002:勇者だけど。魔王城までスライムすら現れなかった。


 数日、王宮で新たな仲間たちと、しばしの作戦会議を行い勇者たちは旅に出た。

しかし、数日歩いても、一向に魔物は現れなかった。


 どういうことだ。ここは、すでに危険地帯の禁忌の森のはずなのに。


 当初から勇者はこの違和感には気づいていたが。仲間の楽しいトークに花を咲かせていたら、ついには魔王城の近くまでやってきた。


「何故だ、なぜ魔物が出ないんだ。」


 不思議がる勇者の様子に見て、何故か、パラディンだけが得意げになっていた。


その時、そばの草むらの茂みが揺れる。スライムか?獣人か!?。勇者はついに来たか。抜刀し身構える。


 しかし、そこには、魔物ではなく重装鎧姿の王国軍兵士が姿を現して勇者に敬礼した。王国軍兵士が何故こんなところに…?王国軍兵士は、ササッとパラディンのそばに近づくと、小さく耳打ちをした。

 パラディンは、それを聞き。そうか、報告ご苦労。と兵士を返した。


「えっへん!勇者様ご安心下さい。我々、国王軍の活躍により、魔物は殲滅されました…ッ!」


コードネーム『勇者様魔物殲滅作戦』の成果をドヤッ顔で、アピールする。


世界は確実に平和になった。だがしかし、レベル1の勇者は、パラディンに難癖をぶつけた。


「余計なことをするなよ!一向にレベルが上がらないじゃないかッ!」


世界が平和になって、どうして怒られるの…?と。なぜ怒られたかは分からないが、パラディンは、条件反射で、背筋を伸ばし敬礼で返す。

「サー、申し訳ありません!サー!」


「フッフッフッ、これだから軍部の脳筋具合には困りますネー」

「なんだと!?」


 今度は皇国騎士が勝ち誇った笑みを浮かべている。


「勇者様。その点はご安心を。我々、皇国騎士団は勇者様のため…。」


 そう言うと、草むらから、ワラワラと皇国騎士団員たちが、魔法の護符や檻で閉じ込めたベヒモスやバハムートを一斉に連れてきた。


「全てのボスを捕らえておきました。どうぞ、ご自由に処して下さい。」

「くそ、皇国騎士団め!卑怯だぞ」


 国王軍のパラディンが悔しがる。どうも、この二人、折り合いが悪いらしい。



「レベル1で倒せるわけ無いだろ!」

 おい、勇者様のために弱らせろ。皇国騎士が合図すると、配下の騎士団員がバハムートを聖剣で突き刺した。キャイン…ッ。と、竜はか弱い悲鳴を上げた。


「まてまて。お前ら、もう余計なことをするな…ッ」


「「はい、わかりました」」

 勇者は、一度、始まりの城へと戻り自己鍛錬をすることになった。


 その間、議会で『魔物害獣保護法案』が賛成多数で可決され、承認の運びとなった。

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