第92話 誘拐3
-2時間前
@北部地区 スラムの廃墟
私は、カティアさんと買い物に行った帰り道に、知らない人達に無理やりトラックの荷台に引きずりこまれ、目隠しと猿轡をされて、何処かに連行された。私を攫った連中の話し声が聞こえてくるが、今の状況が全く分からない。カティアさんは、大丈夫だろうか?
「しっかし、キールの奴……大丈夫か?」
「なあ、さっきこの女と一緒にいた女、例の乱射姫じゃないのか?」
「まさか! 人違いだろ、だったら助けに戻るか?」
「冗談きついぜ。俺達の信条を忘れたのか?」
「ちょっと危険でも、確実に依頼を遂行できる手段をとるってやつか?」
「でも、そんな事で仲間見捨てていいのかよ?」
「まさか、街中で殺されたりはしないだろ。それに、キールの結婚相手見たか? あんな奴には勿体ない、いい女だったんだぞ、チクショウ!
「何だよ、私怨じゃないか!」
「ワハハハハ!」
「ところでよ……いい女といやぁ……」
「……何だよ、気になんのか?」
目は見えないが、何者かの視線を感じる。それも、いやらしい……ねっとりとした、気持ちの悪いものだ。バザールの奴隷オークションの時、台の上で浴びせられたものと同じような感じがする。……怖い。
「確かに、小ぶりだが形の良い乳だったな」
「顔も結構可愛いしな。金持ちの奴隷ってのは、やっぱ違うんだな」
「くそ、運転手変わってもらうんだった! しっかし、この娘何やらかしたんだ?」
「とても、犯罪とかしそうには見えないけどな」
「やめとけ。知らない方がいい事もある」
「まあ、大変だったんだな……」
「あ! お前、何ちゃっかり触ってるんだよ!」
男の一人が私の肩を撫で回す。……気持ち悪くて吐きそうだ。
「へへへ……」
「んんッ!? んー!!」
「おい! お前達、何をしている!?」
「あん? チッ、いいところだったのに」
「チェスターさん。依頼の奴隷ってのは、こいつで間違い無いか?」
「……貴様ら、僕のモニカさんによくもッ!!」
一拍の静寂と共に、周りの空気がピリピリと張り詰める感じがする。
「お、おい……。チェスターさん? 何して……」
「僕のモニカさんに、汚い手で触ったな!?」
──バンッバンッバンッ!
銃声がして、私の近くでドサリと何かが倒れる。
「て、テメェ! よくも……!」
──バキュン!
「う、うわぁぁッ!!」
──バンッバンッ! カチッ!
怖い、怖い、怖いッ! 一体何が……!?
そう思った瞬間、目隠しが外され、眩しい光が差し込んでくる。そして、目の前にはかつての客だった男と、自分を誘拐した男達が倒れているのが目に入った。
「ぁ……ぃ、いやぁ、なに……これ……?」
「ご機嫌麗しゅう、モニカさん。手荒な真似をして申し訳ない。モニカさんに、汚い手で触ろうとした連中は、この僕が殺したので安心して下さい!」
「ころ……した……。ッ! ひ、人殺しッ!」
「酷いですよ、モニカさん。僕は貴女を助けて差し上げてるのに……」
「な、何を……」
「本来なら、バザールのオークションで私が助け出す筈だったのですが、遅くなってしまい申し訳ありません」
「……」
この人は、何を言っているのだろうか。…ダメだ、理解しようとするだけ無駄だ。
ローザさんにも言われたが、自分の世界に入ってしまった人間には、何を言っても無駄だ。ここは、無視だ。黙ってやり過ごすのが、得策だろうか……。
「さ、ここはモニカさんに相応しくありません。我が家に行きましょう!」
そう言って、チェスターは私を立たせると、私を縛っていた縄を解いた。先に腕を解き、今は脚を解いている……。逃げるなら今しかないッ!
「くそッ、忌々しいレンジャーめ! 僕のモニカさんを乱暴に扱って! ……よし、解けた」
「えいッ!」
「がッ!?」
脚が自由になった瞬間に、自分の全力をもって、屈んでいたチェスターの顔を蹴りつけた。チェスターは鼻を押さえて、鼻からは血が出ている……。
今のうちに逃げようと、建物から出ようとするが、出る直前で腕を掴まれてしまう。
「ッ! 嫌、離してッ!!」
「全く酷いですよ、モニカさん。僕は貴女を助けようと……」
「嫌ァ! 助けてッ! ヴィクターさん、カティアさんッ!!」
「……人の話を聞けぇッ!!」
チェスターは、私の額に
──カチッ、カチッ、カチッ、カチッ!!
