第248話 頑張って

〜神様〜


リースたんが神になるとか、クソ君主熊野郎に言われてから大体1時間。

もはや蜘蛛野郎は軍服女神にしばかれて空気となっており、皆がリースたんを見守っている。


「ん?まずいぞリースたんの魂が急激に弱くなっておる!!」


「マジかよ!

軍服女神、お前どうせそれコピー体なんだからサポートしてやれ!」


『…これ以上、力を消費すればあの蜘蛛が暴れ始めたら抑えられん。

すまんが無理だ。』


ぐぬぬ…

儂が向こうの世界に行ければいいのじゃが、漁夫の利してくる奴等の対策の為に残らないといけない。


「チャラ男…」


「俺1人じゃ無理だ。

隠密特化の神が死んだせいで、俺らのとこと同等ぐらいの奴等に世界が見つかってる。

もう4回追い返してるけど早く俺らの世界に取り込まないとヤバイ。」


無理か…

こうやってる間にもリースたんの魂が小さくなっていく、リースたんの体を動かせる程の強力な魂の姿はもう無い。


「儂リースたんを失ったら隠居する…」


「爺さん…

わかったから今は手伝ってくれ。」


チャラ男が冷たいのぉ…

渋々結界の強化と修復を始める。


「まだまだこれからだよ、安心して見守ってあげるといい。」


「黙れクソ君主、儂は貴様許さんしリースたんが帰って来ても実験道具にしてやるから覚悟しておくんじゃ。」


「怖いね。」


いつでも消し飛ばしてやるからな!



〜エルフ〜


快適な場所で考え続けている。

何故わざわざ快適な場所から離れないといけないのかわからない。

そもそも夢のような場所で知らない奴に聞かれたからといって、快適な場所から離れると答えるだろうか。


なんとなく、こういう関係だった気がする、とわかる程度だが少なくともこの快適な場所より関係は良くなかった。


『そろそろだな。

最後に問う、どうしたい?』


どうしたい、か…


何回も頭の中で自分に言ってるけど、快適な場所から出る必要なんてない。


『ならばーー』


でも、ずっと快適なのって嫌じゃない?


『は?』


好きな物をずっと食べ続ければ飽きるように、今の快適に慣れたらさらに快適にしたくなるでしょ?


『ふふ、ははははは!

別れたとはいえ選ばれた存在だったはずなのに、人のようなことを言うのだな、小娘。』


人のようなって、人だからね。

というか誰が小娘だよ、男でかつ大人だわ!!


『…いいでしょう、此処から出してあげます。

この後も頑張りなさい。』



ーーーーー


「んぇ…?」


私、女の子になってたこと忘れてたわ。


『おぉ!リースたん!』

「リース!」


「おはよう…」


なんか動きにくいけど安心すると思ったら、軍服女神様にギューされてた。

片腕なのに力が強くて抜けられな…片腕?


「う、腕が…」


「ん?あぁこの身体は別に本体じゃないから気にするな。」


「あ、え…

わかった…」


流石は軍服女神様、当たり前のように言ってるけど全く意味がわからん。


『リースたぁぁん!

今日の晩ご飯はシロクマの鍋だよぉぉ!』


…そのシロクマって君主のことじゃないよね?


『さぁリース、あと少しだ。』


この声はシロクマ、よかったまだ鍋にはなってないみたいだ。


「早くやろう…」


「は?」

「…?」


「ほら、早くやろうリース…」


わーお、銀髪なロリ娘だ。

てか私じゃね?


『リースたんが2人、グハッ!』

『おい爺さん、本当に申し訳ないが片方は明らかに敵対してるぞ。』


え、敵なの?


「戦わないと、ダメ…?」


「残るのは私か貴方のどっちかだけ、まさかとは思うけど、神になるのに自分を保ったままだと思ったの…?」


「そっか…」


自分の姿と全く同じ存在と戦うのは変な感じだ。

出来るだけしたく無いけど、神様達が何も言わないって事は戦わない選択肢はとれないのかもしれない…


「だけど、先に話をしよう。」


パチン


目の前の私が指を鳴らす。

近くにいた軍服女神様の呼吸音が止まり、神様達の声を聞こえなくなった。


「これで邪魔者は居ない。」


「怖すぎ…」


「軽く質問をする。」


私の反応は無視して話し始めた。


「1つ、貴方が貴方のまま居たい理由は?

2つ、真の神としての権能と今の自分ならどちらを取るか。

取り敢えずはこの2つ、答えて。」


私が私のまま?

そりゃ誰でも消えるのは嫌だし、神としての権能とは詳しくわからないから今の自分の方がいいかな。


「消えるのが嫌、今の自分…」


「そう…

どうして今の自分に執着するの?」


今の自分に執着…

この体になってから直ぐの頃は自分じゃないと思ってた、でもリースとして生きるうちに自分だって事を受け入れたからなのか、な?


いや、違うな。


「琴音…」


どちらかと言うと今の私が琴音と離れたくないんだろう。


私が消えたら琴音さんと会えなくなる。

それが嫌だ、エルフボディの感情も私が消えたら消える可能性があるのか、嫌だ嫌だって心の声が聞こえる。


「その名前は?」


「会いたい…」


「それが神で無くなる可能性があったとしても?」


「うん…

会って一緒に生きれるなら、私は神になんてならないよ…」


「……」


痛いと感じる静寂の時間が過ぎていく。


「わかった、次で本当に最後だ。」


私の姿だった存在が琴音さんの姿へと変わった。


「私を殺さないと、白仁琴音という存在と私が入れ替わる。

だから頑張って、リースちゃん。」


「…!」

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