第247話 違和感

〜エルフ〜


「エヘヘ、お兄ちゃーん…」


やばい(確信)

何がヤバいって、まだリーナが小さい頃なら可愛いなぁ…ぐらいで済んでたけど成長して大きくなりつつある今、容易に抱きつかれたりすると絵面がヤバいことになる。


草臥れたオッサンに抱きつく女子中学生っぽく見られるんだ。

実際は高校生だけど、リーナは背が低いから更に犯罪的な絵面になってしまう。


「ちょっと離れようね〜。」


「やっ!」


今の高校生は皆んな幼い感じなんだろうか…

俺が高校生だった頃は、親ウザい、兄ウザい、みたいな感じだった気がするんだけどなぁ。


「そうだ、夜ご飯作ったよ。」


「えっ…」


「食べれるよね?

先にお風呂入る?ならリビングで待ってるねー。」


すー、どうして今日に限って飲み会の連絡をしなかったんだろう。

いつもなら家に帰っても誰も居な…ん?


「あ、こんばんは〜。」


「ん?あぁ白仁さんこんばんは。」


玄関で立ち尽くしていると後ろから声をかけられる、隣に住んでる白仁琴音さんだ。

確か大学生だったかな。


「なんか久しぶりに会った気がしますね〜。」


「そうですね、まぁお互いに活動する時間がズレてるので仕方ないとは思いますけど。」


「ですね〜。」


琴音さんは妹であるリーナと仲が良くて俺とも顔を合わせれば少し会話する程度の関係だ。


「そういえば、この前リーナちゃんに似てる子見つけたんですよー。

銀髪だったけど雰囲気がすごく似てました!」


「そうなんですか?」


リーナは俺の妹だけど血のつながりが怪しいぐらい可愛い、もうテレビに出てる芸能人クラスだ。

そのリーナに似てる銀髪の子って凄いな、日本は広い。


「また会いたいなぁリースちゃん。」


「仲良くなってるじゃないですか。」


「もうオドオドして可愛かった、お持ち帰りしたい。」


少し怪しいんだよなぁ。

琴音さんもかなりの美人だけど、リーナを筆頭に可愛い子に対してかなり犯罪的な視線を向けてる。それを向けてる本人には気づかせないのは流石だ…


「そんな事してると通報されちゃいますよ。」


「警察の方には誤解だって説明すれば問題ないですよ?現に3回ともそれで乗り越えました。」


既に通報されてたんかい!

いや待て、乗り越えただと…


「また会いたいなぁ、リースちゃん。」


「はぁ…では自分はリーナを待たせてるのでこれで。」


「あ、はい!

さようなら。」


リーナがいるであろうリビングへと向かう。

机には夜ご飯が並べられており、なかなか量が多そうだ。


「外で何してたの?」


「偶然、白仁さんと会って少し話してたんだ。」


「琴音と?!

夜ご飯一緒に食べようって誘えばよかったのにぃ…!」


頬を膨らませて不貞腐れながらも白米を装ってくれた。


「今日の夜ご飯はドリを焼いてペッパーした奴。」


「なんだそれ。」


「簡単に言えばドリを塩胡椒で焼きた奴。」


ドリかぁ、俺1回しか食べた事ないけど意外と美味しかったような気がする。


ピギィィィ…


「…なぁリーナ、なんか鳴いてんだけど。」


「あ、ごめん生だったかも、加熱し直すね!」


「あぁ、頼mーー」


眠気、か…?


ーーーーー


いい気分だ。


俺はベランダで外を眺めていた。

何故かはわからないが、水中に居るような心地良さ、ずっとここに居たいと思ってしまう。


『ここに居るか?』


何処からか聞こえた声に問われた。


『安心しろ、外はもうお前無しでも周る、むしろ此処に居た方が混乱は生まれないかもしれない。

それに此処は永久に不滅だ。』


意味がわからない。

外とは何処のことか、此処に居るのは当たり前なんじゃ?


『なら、良いな?』


その一言に嫌な予感がよぎった。


外には何があるんだ?


『お前が望んだ物とは少し違う世界だ。

今、此処の生活は満たされていただろう?

同僚とくだらない話をして、白仁琴音という者が生活の近くに居る、妹という大切な存在も居た。』


それがおかしいんだ。

俺は1人で生活してた、同僚とはくだらない話をすることもあったけどあそこまで仲は良くなかった。


『悪いことか?』


「わからない。」


『ならば考えるといい、だが此処にいれば困ることなど何も無いぞ。』


それっきり声は聞こえなくなり、俺は無駄に心地の良い空間で1人になった。



〜軍服女神〜


「ふむ、腰辺りまで消えたか。」


リースの状態を説明したシロクマは何も言わなくなった。

爺さんとチャラ男がリースを助けようと脅しても何も話さない。


足元からだんだん消える範囲が広がっていく。


私も鑑定を使ってリースの魂を知覚しながら観察しているが、かなり不安定ということしかわからない。

鑑定のみの結果は原因は不明、魂が力尽きるまで後僅か。


君主、我々に課すルールを作り出した神の欠片、できる事ならリースには神となり私達に協力してもらいたい。


『軍服女神…』


「なんだ。」


『リースたんが望む限り、神になったとしても儂の眷属じゃ。』


シロクマに当たり散らして冷静になり、これからの事を考えたのだろう。

リースは上位神となる可能性が高いとはいえ新参、そして君主、研究対象にされないように私に釘を刺したということか。


「わかっている。

それに私はそこまで薄情ではない。」


私、爺さん、チャラ男、上位神であと2柱の擁護が必要だな。



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