第165話 蘇る悪夢3

-翌日

@セルディア上空


「凄い凄いッ! 私達、飛んでる〜ッ!」

「おい、暴れるなカティアッ!」

「ヴィクターさん、凄いですよ! 大地があんなに遠くに!」

「いや〜凄い眺めっすね……!」

「なんつー高さなんだ……!」

「……鳥になったみたい」

「……お前らもかよ」


 俺達は今、空を飛んでいた。ヘリでの強襲を終えた次の日、俺達はギルドに呼び出されると、ギルドのティルトローター機に乗せられ、モルデミールへと飛び立ったのだ。事態は急を要するという事だろう。

 飛行機の中では、皆が窓に張り付き、外の景色を眺めている。崩壊後の人間が、空を飛ぶ事などそうそうない事だ。皆、任務を忘れてはしゃぎ回っている。

 ちなみにジュディ達は一度拉致する時に、飛行機に乗せている筈だが、麻酔のせいで完全に覚えていないようだ。


「ふむ……そう言う君は随分と落ち着いているな、ヴィクター・ライスフィールド君? 空は初めてではないのか?」

「ああ……いや、初めてだな。こいつらが落ち着きないだけだ」

「そうかね……」


 カティア達を眺めていると、アーノルドとか言うおっさんが話しかけてきた。昨日もそうだったが、何故か俺の事をジロジロ見るような視線が多いような気がする……。

 まさか、そっちの気でもあるのか!?


「……あの、何か?」

「ああいや、すまない。それにしても、凄い得物じゃないか? そんな物を持ってる人間は、なかなかいないぞ」

「ああ、これか? スーパーデュラハンが相手なんだ、当然だろ?」

「崩壊前の対物ライフル……状態も良いようだ。確かに、化け物退治にはピッタリかも知れんが、そんな代物を一体どこで?」

「レンジャーに探りを入れるのは、マナー違反じゃないんですか?」

「ああ、そうだな……すまない」

「……死都で拾ったんだよ」


 俺が視線に耐えかねてアーノルドに話しかけると、何やら焦ったような感じで、話を逸らしてきた。何か、隠してるのか?

 まあ、今回の件で俺の昇格が決まるらしいし、色々と見ているのかも知れんが、オッサンにジロジロ見られて嬉しい筈がない。


「しょれよりもッ!! シューパージュラハンを倒したあかちゅきには、僕に任しぇてくれよッ!!」

「……あんた、大丈夫か? 休んでた方が良いんじゃないか?」

「問題ないッ!! 危険なしぇいぶつ(生物)達が、僕を待っているんだッ!!」

「はぁ……」


 アーノルドの隣に座るもう一人の男……眼鏡をかけた、いかにもインテリ風だったシュレーマンは、昨日とは打って変わって、顔を何者かに殴られたのかボコボコになっていた。眼鏡に至ってはレンズが割れており、フレームも歪んでいた……。


「全く、シュレーマン……貴様は昨日、何をやっていたのだッ! 遊びではないのだぞ!」

「あはは、僕の仕事は危険しぇいぶつ(生物)のちょうしゃ(調査)ッ!! 例え火の中、みじゅ(水)の中、草の中、人の家の中であろうと、仕事は全うしゅるッ!!」

「何、どういう事だ?」

「さあ、何ですかね……」


 アーノルドやシュレーマンと雑談しつつ、俺達は目的地へと運ばれて行く。今回、アポターは持って来れなかったので、向こうでの居住環境は絶望的だが、最早決着は付いているようなものだ。スーパーデュラハンの死亡確認を済ませて、さっさと帰るとしよう……。



 * * *



-昨日

@ガラルドガレージ


「ではヴィクター君……スーパーデュラハンの討伐、頼みましたよ」

「それからこの件は他言無用に頼む、ここにいる者達全員に徹底してほしい。ではデロイト支部長、支部に帰りましょう」


 スーパーデュラハン討伐の話の後、支部長とアーノルドはガレージを出て行った。出発は明日と急だが、それまでに準備せよとの事だった。


「ヴィクター、どうするの?」

「俺はノア6でちょっとやる事がある。装備も調達してくる」

「ノア6? なんなんだい、それはッ!!?」

「「 えっ!? 」」


 カティアとこれからの予定を話していると、何者かが話しかけてきた。ギルドの情報部生物調査課……シュレーマンだ。

 帰ったと思ったら、まだ居たのかコイツ!?


