。じゃあお前の泊まっているところに案内してくれ。ちなみにそこはシャワー付きか?」

 「シャワー付きです」

 「なら良かった」

 そう言って、馬車の中に入っていった。

 後を追うように、シスターも馬車に乗り込んだ。

 「はいはい!ロイくんも早く乗って!乗って!」

 リラさんに背中を押されながら、馬車に乗り込んだ。

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