Ch. 04 コードとテンポ

 さて、いよいよ制作に入りますか。

 筆者の場合だと、作曲って頭の中でほぼアレンジまでされて鳴ってる状態なのを、具体的な音として再現していくという形です。


 必ずしも1曲まるごと頭の中でできてるというわけではなく、曲の中のAメロだとかBメロだとか、あるいはサビだとか、時にはイントロだったりフレーズだったり様々です。

 とにかく頭の中で鳴っているサウンドを具現化していきます。ちょっと小説を書くのと似ていますね。


 それで、手始めに大抵はキーボードでコードを弾いていきます。

 この時点でギターで録音しちゃうと、テンポを変更したりするのに不便なので、キーボードでMIDI信号を記録していく感じです。

 MIDIというのは、Musical Instruments Digital Interfaceの略だそうで、おおよその演奏にまつわる情報を数値化したデータで、メーカー間の統一規格として結構古くからある電子楽器のための規格らしいです。

 

 わたしはこの段階はたいていピアノの音源を鳴らしていることが多いですが、この時レコーディングしているのは実際のオーディオではなくて、あくまでMIDI信号なので、後で音源を差し替えたり、テンポを変えたりしても、信号に乗っかってちゃんと再生(というか再現に近いかも)されます。


 言ってみれば、音を記録しているんじゃなくて、どうやって弾いたかを記録していると言えばいいでしょうか。なのでピアノからオルガンに変更しようが弾いたとおりに再現してくれるわけです。ミスしたり変更したい箇所があったりしても自由に編集可能です。


 コードパートを弾いたら、今度はメロディを録音します。

 大抵はシンセサイザーの適当な音色を選んでメロディのトラックにセットしておきます。


 一通り弾いたら、わたしの場合Logicのマーカートラックという機能を使って、コードネームを入力していきます。

 コードを弾いたトラックには、自分が演奏したMIDI信号が、縦軸が音程、横軸が音価、色の濃淡が強弱といった具合にグラフィカルに表示されています。

 これらを選択すると、ソフト側が自動的にコードネームを判断して表示してくれますが、ボイシングによっては必ずしも正確に判断してくれないので、あくまでわたしは参考程度にしかしてません。

 

 ちなみにボイシングっていうのは、コードの構成音をどういう並び方で弾くかということです。ドミソなのかソドミなのか、はたまたミソドなのか、そういうことです。

 

 あと実際に弾くときにはケースバイケースで構成音の中で優先度の低い音はオミットして弾くことも多いので、機械は判断を誤ることがあるのです。特にソロじゃない演奏ではコードのルートをベースに任せているので敢えてルートをオミットしてる場合もありますから、そうすると確実に違うコードネームとして判断されてしまいます。


 さて、今度はトラックにドラム音源をセットします。

 わたしの場合はBFD3というドラム専用音源を愛用していますが、ここでもやはりこの音源の中で自分用にプリセットを作ってあるドラムセットがあるので、そのプリセットを読み込みます。

  読み込んだらこの音源を各楽器ごとにコンソールの各トラックにセットします。

 

 シンバル各種、タム類を各トラックにセット。スネアはバターサイド(打面)、スネアサイド(裏面でスネアと呼ばれる蛇腹状の金属網線が張ってある)、リム(太鼓の縁の金属の輪っかのことですが、このマイクが収録している音は,それを叩いた音というよりは胴鳴りと言った方が正確)と3本のマイクで収録されているのでそれぞれトラックを分けて割り振ります。キックもやはりバターサイドとフロントサイドを割り振ります。

 

 さらにこのドラム音源は、本格的なドラムレコーディングで行われているのと同じくセットの上方で収録しているマイクと、ルーム残響を収録しているマイクの音もあるので、それらも各々トラックに割り振ります。


 ドラムのパターンをザックリと打ち込んでいきます。

 MPCのような指ドラム専用機やキーボードを使って実際に生演奏で打ち込む人もいますが、わたしはステップ入力です。


 この時点ではドラムはホントザックリした打ち込みで、基本的なパターンをコピペで伸ばしただけみたいな状態ですね。

 

 再生しながら主にスネアの音色はどんな感じにしたらいいのかなと吟味に吟味を重ねます。

 方向性を定めたら、スネアのチューニングやミュート具合を詰めていきます。

 それが決まったら、キックやスネアの各トラックのEQとミックス具合を詰めていきます。


 この時点でコンプレッサーのかけ具合等も大体決めます。

 

 思い通りの感じに仕上がったら、他のドラムパートのEQやバランス、そしてトップマイクやルームエコーのミックス具合を大体決めます。


 ここまでできたら、再び曲作りに戻りますが、わたしはここでテンポを吟味します。

 実は最初にテンポはなんとなく設定してから始めているのですが、あくまでなんとなくなので、ここでようやく厳密にテンポを詰めていきます。


 ここまでやると(音としてはまだコードとドラムとメロディしかないですが)、わたしの頭の中では最初に浮かんでいた部分以外のところも浮かんできます。

 実際の音を聴いてそこからのフィードバックでさらにイメージが膨らむ感じでしょうか。


 なので他の部分を弾いてドラムパターンもその分また追加して、全体の構成を決めてそれに応じて演奏データの一部をコピペしたり移動したりします。

 追加で弾いた部分のコードネームも、忘れずにマーカートラックに記入しておきます。


 全体の構成が決まってテンポも定まったので、いよいよ打ち込み以外の楽器を録音できる状態です。

 わたしの場合ここでベースを入れることが多いです。ベースが最後の方になる場合もあるんですが、確率的にはベースのことが多いです。


 ベースをオーディオ・インターフェイスに接続します。

 ちなみにわたしの環境ではパッシブピックアップのベースをエフェクターなどは介さずに直なので、ハイインピーダンスの入力設定ですが、エフェクターを通す場合やアクティブピックアップの楽器の場合は、インピーダンスを確認する必要があるかもしれませんね。

 まあ極端に音痩せするようなら設定が間違ってるということでしょう。


 んで、わたしはキーボード以外はそんなに達者じゃない方なので、自分で考えた難易度の高いフレーズを結構練習しないと弾けません。

 しかも一曲通してノーミスで弾くことなど不可能なので、少しずつ分割してレコーディングしてます。


 これができるのもDAWが素人に優しいところ。

 何度でもやり直せますし、何テイクも録った中から一番いいテイクだけ選び取って繋げるといったことができます。

 わたしの音楽制作は、こういうズルで成り立ってます。

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