「い、行きつけのバーだよ。装備も用意しなきゃだろ?」

「なるほどッ!! それより、ひとつ聞いていいかいッ!!」

「な、なんだよ……?」

「あれッ!! もしかして、セルディアンクーガーって奴なんじゃないかなッ!!?」

「ん? あ……い、いやあれは……」


 ノア6の事を聞かれ、マズいかと思ったが、シュレーマンは興味無い様子で聞き流した。かと思ったら、アポターの側で餌を食べてるレオーナを興味深げな視線で追い、指差した。

 シュレーマンの目は輝いており、いつの間にか手に手帳とペンを握りしめている。


「実際に見るのは初めてなんだッ!! 観察させてもらうよッ!!」

「あ、おい!」


 あれはペットの猫です……と言う前に、シュレーマンは目を輝かせたまま、レオーナを囲むジュディ達に近づいて行った……。


「ほら、ご飯の時間ですのよレオーナ。主人たるこのわたくしに感謝して、味わって食べるんですのよ?」

「ニャ〜ン、ニャゴニャゴ♪」

「あ〜ん、可愛い♡」

「ジュディ、そんな声出せたんすね……」

「カイナ、うるさい。餌やりの時しか近くに寄らせて貰えないんだから邪魔しないで、ブッ殺すよ?」

「わ、分かったっす……」

「……美味しい?」

「ニャーン♪ ンミャァ!?」

「ちょっ……んだ、テメェは!?」

「はっはっはっ、これは凄いッ!! ホンモノのセルディアンクーガー、それも幼獣ッ!!」


 突如現れたシュレーマンが、ご機嫌な様子で餌をがっついていたレオーナを抱え上げ、舐め回すように眺める。


「ちょっと、レオーナが嫌がってますのッ!」

「シャーッ!!」

「イダダッ!! 凄い力だッ、やはり幼獣と言えど危険生物という訳か……だが、観察を終えるまでは離さないぞッ!!」

「いや、離せよッ!」

「ウボァッ!!」


 ジュディの怒りの鉄拳が、シュレーマンの顔面に炸裂し、彼の眼鏡がひしゃげながら吹き飛ばされ、彼の身体も殴られた衝撃で倒される。


「な……何をするんだ、痛いじゃないかッ!! ん、何も見えないッ!! 眼鏡、眼鏡……」

「ミシェル、ちょっと着てみて欲しい服が……」


──モニュ……


「おや、この感触は何だッ!!?」

「ひっ、ああ……」

「うーむ、分からんッ!! 実に興味深いッ!!」

「……いつまで触ってるんですかッ!!」

「あぎゃッ!!?」


 ひしゃげた眼鏡のせいで、視界が悪くなったシュレーマンが眼鏡を探そうと手を伸ばす。そして、運悪く通りかかったモニカの尻に吸い付くように、その魔の手が襲いかかった。

 対するモニカは、一瞬怯えた表情を浮かべるも、すぐに冷めた目つきに変わり、手に持っていた服についていた木製のハンガーを握ると、シュレーマンの顔面に打ちつけた。


 体勢を崩したシュレーマンは、よろめきながらカイナとノーラの元へと近づいていく……。


「わわわ、今度はこっち来たっすよッ!?」

「来ないで!」

「おっとっとォォォッ!!?」

「ぎゃあ、やめるっすよッ!」

「……うわ」

「ん? この肌触りは皮革……爬虫類、それもワニ……まさか、例の新種のミュータン……」

「ど、どこ触ってるんすかッ!!」

「痴漢は最低!」

「ひでぶッ!?」


 カイナがシュレーマンの右頬に肘打ちを放ち、同時にノーラがジュディ仕込みの蹴りを放った。


 シュレーマンは再び体勢を崩すと、今度はアポターの入り口へ向かってよろめいていく。と、そこへ、外からモニカに声を掛けられたミシェルが、車外へと出てきた……。


「モニカさん、呼びましたか?」

「ああ、ミシェル戻るっす〜!」

「ミシェル、危ないですのッ!」

「えっ……?」

「おっとっとととォォォッ!!?」


──フニュ……


「ひゃあっ! わわわ……!?」

「ふぅ、助かったッ!! ……おや? また何やら不思議な感触が……」

「……ッ!」


──パンッ!


