第179話 奴隷の街

-1時間後

@ローアンの街 鉄道駅


「ああ、丁度昨日列車が出発してしまって……次の便の到着は、数日後になりそうですね」


 街に来て真っ先に駅に向かったが、列車の時刻表などは存在しなかった。駅員に尋ねたところ、列車は不定期で数日に一度来るとの事だ。正確な事が分からないのは、鉄道の破損やら野盗・ミュータントの襲撃、他の駅での荷の積み替えなど色々事情があるのだろう。

 さらに運の悪いことに、ちょうど俺達が来る前日に列車が街を去ってしまったので、次の列車の到着はしばらく後になるとの事だ。


「どうする、ヴィクター?」

「とりあえず、列車が来るまではここで適当に依頼を受けよう。まあ、ひとまず今日は買い物だな。例のポルデッドハウンドの牙を換金したら、街を回ろう」



 * * *



-昼

@ローアンの街 市場


「さあさ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 誰が当たるか賭けてみませんか!? 一枚100Ⓜ︎からだよ!」

「俺はAに20枚!」

「へっ、俺はBだな。30枚くれ!」

「へい、まいど!」


 あれから街の役所で牙を換金して、昼食を済ませた俺達はローアンの街を回る事にした。ひとまず、消耗品を買い足す為に市場に出たが、市場の一角に人だかりができているのに気がつき、足を止めた。

 雰囲気から察するに、何かの賭け事だろうか?


「ねぇ、ヴィクター! あれ面白そう♪」

「おい、賭け事は禁止だってあれほど言っただろうが!」

「うっ……で、でもヴィクターなら賭け事強いし……勝てるでしょ? それを横で見てるのはいいんじゃない?」

「まあ、それなら……って、やらないけどな。ところで、あれ何やってるんだコレット?」

「あれ? あれは“おかしら危機一髪”って賭けだよ。ローアンの名物だね」

「お、おか……何それ?」

「……で、具体的にはどういう賭けなんだ?」

「ええと、まず反抗的な奴隷を拘束して樽に詰める。そして、首輪のリモコンを客の誰かに押させるんだ。それで、どの奴隷が当たるか賭けるってわけ」

「「 ……? 」」

「まあ、口で聞くより見た方が早いんじゃない?」


 人だかりをかき分けて、その“お頭危機一髪”なる会場を見る。そこは野外射撃場の様な場所で、樽から頭を出した男達が三人並んでおり、皆猿轡をつけられてガタガタと震えていた。

 よく見れば、奴隷の証である【首輪】をしている。だが、俺が知っている拘束首輪では無いようだが……。


『さて、ではスイッチを押してもらう人を募るとしましょう! 誰か、やりたい人いませんか!?』

「はいは〜い! 何だか分からないけど、私やりたい!」

『おおっ、ではそこの可愛らしいお嬢さんにお願いしようか!』

「か、カティア!? やめといた方が良いよ!」

「何よコレット……。あ、コレットの歳だとはしゃぐの躊躇っちゃうんでしょ〜? 嫉妬はやめてよね〜」

「ちが……もう、勝手にすれば?」

「……嫌な予感がするな」


 カティアは、ルンルンとした感じで興行主の商人に連れられると、会場の真ん中に置いてあるテーブルまで歩いていく。テーブルには3つのリモコンが置かれており、どれか一つを選ぶらしい。


「さあ嬢ちゃん、どれか一つを選んでくれ」

「う〜ん……これ!」

「よし、じゃあこれ握ってくれ。嬢ちゃん、その様子じゃ初めてかい? いいか、今から皆が掛け声あげるから、それを合図にスイッチを押してくれ」

「分かった!」


 どうも、リモコンを選び終わったらしい。すると興行主は、俺達客側に掛け声をかける。


『さあ皆さん、準備はいいですか!?』

「おう!」

「もちろんだぜい!」

「B死ねぇッ!」

「A来いA来いッ!!」

「C! C! C!」

『ではいきますよ? ぶっ飛べ、危機いっぱ〜つッッ!!』

「「「「 いっぱ〜〜つッッ!! 」」」」


──ボンッ! トサッ、コロコロコロ……


「えっ……」

「「「「 うおおおおおおッ!! 」」」」

「……やっぱり」


 カティアがスイッチを押すと、真ん中の樽の男の首輪が爆発し、頭が一瞬空中に舞うと、地面に転がった。胴体はそのまま樽の中へと沈み、血も樽の中に入るので、そこまで外に飛び散らないようだ。あの様子じゃ、処理も楽だろう……。

