002: 金《いのち》を賭けた戦い
<<ルーン級巡洋艦バニラ艦橋>>
ルーン巡洋艦バニラのシャロン艦長は、腰まで伸ばした金髪のストレートロングヘアーに第二種軍服がよく似合う。
こんな美人な艦長がいたら、部下になりたい。と思わせるのは最初だけ。
年度業務計画に、この2隻
まさにEDF創設以来の暴君だ。
なお、この訓練の後は、
シャロン艦長は、マイッタネー、ホントマイルヨー。と
副長が艦橋の電磁ディスプレイに表示された座標を確認する。器用に立ちながら、ウトウトしているシャロン艦長に声をかけた。
「シャロン艦長。これより演習宙域です」
巡洋艦レゼングラースのクルーたちから恐れられているシャロン艦長が、あくびをしながら間抜けな声を上げる。
「ふぁ…はい?」
作戦立案のために設けられた恒星地図の盤上には、シャロン艦長とクルーたちとのバニラとレゼングラースのどちらの艦が勝つかという、倍率が書かれていた。
シャロン艦長のことだ。
なので、もちろんのこと。シャロン艦長以外の士官全員が相手艦レゼングラースに賭けた。
もはや、この艦は、シャロン艦長の絶賛パワハラ独裁政権下だ。
嫌な噂が絶えないシャロン艦長ではあるが。その一方。観艦式でスナイパーから大将を守った英雄として褒章を授与されている。
副長がその件について軽く触れると。
「あの事件で何かを失ったのは私だけではない…。」
と言っていた。
シャロン艦長は何を失ったんだ…?副長は軽く考えを巡らせるが。すぐにその思考を停止する。これ以上先は危ない気配を感じ取ったらだった。
副長は、兎耳のパーツを生やした笑顔の素敵な幼女に話しかけた。
「ルナは椅子へ」
ルーンラビットと呼ばれているアンドロイド幼女のルナは、ルーンラビット・プロジェクトで作られた。
省人化のために作られた艦載戦術型アンドロイドだ。
「はーい」
ルナは訓練のワクワク感を抑えられない。
ルーンラビット・リンクシートへ向かうルナをシャロン艦長が呼び止め、ニヤリと笑ってこっそり耳打ちをする。
「フッフッフ…ッ、分かりました~。おまかせあれー」
ルーンラビットが全天ディスプレイの専用シートに座する。
副長は演習が始まる前から、嫌な予感がしている。
目にやる気の宿ったシャロン艦長は、艦橋の艦長席へ鎮座し命令を下した。
「…よーし、戦闘配置ー!第三戦速」
艦橋クルーたちが動き出す。
『総員戦闘配置』
副長の艦内放送と同時に、アラームが鳴り響き。艦内の自然光のライトが戦闘中を示す赤いライトに切り替わる。
「第三戦速。方位60に転進します。」
HUD航行ヘッドセットをつけた操縦士が握られたハンドボール状のハンドルを操艦する。
「こちら艦長。
シャロン艦長が
『こちら
「さて、諸君…。我々のワルツを見せてやろうー!」
こういう悪ふざけがEDF内で金髪の悪魔と呼ばれる由縁の一つだ。
悪魔ならかわいいほうで副長には魔王に見えている。
≪火星・地球圏の中間宙域。アラハ級巡洋艦レゼングラース 艦橋≫
Earth Salf Defance Force『EDF』の新型艦アラハ級巡洋艦レゼングラースは、これまでの訓練の総仕上げとして、2隻巡洋艦による対艦訓練デスマッチのために、その黒塗りの艦影を
窓のない電磁ディスプレイで囲まれた艦橋は、平時体制を示す青の床下照明で照らし出され、限られたオペレーターの定時報告以外は、端末の起動音だけが静かに響いていた。そんな中、一際青く縁取られたリンクシートに特殊スーツを着込んだコハク少尉が横になるように背を預けていた。
宇宙でも、
それを克服するため、新型艦では、
リンクシート用のヘッドギアを深々とかぶった薄紫色のショートヘアに清楚なコハク少尉の緊張した表情が隠され、誰も窺い知ることは出来ない。
なにせ、相手は、シャロン准将の巡洋艦なのだ。何をするかわかったものではない。下手すると、性能テスト名目で茶目っ気出して実弾を使用する可能性すらある。
薄っすらとにじみ出る。そう覚悟しつつコハク少尉は異様な喉の乾きを感じていた。
「訓練開始時刻です」
艦橋の航海士官が訓練開始の時間を知らせると、レゼングラースが一気に騒がしくなる。
『これより、戦闘訓練を開始する。総員戦闘配置』
艦橋から全クルーへ艦内放送が
自動航行システムにより、慣性航行を行っていたレゼングラースの指揮権が、通常操舵手から、特殊操舵手コハク少尉へと委任される。
「
コハク少尉が艦隊と接続を開始する。
「
コハク少尉が、オペレーターに呼応する。
「…
足早に艦橋オペレーターが操舵リンクへの
「
「
「
「
コハク少尉の青い瞳が艦橋と同じ真っ赤にそまり、全身に紋章のような
EDF最新のルーンラビット・プロジェクト技術の極地である新鋭艦レゼングラースが大きく鼓動した。
「レゼングラースの腕の見せ所よ。あの女、シャロンに絶対負けるな」
レゼングラースのヒスイ艦長が、コハク少尉に近づき活を入れる。
「了解…ッ!」
コハク少尉は、緊張を払拭するように、私は艦橋に響き渡るぐらいの大きな声を張り上げた。
最新鋭艦と老朽艦の
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