006:勇者だけど。こいつら魔王を倒す気がない。

 ついに、魔王を前に勇者たちは足を踏み込む。

「歴代の勇者よ。果たして、われを倒せるか?」


「みんな、必ず魔王を倒そう!そして世界の平和を取り戻すんだ」

 勇者のレベルは一向に上がらなかったが、

 このメンバーがいれば、どんな状況でもやり遂げられる。勇者は強気に構えていた。


 パラディンと皇族騎士と聖女と魔法使いは、気のない返事を返す。


「まあ…。その、そうですね」

「え…。あ、はい…。」

「うん……?」

「そうじゃなー…」


 全くやる気がない。何なら誠意すら感じない。

 なんで今日に限って、やる気が無さそうなんだ。

いつも、ザコ敵や町人をフルボッコにしているだろう…!と嫌な予感を覚えた。


それは現実のものとなった。


勇者は懸命に戦った。

しかし、全く足元にも及ばない。


「ぐあーっ」


「勇者様ニヨクモー」


パラディンが斬りかかるが、魔王が攻撃するよりも先に。


「ウワーヤラレター」


と反撃されたふりをして退却していく。


そんな試合に聖女に治療を受けてた勇者がブチ切れる。


「お前何がしたいんだよ!」


大聖女が本音を漏らす


「大聖堂が…ほしい…の…だめ?」

「大聖堂はいらぬのじゃー。わしは大図書館がほしい」


魔法使いは製図板を全天周囲で光らせる。


「軍事費は急務です!」

「宮殿の拡張のほうが先です!」


パラディンと皇族騎士も参戦する。


大聖堂・大図書館・軍事費・宮殿。ああ、そうか。結局は勇者補正予算目当てなんだな…!


 こんなに露骨にねだりやがって。

勇者本人が死なない程度に魔王を倒さなければ、

永遠にしゃぶりつかれるんだ。


 そんなに勇者補正予算案オレのことが大事かよっ!


 ココは魔王城悪しき心が強さとなる。勇者に強い悪しき力が宿り、募っていく。


「「「ゆ・う・しゃ・さ・ま?」」」


勇者は、この怒りを魔王に向けて振りかざした。


「止められぬか…。この絶望の輪廻は…」


勇者の最後の一撃。勇者は魔王を倒したが、次の魔王へと豹変していた。


「オレはこの世を許さない!絶対復讐する!」


こうして生まれる魔王の誕生は世界全土へととどろき響く。


こうした新たな脅威は、新たな金儲けの道具として為政者いせいしゃたちに

市民たちへの勝手の良い言い訳として使われる。


「魔王は危ない」「魔王は人々を襲う」「魔王は悪の巣窟だ」


そういう風潮だけが一人歩きをする。


新たな魔王の幕開けは、新たな勇者の旅立ちだ。


さあ、勇者よ。国王陛下の勅命である魔王を倒すのだ。


そして、平和へと導く強気ものとなれ。

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勇者だけど。いつもの仲間がいなくなった。 ムーンシャイン @EveWhite

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