 どうも、先程違和感を感じた首輪だが、爆薬が仕込まれていたらしい。おそらく、拘束首輪の代用なのだろうが、何とも野蛮な代物だ。


 賭けに負けた者がやったのだろうか。掛け札と思しき紙切れが、紙吹雪のように辺りに舞っている。


「……ただいま」

「おかえり。楽しかったか?」

「んな訳ないでしょ!?」

「だよな。昼食った後で良かったな」


 よく見れば、街の至る所に首輪をつけた人間が見られる。“奴隷の街”というのも、あながち間違ってないらしい。


「あ〜、気分悪い! 私が殺したみたいじゃない!」

「いや、カティアが殺したんだよ」

「いや、それは違うぞコレット。カティアは殺してない」

「「 えっ? 」」

「カティアが押したリモコンだが、あれはただの模型だ。本物のリモコンは、興行主が持ってる」

「ど、どういう事、ヴィクター?」

「おそらくだが、一番儲かる奴を意図的に殺してるんだ。例えば、一番賭け金が少ない奴を殺すと、当たるのは当然少数になる。配当金もその分少なくなるから、客の賭け金の多くが興行主に入るって寸法だ」

「何よそれ、イカサマじゃない!」

「これのいやらしい所は、バレにくい所だ。ボタンは客に押させてるし、実際に当たってる奴もいる。外した奴は、不正を疑うよりも、自分は運が無かったって諦めるって感じだろうな」

「うわ、タチ悪い……」

「し、知らなかったよ……うわ、あの時賭けるんじゃなかった!」

「コレット、お前いくら負けたんだよ?」

「言いたくない!」



 * * *



-数十分後

@ローアンの街 市場


 例の生首ロケット会場を後にした俺達は、市場で武器を探していた。コレットのライフルがダメになったので、その代わりを探しているのだ。

 残念な事に、この街のギルド直営店が臨時休業らしく、ギルド製の武器が買えない為、こうして市場の物を見て回っているという訳だ。


「こ、これなんてどう?」

「やめとけ。よく見ろ、銃身がズレてる。ライフリングも仕上げが甘い、こんなの当たるわけないだろ」

「ヴィクター、そんな事言ってたら何も買えないわよ。普通はどっかで妥協するものよ?」

「そうだよ、ギルド製じゃないんだから……」


 低ランクレンジャーあるあるだろうか? 俺の場合、クエントにボリスの店を紹介されていたので、武器を見に行く際はもっぱらあの店を利用していた。

 確かに紹介される前にカナルティアの市場で見た武器は、ここも然り、どれも作りが粗雑であり、まず買わない物ばかりが並んでいた。だが、並んでいるという事は売れるという事だ。

 崩壊後の世界では、人命が安い。武器も安くて弾が出れば、信頼性や精度は二の次なのだろう。


「いいや、自分の命を預ける物に妥協なんてできるか! こういうのは、徹底的に選ぶもんだ。……そういやカティア、後でお前の銃見せろ。ちゃんと手入れできてるか見てやる。それから、そもそもちゃんとした武器なのかどうかも見てやる」

「い、いいわよ別に! これ、ボリスのとこで買ったやつだから大丈夫よ!」

「そもそもコレット、今までなんでボルトアクションライフル使ってたんだ? バックアップって、中〜近距離のサポートだろ? 火力不足だと思うが……」

「べ、別にいいでしょ!」

「どうせ、弾代ケチる為でしょ? 意外とダムとかで弾ばら撒くと、出費が大きくなるのよね〜」

「うぐっ……!」


 これも低ランクレンジャーあるあるなのだろうか? まあ、長年そんな事をしていれば、ランクアップなどできないだろう。

 そういえば、そもそもコレットはいつからレンジャーをやっているのだろうか? セックスしてる時に、昔の話を聞き出そうとしたが、頑なに拒否してきたので、実は未だに彼女が何者かわかっていないのだ。

 コレットは、エキゾチックな顔立ちの綺麗なお姉さんだ。普通にしてれば、行き遅れ(崩壊後基準)たりなどしないと思うのだが……。


「な、何よ……人の事ジロジロ見て……?」

「いや、何でもない。とりあえずまだ武器持ってるんだろ? とりあえず、それ使えよ」

「え、でも……」

「弾ならケチるな。後で、その弾も買っとくから……もちろん、必要経費で出してやるよ」

「それ、初めて見るけど、この辺りの武器じゃないわよね? どんな武器なの?」

「私の故郷の武器よ。短機関銃って言えば分かる?」

「で、どこ出身なんだ?」

「そ、それは……」


 さりげなく聞き出せないかと思ったが、無理そうだな。まあ、俺も自分の事(崩壊前出身、200歳オーバー)は伝えてないので、お互い様か。

 これから仲を深めていければ、いつかは聞き出せるだろうか?


「ねぇヴィクター、これとかどう!?」

「じ、嬢ちゃん困るよ! それ爆弾だからッ! 危ないからぁッ!」


 目を離したすきに、カティアが他の露店にちょっかいを出し始めたらしい。コレットが俺から逃げるように、カティアを止めに行く。

 俺も相棒?として、止めに行こうとしたその時、男が俺の進路を妨げて、声をかけてきた。


「なあ兄ちゃん、兄ちゃんってば!」

「うん、俺の事か?」

「そう、アンタだ! どうだ、ウチの店も見てってくれよ!」

「悪いが今は……あの店、何売ってるんだ?」

「へっへっへ……気になるだろう? ウチは紳士御用達、奴隷用品店だ!」

「奴隷用品?」


 何やら、キャッチの男に捕まってしまった。断ろうとしたが、男が指差した屋台が気になり、話を聞いてみた。

 というのも、その屋台が黒い布で覆われたテントの様な形をしており、外から中が窺えないようになっていたのだ。……実に怪しい雰囲気を放っている。


「へへへ、見てたぜ兄ちゃん。良い女を二人も侍らせてるなんて、憎いやつだな! ウチは、そんな兄ちゃんにピッタリの物を扱ってるぜ!」

「だから、具体的に何を扱ってるんだ? それに奴隷用品って何だ、あの二人は奴隷じゃないぞ」

「ままま、いいからいいから! 見りゃ分かるって!」


 そのまま男に押し切られるように、俺はそのテントの中へと足を踏み入れた。


「こ、これは……!?」

「どうだい、良いもの揃ってるだろ?」


 そこには、色とりどりの布切れ……いや、女性用の下着、それもアダルティな物がズラリと並んでいた。奴隷用品店……つまるところ、性奴隷?用のエロ下着専門店という訳か。下着以外にも、ボディピアスと見られる物や、何に使うか分からないムチやら、拘束具とかも売ってる……。

 店には、俺の他にも身なりの良い男が数人、俺の視線など気にせず、堂々と下着を選んでいる。……なんか、キモいな。


「ふむ、次はこれを着させて……グフフ……」

「う〜む、これ……いや、これかのう?」

「おや、それはちと地味ではありませんかな?」

「ホッホッホ、これはこれで良い物ですよ。それより貴公、聞きましたぞ? また新しい奴隷を手に入れたとか」

「懐に余裕ができましたのでね。最近、借金で首が回らなくなって、なりふり構ってられずに奴隷落ちした娘を買ったのですが、脱がせてみればこれが色気が無くて。こうして、選んどる訳です」