「ほべッ!!?」

「この不埒者ッ! ミシェルの身体に気安く触るんじゃないですのッ! あろう事か、胸を揉むなんて……羨まけしからんですのッ!」


──ジャキッ! バリバリバリッ!!


「のわッ!!? アベベべべッッ!!!!」

 

 ミシェルがシュレーマンにビンタを放ち、ミシェルからヨロヨロと離れたシュレーマンに、今度はミリアが伸縮警棒型のスタンガンでシュレーマンに電撃を加えた。

 高電圧の電撃を受け、シュレーマンの身体は地面に突っ伏すと、手足をピクピクとさせてはいるが、動かなくなってしまった。……なんか、殺虫剤を浴びたゴキブリみたいだな。


「あ〜あ……」

「ね、ねぇヴィクター……アレってギルドのお偉いさんなんでしょ? ちょっとマズいんじゃない?」

「そ、そういやそうだったな……どうしよ……」

「ま、ましゃか……こんにゃ身近に、きけんしぇいぶつがいるとは……こりぇは、しぇいきの大発見……だ……」


 その後、気絶したシュレーマンをジュディ達の手でギルドの駐車場に捨てて来させ、俺達はこの件に関して一言も発さず、問われても一切の関与を否定する事とした。

 余談だが、この一件からシュレーマン著の『ミュータント・危険生物大全』に、「女」が追加され、色々と問題となるのであった……。



 * * *



-数時間後

@モルデミール ギルド前線キャンプ


 目的地に到着し、俺達はギルドの前線キャンプに降り立った。


「物々しい雰囲気だな……」

「スーパーデュラハンが相手なのだ、当然だ」


 まあ、もう殆ど片付いてると思うが。当然、そんな事は口に出さずに飛行機から降りると、ギルドの兵士達に囲まれた。


「止まれ、派遣されたレンジャーか? 何だやけに女が多いな……引率のギルド職員を出してくれ、飛行機使用の許可証とか色々確認したい」

「治安維持部のアーノルドだ。連絡は受けている筈だが?」

「えっ……ま、まさかブラウン部長!? そ、総員敬礼ッ!!」

「皆、楽にしてくれ。責任者はいるか?」

「はっ、自分が隊長でありますッ! しかし、まさか幹部自らお越しになるとは……危険ではありませんか?」

「ギルドマスターの命令でな。全く、人使いの荒いお人だ……」

「はっ、出過ぎた真似を! ここでは何ですので、どうぞこちらの天幕へ……」

「うむ……。ヴィクターくん、君たち用にテントを用意させてある。そこで装備を整えるといい」

「はいよ」

「ああ君、案内してやってくれ」

「はっ! どうぞ、こちらです」


 その後、兵士の案内でギルドのキャンプを案内されつつ歩いていく。

 キャンプは山の麓の村近くに設営されており、中には機関銃とサーチライト付きの物見櫓や、周囲を空堀と鉄条網、簡易のフェンスなどで覆っており、崩壊後の世界では中々の防衛体勢を敷いていた。


 そして気になる事が、キャンプの出入り口で武装した集団がたむろしており、ギルドの兵士達と何やら揉めている様子だった事だ。


「俺様はDランクだが、実質C……いや、Bランクの実力があるぜ!」

「そうか、間に合ってる。帰りたまえ」

「アンタらがこうして集まってるって事は、山に潜んでる残党軍の連中を一掃するって事だよな? 俺達にも手伝わせてくれよ!」

「ここはギルド本部から派遣された駐屯部隊の野営地だ。部外者の立ち入りは許されていない。即刻退去せよ」

「チッ、んだよこの堅物! ギルド本部か何だか知らねぇが、下っ端が調子に……」


──ジャキッ!