「ふーッ、ふーッ、ふーッ、ふーッ!!」
だが、先程発砲した時に撃ち尽くしたのか、チェスターの拳銃が火を噴く事は無かった……。
「あ、ああ……」
「はぁ、はぁ……ああ、すいません。つい、カッとなってしまって、弾が入って無くて良かった。危うく、僕の手でモニカさんを殺してしまうところでしたよ」
「ヒッ……!」
「ごめんなさい。僕の手が血まみれで、嫌だったんですよね? さあ、家に帰ったら服を着替えましょう! 実はモニカさんの為に、特別な物を用意してあるんですよ!」
この人は危険だ。もし、銃に弾が残っていたら、確実に死んでいた……。脅しとかではない。引き金を引いていた時の、彼の狂気に駆られた目は本物だった。
腕を掴まれてしまっている以上、自分の力では逃げられない。私はカティアさんとは違って、職人として生きてきただけの小娘だ。男の力に抗うことなど出来ない。
モニカは、嫌悪感と吐き気に耐えながら、チェスターの言う事に従わざるをえなかった。
* * *
-現在
@エコーレ家
エコーレ家は代々、自治防衛隊の会計担当のポストを歴任している街の名家だ。その家も、スカドール家のものとは程遠いが、そこそこの屋敷を所有していた。
そして、その屋敷では今、奇妙な事が行われていた。
「チェスター様、準備が整いました」
「どれ……。おお、素晴らしい……とても素晴らしいッ!!」
「……」
あの後、エコーレ家の屋敷に連れ込まれた私は、使用人達に身体を洗われて、着替えさせられた。……そして、その着替えた服というのが問題だった。純白で、同じく純白のヒラヒラとしたレースがあしらわれたドレス……そう、ウェディングドレスだったのだ。
使用人の人達は、口を聞いてくれなかったが、皆同情するような、憐れむような目で私を見てきた。
「では、さっそく式に移ろう!」
「……」
着替えが終わると、普段は食堂として使っているのであろう、広い部屋に連れて行かれた。そこには、赤い絨毯が真っ直ぐに引かれ、即席の祭壇の様な物が作られていた。……気持ち悪い。結婚式のつもりなんだろうか?
「……汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「はい、誓います!」
「よろしい」
そのまま、流されるままに即席のバージンロードを歩かさた。既にバージンではないが、その事を知ったらこの男が何をするか分かったものじゃない。
あれよあれよと儀式は進み、最後の定番……神父役の男が誓いの言葉を聞いてきた。
「……汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、夫を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
「……」
「……誓いますか?」
「ほらモニカ、誓って?」
「お、お断りします!」
「……えっ?」
チェスターは、気持ち悪い笑顔を貼り付かせたまま、モニカに迫る。いつのまにか、名前を呼び捨てにされている。……気持ち悪い。
「なんて言ったか聞こえなかったよ。さあ、早く誓って?」
「お断りします! 貴方の事は、前から嫌いでしたッ! 結婚なんて有り得ませんッ!!」
「……」
「ッ!」
チェスターは私の頬をビンタして、パンッ!という音が響く。
「ワガママを言ってはいけないよ。ほら、みんな困ってるだろう?」
「……ワガママ? 貴方のしている事は、ワガママじゃないんですか!? 他人に自分の気持ちを押し付けて……そういう人は嫌い、大嫌いですッ!!」
「なっ!? だ、だったらあの男は……ヴィクターはどうなんだ!? モニカの事を奴隷として金で買った、人の自由を……気持ちを踏みにじる最低の奴じゃないか!?」
「気安く私の名前を呼ばないで、気持ち悪いッ!! それにヴィクターさんは、そんな人じゃないッ!! 何も知らないくせに……勝手な事を言わないで! それから、オークションに参加してたのは貴方も一緒! だから貴方も、貴方の言う最低な奴なんじゃないんですか!?」
「なに!? ぼ、僕は違うぞッ! 僕はモニカの為を思って……」
「気安く名前を呼ぶなッ! 2回目ですよ、いい加減にして下さい!」
「ッ!?」
「私の為を思って? その結果が誘拐して、この結婚式ごっこ? 人の気持ちを踏みにじっているのは、どっちですか!?」
「ぐっ……」
普段は大人しいモニカであったが、今回は流石に堪忍袋の尾が切れたようだ。自分の気持ちを無視され、友人であるカティアに手を出されて、自分の主人であり恩人であるヴィクターを貶けなされて、黙っていられなかったのだ。
それに、チェスターにはローザ服飾店に勤めていた頃からの、イライラが積み重なっており、それも爆発したようだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「……るさい……」
「えっ?」
「うるさい……うるさいうるさいうるさぁいッ!! なんでだ!? 僕はこんなにも君を想っているのに……どうして否定するんだよ!? も、もうこうなったら……」
モニカはハッとして、先程の出来事を思い出す。つい感情のまま言葉を発したが、このままではチェスターが暴れ出して、自分の命が危険に晒されるのでは?
