第249話 残ったのは
〜エルフ〜
どうも、目の前の性悪な存在にえげつない事をやらされそうになってるエルフです。
「その姿になる必要、ある…?」
「ほら、元神で残留思念の私も流石にエルフとして普通に生きてた貴方と戦いたくはない、しかも神になりたく無い理由は会いたい人が居るらしいじゃん?
それでも試練は確定なんだー、ごめんね。」
「うぐぐ…」
「だから頑張ってね!」
クソが、琴音さんみたいに話されて惑わされる。
琴音さんの姿の存在を倒さないといけないって事でそもそも嫌なのに、行動とかを琴音さんに似せるのって本当に性格悪い。
「はいこれ、一回刺すだけで私を倒せるよ。」
「え、あっ、うん…」
なんでコイツはそんなに私にやらせたいんだ…
「それと、止まりっぱなしのそこの人達も動かすね!」
「うん…」
パチン
「リース…?
誰だお前は!」
『あれリースの保護者じゃね?』
見た目だけだけどね。
「なんか、倒さないといけないみたい…」
『それは…
リースたん出来るのか?』
どうだろ…
頭では偽物だってわかってるはずなのに、動きがどうしても琴音さんで仮に刺しちゃったら間違いなくメンタルに来る。
「うゆゅ…」
『すんごい葛藤してるのぉ…』
「あ、記憶とは絶対に消せないし、他の神達の干渉を受けたらやり直しだから気をつけてね。」
完璧に塞いでくるんだね。
「こうやって持つの、そう。」
そして何故コイツは私に協力するんだろう。
試練っていうぐらいだし最初の私の姿の敵と戦って勝つ事が条件だと思ってた、でも今はただの自滅というかなんというか…
「そのまま真っ直ぐ。」
「待って、今度は私と話そう…」
私の行動がただ引き伸ばしてるだけってことはわかってる、でも聞かないと後悔する気がした。
「他の人達は止める?」
「動いたままでいい…」
何処から出したのか椅子が現れ、私達は向き合うように座る。
「時間を決めよう、5分ぐらいでどうかな?」
「嫌…」
「嫌って…
わかったよ、納得いくまで話そうね。」
あまり知りすぎると情が湧きそうでデメリットしかないけど、話すと決めたからにはじっくり聞き出してやる。
「なんで、戦わないの…?」
「この体と戦いたいの?」
「嫌…」
「でしょ、私もリースちゃんと戦うのは嫌だもん!」
会話の内容だけど、私が質問してそれを偽琴音さんがさりげなく躱す。
この繰り返しだった。
消えるのが怖くないのか、って質問には
『だって神になれる可能性がある君主は貴方だけじゃない、まだまだチャンスはあるんだよ。』
って答えられた。
それなら、別に良いのかなって思った自分を殴りたくなった。
普通に考えて次から刺してもいい事にはならないだろ。
「もし、私が刺さなかったらどうなる?」
「貴方が消えて、貴方の体を使って私が復活する。」
「へー…」
「えぇ、興味あまり無かった?」
「ううん、無かったわけじゃない…
それは、どっちかだけなの…?」
「当たり前、神の思考が2パターンあったら大変なんだよ。」
そりゃそうか、1つの事柄に賛成と反対で同じ神が意見割れてたら意味わかんないもんね。
「最後…」
最後はずっと疑問に思ってた事、君主という存在が生まれたかをなんとなく理解して、神様達の事情も少し理解しても、これだけはわからないこと。
「なんで、わざわざ魂を分裂させたの…?」
「……」
この質問に、今まで笑顔だった偽琴音さんから表情が抜け落ちる。
空間が軋むような音が聞こえ、黙って静観していた軍服女神様が警戒する様子で立ち上がった。
「私はね、寿命の存在する生き物の感情という物を知りたかった。」
自分自身を振り返っているみたい。
「君達のように敵対する神なんて存在しない、私が唯一の神だった。
世界なんて無限にあって全てを管理するなんて不可能、くじ引きで決めた世界を覗いて、気まぐれに滅ぼしたり繁栄させたり…」
所々ヤバい事を言ってる。
「でも、そんな日々を過ごしていた私が1つの疑問を抱いた。
わざわざ死ぬ存在がなぜ生きるのだろうと。」
???
全く理解できないけど、それは神特有の視点なんだろう。
「知りたくなった。
まずは聞いた、何故生きるのかと…でも理解できなかった。
次は分身体を作り体験した、だけど全くうまくいかなった。」
失敗だらけ。
「それも全て、本体である私に寿命が存在しないからだ。
真の意味では理解できないんだとわかったんだ。」
いまいち魂を分裂させた理由には繋がりそうにないけど…
「理解してしまったが、初めて自分がわからない謎の答えを欲した私は一度消えてみる事にした。」
「へ…?」
まて、なんでそうなった!
「自らの意識を保てなくなるまで魂を細かく刻見続けて10年、11年目に突入しかけたところで意識を保てなくなったのだ!」
私にはいまいち興奮する要素があったのかはわからないけど、楽しそうに話しを続けた。
「次に目を覚ましたとき私は残留思念のように実体を持たずにういていた。
久しぶりに世界を回れば、小さな神が大量に生まれ競い合っていた。
なんと素晴らしい光景だっただろう、神と呼ばれる存在が競い合い、奪い合い、高め合い、寿命の存在する生命のように生きていたのだ!」
ガタン!
倒れるように座り込み、さっきまでのテンションの高い声から弱々しい声へと変わる。
「だからこそ、私は復活してはいけないんだ。
復活すればこの素晴らしい環境が全て壊れる、いやすでにルールを無意識で作ってしまったし壊れてるのかもしれない…
っと話がズレちゃったけど、これが魂を分けた理由だよ!
お話は満足かな?」
「うん、ありがと…」
適当に流されてた私の質問だけど、この質問だけには真面目に答えてくれた。
もしかしたら知って欲しかったのかもしれないな。
「じゃあやろうか。
【ナイフを強く掴め】」
魔法で行動を強制してくる。
もう会話も何もする気はないんだろう。
「さぁ、最後は自分の意思で…
そうすれば貴方は解放されるよ。」
「バイバイ…」
私に残ったのは少しの罪悪感と、涙の跡だった。
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