「乗るん……じゃ……」

「それ以上は、このキャンプの敷地内だ。あと一歩足を進めたら、いくらレンジャーであろうと即刻銃殺する」

「仕事を探しているなら、最寄りの支部や出張所の受付で手続きをするんだな」

「ひ、ヒィィッ! すんませんしたァァッ!!」


 門番の兵士に凄んだ男だったが、門番達が一斉に銃口を向けた事で、完全に戦意を消失し、両手を挙げながら走り去って行った。

 残った者達も、何処かがっくしした様子で、続々と帰っていく。


「……何だありゃ?」

「あれは、低ランクのレンジャーです。迷惑な事に、よくああして、自分から仕事を求めにこうしたキャンプにやって来るんですよ」


 現在、この辺りのレンジャーの仕事と言えば、モルデミールに端を発する争乱の事後処理……復興作業の肉体労働や、モルデミール残党軍の始末などだ。

 だが、後者は新生モルデミールとギルド駐屯部隊が殆ど行っており、レンジャーは賞金首となった逃亡戦犯の捜索などでしか関与できていない。また、残党軍とは言っても、中にはAMや装甲車などを所持している者達もおり、たかがレンジャーが対応するなど難しいところがある。


 つまり、殆どのレンジャーは復興作業などの手伝いなどの雑用をしている訳だが、中には不満を抱える連中もいる。血気盛んな奴や、戦いが大好きな奴、一攫千金を狙う奴などだ。

 そういった連中の中には、これを機にセルディアから出て行った者達もいるそうだが、中には彼らのようにモルデミールへとやって来る者もいるようだ。

 連中にとって見れば今の状況は、ギルドの部隊が集結し、山狩りを始めるように見えるのだろう。ギルドの兵士達は、崩壊後の世界では最強の存在だ。まず負ける事はない。

 そんな、絶対に成功が約束された仕事に参加しようと、皆躍起になっていると言ったところだろうか? まあ、成果は散々だったようだが……。


「全く……依頼や任務は、ギルドの受付を通すのが決まりですし、部外者をキャンプに入れる訳にはいきません。ですので、ああやって追い返すしかないのですがね」

「大変だな」

「さて、着きました。このテントをお使いください」


 到着したテントにて、俺達は持ってきた軽食を食べ、装備の準備を済ませた。さっさと終わらせて、帰るとしよう……。



 * * *



-数時間後

@モルデミール 山岳地帯


「おい、大丈夫なのか?」

「うるせぇ! ここまで来て引き下がれるかッ!」


 山の中を、武装した男達が歩いていた。先程、ギルドの前線キャンプで門前払いを受けた者達だ。

 彼らは、ギルドに門前払いを受けた後、こっそりと山へと忍び入ったのだ。


「連中、今にも動き出しそうな雰囲気だった。奴らが動く前に、賞金首の一人や二人、仕留めておきたい」

「でもよ、俺達だけで大丈夫なのか? ギルドの奴らのおこぼれにあずかるって話じゃなかったのかよ?」

「はっ、テメェも昨日の夜、山でドンパチしてるの見ただろ? 今頃、敵はボロボロだろうよ。俺達だけでも大丈夫だ!」

「そ、それもそうだな!」

「おい、そろそろだ。静かにしろ」

「昨夜、ドンパチしてたのはこの辺だが……」


 ギルドの兵士達が動く前に、自分達の手柄を立てようとした彼らだったが、その期待は外れてしまう。


「お、おい……何だよアレ?」

「まさか、デュラハン……なのか?」

「いや、それにしちゃ何か変じゃないか? 聞いてた話と違うような……まあ、見た事ないからわかんねぇけど」


 彼らは、森が開けた所に出ると、その中心で倒れている謎の怪物を目撃した。その怪物は、身長3m弱の巨体に、巨大な爪を持った右腕を持っていた。左腕と見られる部位は、何かに吹き飛ばされたのか、離れた位置に転がっていた。

 さらに、その怪物の身体は全身黒く焼け爛れており、所々ボロボロになっていた他、全身に太い金属の杭の様な物がいくつも突き刺さっており、さながらハリネズミの様になっていた。


「し、死んでる……んだよな?」

「みたいだな……」

「まさか、昨日の爆発はこれを仕留める為なんじゃ……」

「何だって!? じゃあ、賞金首はナシか!?」


 仲間の一人が、昨夜の爆発がモルデミール残党軍を攻撃したのではなく、この怪物と戦ったものだと言う考察をした。皆、落胆しつつもその通りであろうと考え、今後の身の振り方を考え出した。


