004:勇者だけど。スライムすら倒せない。
更に数ヶ月経った。勇者は立ち直り、魔物もはびこってきたところで
王都を出発する事となった。
この間に『勇者道路公団』により、魔王城まで直通の石畳で舗装された道路が完成していた。
なんなら『勇者住宅公社』が一緒に街道沿いにニュータウンも発展させている。
勇者。勇者と。何が彼らを動かしているのか…。勇者には、未だに謎だった。
そんな、発展した街道にあまり魔物は出るはずもなく。
数日が過ぎた頃。少し閑散とした森の中の近く茂みが揺れた。
勇者は、パラディンと皇族騎士を見たが、両者とも首を横に振っている。
そして、スライム一匹が飛び出してきたのを見て
ついに、勇者はエンカウントした。と涙ぐむ。
「やりましたね!勇者様!」
ああ…王都で決意を誓って約1年。やっと、スタート位置に立てた。勇者は、感動の涙を拭う。
「よし、みんな行くぞ!」
鼓舞を飛ばしたと同時にパラディンがフッフッフと不敵な笑みを浮かべる。
「ここは、私にお任せあれ。こんなザコ敵。勇者様が出る必要すらありません」
そういって、勇者の静止も聞かず、パラディンが抜刀し突撃する。
しかし、皇族騎士が足を引っ掛け。パラディンは豪快にすっ転んだ。
「皇族騎士め!何をする!」
俺のために止めてくれたのか?と、勇者は、内心思った。
「別に?重装激おそ。パラディンさんがトロいから、転んだだけじゃないですか?」
「なんだと!皇族騎士!かかってこい!力の差を見せつけてやるよ!」
バスターソードを握り直したパラディンに、マジック・ソードを引き抜いた。
「パラディン。その覚悟称賛に値する。だけど、後悔しますよ?」
皇族騎士とパラディンの熾烈な剣戟が始まった。
「頼む!ふたりとも、やめてくれ…ッ!頼むから…」
プライドの前に、勇者の声は届かない。
「大丈夫…。勇者さま…。」
そこに聖女が助け舟を出した。ニコリと笑う。
「私が倒してあげるから」
ああ・・・、こいつも何もわかってない。
『大聖女の名のもとに。いでよ。守護天使…。サンクチュアリ…ジャッチメントッ』
聖女の召喚により天国より神々しい天使が現れる。そして、スライムに正義の鉄槌を下した。
波動する衝撃波。漂う砂埃。最初のスライムは倒された。
「お前もいらないことをするな!」
スライムは倒されたと思いきや。魔障壁により、スライムは守られていた。
気がつくと魔法使いが杖を握って詠唱している。
「聖女。わかってないのじゃ。勇者様は、スライムを倒したいということにのう」
わかってくれた…!唯一、言葉が通じる人がいた。
『いでよスライム我が名のもとに馳せ参ぜよ』
次の瞬間、魔法使いの召喚魔法により、スライムが数千匹現れたことを除けば完璧だった。
「さあ、思う存分たおすのじゃ。勇者様よ」
「倒せるかよ…ッ!」
勇者は、剣を地面に叩きつけた。
「そうなのね…。大丈夫…。私も手伝うね!」
聖女は、更に多くの天使兵を増強する。
あっという間に、倒されては召喚。そして、また倒される死のスパイラムが完成した。
結局、体力を使い果たしたパラディンと皇族騎士。聖なる力と魔力を使い果たした聖女と魔法使い。
「やるじゃない。パラディン」「貴様もな、皇族騎士」
何故か芽生えた友情の片隅で、勇者はむせび泣き。
スライムだけが、ただずーっとプルプル震えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます