第2話 想ひ出

初等部の学舎に、新しい先生が転任してくると情報通のメガネが噂していた。

時期は春先、別に珍しいことでもないが田舎暮らしの少年少女達には、多少の刺激でも過敏になるのだ。

一人、また一人と噂の輪へと飲み込まれていく。クラスの半数以上が騒ぎ始めた頃、担任の男教師が、泣きぼくろが特徴的な黒髪の女を連れて教室に入ってきた。

「君たち、席に着き給え。新しく転任してきた先生だ。挨拶を」

「皆さん、今期から転任しました。よろしくお願いします」

礼儀正しい様に見えた。

騒ついた教室に男教師の咳払いが響いた。教室は静まった。

僕はその先生を泣きぼくろと呼ぶことにした。


***


授業を終え、帰路に着いた。泣きぼくろがメガネに質問攻めされていたことを思い出した。どんな質問だったか。僕は友人達と明日の遠足について話していたから何も聞こえていなかった。

まぁいいか。


「ただいま帰りました」

玄関に戻ると飼い猫が僕をじっと見つめてきた。気味が悪い。妹が駄々をこねて父に飼うことを許してもらった虎柄の捨て猫。僕は黙殺していたがとうとう父が許してしまった。失敗した。夜な夜な妹じゃなくて僕の部屋に入り込んでは遊べと言わんばかりに爪を立ててくる。忌々しい。


僕は猫を横目に自室に逃げ入った。

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夏の夜火 クラウドストーリー代理 @kkkkkkkkkkkkk

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