「なるほど、今夜が楽しみですな!」


 見たところ、金持ちの商人達だろうか? 俺は若干場違いかもしれない。……だが、確かに品揃えは豊富だな。ふむふむ──



   *

   *

   *



「毎度あり、兄ちゃん!」

「……買っちまった」

「あ、いた! ヴィクター、どこ行ってたのよ!?」

「探したわよ」

「ああ、何でもない。とりあえず次行くぞ、次!」

「ん? ヴィクター、何か買ったの?」

「ま、まあな……どうでもいいから、次だ次! 次は弾と食糧だ!」

「何よ、気になるじゃない!」

「……嫌な予感がする」



 * * *



-夕方

@レンジャーズギルド ローアン支部


「うん?」

「どうした? ……何だ、女連れか? けっ、俺らの稼業は遊びじゃねぇっての!」

「いや、ちょっと待て! ……そうだ、思い出した! あの女の目を見ろ」

「……綺麗な緑色じゃねぇか、それがどうした?」

「馬鹿野郎、分からないのか! この間、スーパーデュラハン倒してAランクになった奴いただろう!?」

「ああ、“遺物使い”の話か? それがどう……ああっ、“乱射姫”!」

「そうだ! あの目……間違いねぇ! “遺物使い”と“乱射姫”だッ!!」

「って事は、もう一人が“人形遣い”って奴か!? ……で、連れのロボットとやらはどこだ?」

「“人形遣い”は、金髪碧眼の美少年って話だが、噂が間違ってたのか?」


 ギルドに入るが、見慣れない俺達は当然だが目立つ。入った途端、中にいた人間にジロジロと見られてしまう。どうやら、俺達の事を知っている奴もいるようだ。ヒソヒソと話す声が聞こえてくる。

 ちなみに、俺がスーパーデュラハンを討伐した事や、Aランクになった事は、ギルドの新聞で世界中に知れ渡っているらしい……一応。


「私の異名も、ヴィクターの言う通りに良い意味で捉えられてるみたいね! ふふん♪」

(多分、まだ悪い方だと思うぞ……)


 ギルドの中が騒がしくなったからか、職員と思しき女性がこちらに近づいて来た。中年のおばさんだが、身なりはギルドの受付嬢の物とは違う。何者だろうか?


「もしや、噂のヴィクター殿でしょうか?」

「ええ。ほら、ドッグタグもこの通り」

「……なるほど、本人に間違いないようですね。話は聞いてますよ、本部を目指しているのでしょう?」

「そうですね」

「ここではなんですので、どうぞこちらに……折り入ってお話があります」



 * * *



-数刻後

@ローアン支部 支部長室


「申し遅れました。私がここの支部長、エルザと申します」

「支部長? どうりで見かけない服装だ」

「ああ、女性の支部長は珍しいですからね」

「それで、支部長室まで呼び出して何のご用でしょう? ただの挨拶……というわけでは無さそうですね」


 どうもこのおばさん、ここの支部長だったらしい。だが、カナルティアの支部長のせいで、この手の人間はどうも信用ができない。


「まあまあ、そう身構えないで下さいよ。依頼、いや任務のお願いです。知ってるかと思いますが、次の列車まで時間がありますでしょ? その間、あなた方の実績になりそうなものがあるので、紹介したいなと」

「話が早いな、どっかのジジイに見習わせたい。それで、何があったんです?」

「実は、少し前にギルドの直営店に強盗が入りまして……。恥ずかしながら、商品を奪われてしまったのです」

「そういや、臨時休業だったな……。しかし、直営店は警備が厳重だと聞いてますが?」

「いくら厳重でも、限界はあります。大勢で押し入られたら、流石に無理がありますよ」

「って事は強盗団か……。規模はどんなもんですか?」

「確認したのは20人……もしかしたら、まだいるかもしれません」

「居場所は? 流石に街には残ってないでしょう?」

「ええ。この街の近くに採掘場がありまして、そこを占拠しています。彼らは、採掘場の見返りに金品や奴隷を採掘業者に要求しています」

「なるほど、考えたな」

「ですが、流石に規模が規模なのと、率いているのが悪名高い賞金首らしく、任せられそうな者がいなくて困っておりまして……。この街にとっても、採掘場の一つをいつまでも占拠されると、鉄の生産に影響が出ます。街からも、早々に解決して欲しいとの言葉をいただいておりまして……」