……そして、その危惧は現実のものとなる。
「おい、お前! 銃だ、銃を持って来い!」
「え、ですが……」
「口答えするな! いいから持って来いッ!!」
「は……はい、ただ今!」
「モニカ、君を殺して僕も死ぬ!」
すっかり空気と化していた周りの使用人達にも、流石に動揺が走る。皆、自らの主人を諌めようとするが、チェスターは聞く耳を持たない。
おそらく、先程銃を持って来るように言われた人も、時間稼ぎをしてくれているのだろうが、長くは持たないだろう……。
(ど、どうしよう!? 助けて! ヴィクターさん、カティアさん、フェイさん!!)
私には、もう何も出来ない。出来る事と言えば、自分の新しい家族が助けに来てくれる事を祈るくらいだ。
……だが、その祈りは無駄では無かったらしい。
「ぼ、坊ちゃん! お客様です!」
「うるさい! 今はそれどころじゃない!」
「そ、それが……お客様はプルート様でして……」
「な、なんだと!? 一体、何の用だ……。ああ、分かったぞ! 僕の結婚を祝いに来たんだな! 流石はプルート様、秘密にしていても筒抜けとは恐れ入るな!」
「ど、どうしましょう?」
「もちろん、案内してくれ。式のメインイベントはこれからだからね!」
「かしこまりました!」
何故だか分からないが、チェスターの気分が変わった。今すぐに殺される危機は去ったと見ていいだろう。
* * *
-同時刻
@エコーレ家
「ギルドの方、本当に間違いないのですか?」
「ええ。確かに、チェスター・エコーレ名義で件の依頼が出され、報酬も同名義の口座より出されておりました」
「……全く、お恥ずかしい。身内にこのような者がいるとは、頭が痛い限りですよ」
「つきまして、チェスター・エコーレの口座を凍結し没収、さらに明日には公に指名手配の掲示がされます。よろしいでしょうか、プルート様?」
「ええ。ですが、指名手配される前には、ギルドに身柄は引き渡しますよ。その方が、懸賞金やら面倒な手続きも省略できるでしょう?」
「それは助かります」
プルートに協力を要請した後、フェイ達ギルドの人間と合流し、モニカが捕らえられているエコーレ家の屋敷に来ていた。フェイとプルートの話から、ギルドの方でもチェスターの指名手配が完了したらしい事が分かった。
そして現在、自治防衛隊からはプルートと、そのボディーガードのボードン……ギルドからはフェイの他に、例の執行官二人が同行していた。
強制執行とかする前は、こんな感じなのだろうか? 不思議な緊張感が、辺りを漂っている。
屋敷の入り口で、メイド長らしい女中に話を通す。話を聞けば、使用人達は日頃からチェスターのワガママに振り回されて、皆ノイローゼ気味らしい……。
チェスターを捕まえに来たと言ったら、泣きながら「よろしくお願いします」と言われたあたり、チェスターは碌でも無い奴なのだろう。
「チェスターって、どんな奴なんだ?」
「普段は真面目な人だったと思うのですが……どうも、違ったみたいですね」
「まあ、職場とプライベートは違うって言うからな。じゃあ行くか、自治防衛隊長」
「プルートで結構ですよ、ヴィクターさん」
先程の女中に、チェスター達がいるという食堂へ案内される。そこには、赤い絨毯が敷かれ、牧師のコスプレをした男と、白い礼服を着た鼻血を垂らした青年、そしてウェディングドレスを着たモニカがいた。
……結婚式のつもりか? だとしたら、相当キモい奴だなチェスター。しかも、鼻血……何があった?