「確かに、残党軍相手だったらこんな悠長にしてないよな……」

「逃げたり、反撃の準備とかされるし……俺だったら、もっと徹底的にやるな」

「クソ……骨折り損のくたびれもうけかよ……。帰るぞ……」

「いや、この怪物の首を持ってけば、少なくともランクは上がったりしないかな? デュラハンって、危険度Aのミュータントなんだろ?」

「確かに……」

「そうと決まればさっそく……」


 男の一人が、デュラハンの身体に乗ると、斧を取り出した。


「ん? なあ、こいつどっから首なんだ? 胴体に埋まってるみたいな感じで分からねぇぞ?」

「んなもん、適当に顔の部分持ってけばいいだろ!」

「それもそうだな……よっこら…」


──ビュンッ! カランカラン……


「カハッ!? ごばばばばぼぼぼぼ……」

「「「「 ッ!? 」」」」


 風を切る音がしたかと思ったら、突如斧を振りかぶった男の喉を、何かが貫いた。男は斧を落とし、身体を痙攣させながら苦しそうに喉を手で抑えると、そのまま生き絶え、首を貫いた物を支えに、だらりとした。

 男を貫いた物は、男の下にいる怪物から伸びており、無くなった左腕の所からソレ……触手が伸びているのが確認できた。


「グルルルルルル……」


 あまりに突然の出来事に男達が呆然としていると、死んでいた筈の怪物がゆっくりと身体を起こし、邪魔な男の死体を振り払うと、立ち上がった……。


「な、なんじゃワレェェッ!!?」

「い、生きてたのかッ!?」

「撃てッ! さっさと攻撃するんだッ!」


──ダダダダダッ!

──ダンッ! ジャコ、ダンッ!

──バキュン、バキュンッ!


「グオオオオオンッ!!」

「な、効いてないッ!?」

「銃弾が弾はじかれてるッ!?」


 男達はすぐさま攻撃を加えるが、スーパーデュラハンの硬化した表皮は銃弾をことごとく弾き、全く効いている様子が無い。


──ドシ……ドシ……


「まずい、近づいて来たぞッ!?」

「撃ちつつ下が……」


──ビュンッ!


「ガハッ、な、なんじゃこりゃぁぁ! うっ……」

「まずいまずいまずい! 俺は逃げ……」


──ブンッ!


「グォォォッ!!」

「うわっ!? わぁぁぁッ、助け……」


──グシャッ!


 男の一人が触手で腹を貫かれ死亡し、その光景を見て怖気付き逃げようとした男も、触手で足を引っ掛けられ転ばされた後、その頭を踏み潰されて死亡した。

 そうして、あっと言う間に残った男達も倒すと、スーパーデュラハンは、空に向けて咆哮した……。


「グルォォォォッ!! ヴィィィィぐダァァァァッッ!!」





□◆ Tips ◆□

【HAR-2】

 連合軍制式の対防護服用重小銃。強化服やパワードスーツなど、発展した防弾装備に対抗する為に開発された。セミオート式のブルパップ式対物ライフルで、歩兵でも扱いが容易なように軽量化・低反動化が施されている。

 弾丸は通常の重機関銃弾の他、対装甲用の徹甲弾など、幅広く使用できる。携行時の利便性を向上させる為、銃身を後退させ全長を短くした状態で携行できる。

 試験部隊のテストでは、敵特殊部隊との戦闘で、他のアサルトライフルなどが敵の防具を貫通出来ない中、唯一有効打を与えられた事と、元が対物ライフルなので狙撃にも充分使用できた事や、敵車両にも有効打を与えられた事から、評価は高かった。

 主に特殊部隊に使用された他、防弾装備を完備した敵のコマンド部隊による、後方施設に対する奇襲攻撃に対抗する為に、主要な施設に配備されている事があった。ノア6にも配備されていた。


[使用弾薬]12.7×99mm弾

[装弾数] 10発

[有効射程]2000m

[モデル] ゲパード GM6 Lynx



【スタンバトン】

 旧型の警察用装備。伸縮型警棒とスタンガンが一体となった、暴徒鎮圧用装備・捕具。崩壊前において、拘束首輪の採用や射出式スタンガンの採用で、既に旧式化していた。

 ジャンプ式で、ワンタッチでシャフトが伸びる。グリップにバッテリーと放電機構が内蔵されており、シャフト部に電流が伝わる構造になっている。相手が刃物を使用する事を想定し、鍔が備わっている。

 旧式の装備で廃れてはいたが、採用期間が長かった為に、専用の警棒術も編み出されていた。

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