「分かりました、その任務受けますよ」

「そう言って下さると思ってました。ありがとうございます!」


 どうせ、列車が来るまでやる事はない。それに、これも実績作りの一環だ。よほど変な依頼や任務じゃ無い限り、受けるべきだろう。

 それにこの件を解決すれば、ギルド直営店が再開して、コレットの武器を買えるかもしれない。受けて損は無さそうだ。


「あ、忘れてた!」

「はい、何でしょう?」

「この任務、パーティーを組んでも良いですか? 一人、同行させたい奴がいまして……」



 * * *



-その夜

@ローアンの街 宿


「……って訳で、明日は強盗団討伐しに行きます」

「りょ〜か〜い」

「ま、待って! 今、20人って言わなかった!?」

「ああ。だが、多分それ以上いるぞ?」

「無理ッ! しかも、この面子めんつだけ!? 冗談じゃないわよ、私は降りるから!」


 宿にて、明日の予定を話し合っているが、コレットが猛反発してきた。カティアは、シャワーを浴びてからゴロゴロしている。多分、殆ど聞いてないだろう。


「まあ、そんなに行きたく無いなら来なくてもいいけど」

「行かない! 大体、アンタとはこれっきり! 赤ちゃんできたらどうしようって思ってたけど、大丈夫そうだったし……明日から、私とアンタは赤の他人よ!」

「まあまあ、そう悲しい事言うなよコレット。あ、そうそう……これ一応任務扱いだから。確か、断ると減点されるんじゃなかったっけ?」

「はあ、任務!? ってアンタ、勝手に私を参加させた訳!?」

「そうなるな」

「この野郎ッ!」


 コレットは俺に掴みかかってくるが、逆に取り押さえ、ベッドに押し倒す。困り顔が見たいからと、流石にやりすぎたか……。せめて、相談くらいすべきだったな。


「ッ、放して!」

「落ち着けって! 悪かったよ、相談もせずに。けど良く考えろ、普通何十人分で分配される筈の報酬が、3人で山分けなんだぞ? 一気に金持ちだ」

「その分危険でしょうが!」

「あのなぁ、何の勝算も無く依頼受けると思ってるのか? それに、昨日戦った時も俺達の腕前は見ただろ?」

「ぐっ……それは……」

「ねぇ、二人ともうるさいわよ! ちょっと静かにして」


 カティアに声をかけられ、俺はコレットを解放する。


「……はぁ、もういい。私もシャワー浴びてくる」


 気まずい中、コレットがシャワーを浴びに行く。……そういえば、今のうちに昼間の奴を仕込んでおくか。



   *

   *

   *



「ちょっと、何なのよコレッ!?」

「おお、似合ってるじゃん!」

「わぉ……す、凄い大人って感じ……」


 シャワーを浴びたコレットだが、脱衣所で騒いでいたかと思うと、下着のまま飛び出してきた。彼女がシャワーを浴びている間に、着替えの下着を昼間買ったどエロい物にすり替えておいたのだ。


「アンタの仕業ねッ! 私の下着返して!」

「ああ、古い奴ならさっき捨てといたぞ。何か生地も傷んでたしな」

「捨てた!? なんて事してくれるのよ! しかも、サイズぴったりなのが気持ち悪いんだけど……」

「まあ、俺にかかれば身体の数値を言い当てるなど、造作もないからな」

「なんで自信満々なのよ、ヴィクター……」

「そんなの頼んでない! とりあえず、コレじゃないの渡して! アレだから面積広いやつ!」


 せっかくのどエロい下着だが、コレットとはしばらくできない。今夜はさっさと寝るとしよう……。





□◆ Tips ◆□

【奴隷用首輪】

 主にギルドが用いている、崩壊前の捕具である“拘束首輪”を真似て作られた首輪。拘束首輪は、対象者の行動を停止させる機構が備わっているが、この首輪にはそのような物は存在せず、シンプルに爆薬と信管が組み込まれているだけの代物である。

 貴重な遺物でもある拘束首輪の代用として作られ、奴隷となった者の首に取り付けられる。奴隷となった者が主人に反抗した時等に起動され、奴隷の首を胴体からサヨナラする事ができる。

 その滑稽な様から、反抗的な奴隷への見せしめや、賭け事の対象として“おかしら危機一髪”という興行が、ローアンの街の名物となっている。

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