「これはこれはプルート様。本日は、私の結婚式にお越しいただき、ありがとうございます! そちらのお付きの方々も……き、貴様はヴィクター!?」
「はじめましてだな、誘拐犯。……ん、どっかで会ったことあるか? まあいい、モニカは返してもらうぞ!」
「ヴィクターさんッ!!」
モニカが俺の元へと駆け寄って、抱きついてくる。
「モニカ、もう大丈夫だ。フェイ、モニカを頼む」
「なっ!? 僕のモニカに触るなッ!」
チェスターも、俺の方に向かってくるが、プルート達がそれを遮る。
「プルート様!? どいて下さい!」
「チェスター。君、とんでもない事をしでかしてくれたね?」
「は?」
「ギルドへの背信行為、殺人、誘拐、さらには自治防衛隊の資金の横領……叩けば埃が出るわ出るわ」
「なっ!? 横領の件は存じませんが、何故そのことを!? ギルドの依頼は、秘密厳守では無かったのか!?」
「……という事は、他の事は認めるという事ですか。ギルドの方、説明してあげて下さい」
「はい。先程、貴方はギルドより指名手配されました。現在その処理に伴い、貴方の口座は凍結。また、ギルドから貴方に対して行われていた、全てのサービスは停止されました」
「何!? そんなの横暴だぞ! 自治防衛隊にケンカを売ってるのか!?」
「やれやれ……そのトップがここにいる時点で、普通は察するだろうに。ねぇ、ヴィクターさん?」
「ま、年貢の納め時って奴だな」
「くそッ、くそッ、くそッ!! モニカは僕の奴隷だぞッ! 貴様らに何か言われる筋合いは無いッ!!」
……精神が錯乱しているのだろうか? 追い詰められて、妄想を事実だと思い込んでしまっているのだろう。
カイナを調教した当初も、ノア6の事を天国、ロゼッタの事を死んだ自分の母親なのだと、本気で信じ込んでいた。あの時は、認識を改めるのが大変だった。
チェスターは、自分の妄想を声高に叫ぶが、プルート達は失笑し、使用人達からは哀れみの目で見られている。
正直、こんな錯乱ストーカー野郎にかける慈悲は無いが、モニカが自分の物だと思われているのは癪だ。モニカがトラウマにならないように、せめてコイツには現実を見せてやるか……。
「モニカ、ちょっと……」
「は、はい」
俺は、モニカを手招きし抱き寄せると、その唇を奪った。
「なっ……貴様ァァァッ!! 僕のモニカに何をするんだぁ!!」
「……ぷはっ! ヴィクターさん、急に何を!?」
「モニカ、ほら。次は、お前の番だぞ?」
「……人前で恥ずかしいですけど、助けてくれたお礼ですよ! ん……」
「な、なに……!!」
今度は、モニカの方から俺にキスをしてくる。好きな人が、目の前で男とイチャついてたら、ショックを受ける。……俺も、そういった経験が無いわけじゃない。このショックは相当デカいのは分かる。
案の定、チェスターは口を開けっぱなしにして、動かなくなってしまった。……もうちょっと、追い討ちかけるか。
「その衣装、似合ってるなモニカ?」
「えっ? でも、私ならもうちょっと凝ったデザインを
「そ、そうか……まあ、せっかくだし今夜はその衣装でヤりたいな」
「えと、ヴィクターさんがそう言うなら……」
チラリとチェスターを見ると、床に突っ伏して泣き出した。……まあ、彼にとっては短い夢だったな。
と思ったら、急に立ち上がり、俺達目掛けて走り出した。
「こ、このアバズレがァァァッ!!」
「フンッ!!」
「おごっ!?」
──ゴシャッ!! ドンッ!
俺は、迎撃すべく拳銃を構えたが、プルートのボディーガードの大男が割って入り、チェスターの顔目掛けて強烈な拳をお見舞いした。
2m近い巨体から繰り出される一撃は、チェスターの首の骨を折ったらしい。チェスターの身体はしばらくビクビクと痙攣した後、動かなくなった。
「うわ、即死かよ」
「おっと、殺めてしまいましたか……。すみません、うちの者が。この後始末は必ずいたしますので、後ほどギルドにも参りますね」
「わ、わかりました……」
プルートがフェイと、この事態の収拾を図る相談をしている。チェスターは一人っ子で、他に後継者もいなかった為に、エコーレ家は取り潰しになるそうだ。
使用人達も当然クビになるが、皆活き活きとしており、心配する必要は無さそうだ。もし、行き場のない奴がいたら、グラスレイクを紹介してもいいかもしれない。村を作るのに、人手は必要だしな。
そして、プルートには申し訳が立たないな。俺達の都合に巻き込んで、部下を……それも、組織の財布を担っていた人材を失ったのだから。
「プルート、今回はありがとう。そして、すまなかったな……」
「……ヴィクターさん、何を謝られているので?」
「その……会計担当だったんだろ、アイツ。これから大変じゃないか? 俺達の都合で、お前の仕事を増やして悪かったなって」
「とんでもない! 自治防衛隊は、貴方のおかげでまた一つ、クリーンな組織になりました。感謝したいのはこちらですよ!」
「アンタ……いい奴だな。何かあったら連絡してくれ、力になれることがあれば協力させてほしい」
「それはありがたい! こちらも、腕利きのレンジャーに任せたい仕事があれば、指名させていただきますよ」
「腕利きなんて、たかだかCランクだぜ?」
「ご謙遜を……。では、失礼しますね」
プルートと握手をすると、彼は自分の屋敷へと帰って行った。
「さて、これにて一件落着か?」
「ん〜、まぁそうなんじゃ無い?」
「じゃあ……帰ろうか、モニカ?」
「はい!」
「あっ! ヴィーくん、私も付いてくからね!」
「フェイ? ギルドの仕事はいいの?」
「アレッタに事後処理は任せてあるから大丈夫よ、カティア。それに、被害者のカウンセリングをしてくるって執行官達に言っておいたから!」
「よし、みんな車に乗ってくれ! 俺達の家に帰るぞ!」
「「 はい! 」」
「……言っとくけど、あの家は私のだからね!」
4人乗ると、車はいっぱいいっぱいだ。流石に女性を荷台に乗せるのはどうかと思うが、仕方あるまい。今度、時間を取ったら、ノア6で車を改造しようか?
* * *
-数十分後
@ガラルドガレージ
「……モニカ、ウェディングドレスっていいわね」
「えっ、そうですか?」
「ヴィーくん、私達の結婚式はいつにしよっか?」
「えっ!? そ、そのうちな……」
「ヴィクター、貴方……」
「う、うるさいぞカティア」
帰って早々、フェイがとんでもない事を言ってきた。……それよりも、彼女と結婚するのは確定らしい。
まあ、悪く無いけど。
「あっ、だったらドレスは私が作ります!」
「本当に!? じゃあモニカに任せようかしら!」
「あ、その前に私の防具が先よ!」
素晴らしいぞ、モニカ! そのまま話題を逸らしてくれ。
そう思いつつモニカを見ると、彼女の首輪が気になってしまった。
「……もう、いいかな?」
「えっ、何か言ったヴィーくん?」
「いや、モニカの首輪……そろそろ外そうかと思ってさ」
「「「 えっ? 」」」
「ん?」
「ヴィクター、何言ってるの?」
「ヴィクターさん、外せるんですか!?」
「ヴィーくん、どういう事なの? この首輪は、一度つけたら外せないのよ?」
「そんな事ないさ、ほら」
カチリと言う音と共に、モニカの拘束首輪が外れ、地面に落ちる。その事に、三人はしばしの沈黙の後、驚きの声を上げる。
……そういえば、似たようなやり取りをジュディの時もやったな。
「な、なんで外せるのよヴィーくん!? ……いや、見てない。私は何も見てないから!」
「えっ、ええと……」
「モニカ、これからお前は自由だが……どうしたい?」
「……ふふ。もちろん、皆さんと一緒ですッ!」
改めて、ガレージの一員となったモニカと、そろそろフェイとの結婚を考えなくてはならなくなったヴィクターであった。
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