第246話 夢

〜エルフ?〜


「おい起きろ〜!」


「ん?あぁ!」


同じ部署に配属された同期に揺すられて起こされる。

ヤバい、寝落ちしていた!


「仕事は?!」


「ふっふっふ、あそこに資料の山が見えるだろ?」


指を刺している場所は上司の机、そしてその上には大量の書類。


あっ(察し)


「残りは上司が判子を押せば全部終わりだ、飲み行こうぜ!」


「マジかよ!」


大歓喜!

なんでこんなに仕事が溜まっていたのかは思い出せないが、この途轍もなく長かったデスマーチが終わりを告げた。


「て、手伝って…」


「「グッドラック上司。」」


流石に無理だ。

仮に上司からの印象が悪くなったとしても俺達が残ってできる事なんて無い、俺達は『山幸』という山菜が旨い居酒屋に行くのだ。


「2人で。」

「了解しました。

2名様ご来店でーす!」


時間的に混んでいて入れないかとも思っていたが、ギリギリ待たずに入ることができた。


「最初は生ビールでいいとして、何食う?」

「取り敢えず、山菜天ぷらと唐揚げ。」

「ほとんど食えてないのに揚げ物かw

店員さーん。」


生ビールが運ばれて来る。

このお店は入店時にワンドリンク注文できる、席についてから注文の為に声を掛けると持ってきてくれるのだ。


「生ビールです。

ご注文お伺いします。」


「えっとまずはーー」


注文を同期に任せて、無料の沢庵を取り出す。


「かしこまりました。

山菜天ぷらー、唐揚げ2個ずつでーす!」


注文が終わり、ビールの入ったジョッキを持ち上げ、


「大量の仕事が片付いた事を祝って「乾杯!」」


一気に半分ぐらい流し込む!

体に染みるぅぅ!!


ーーーーー


飲み会が始まって2時間。

もう2人とも出来上がっていた。


「あの仕事量おかしいだろ!

なんで朝行ったらあんな資料が沢山あるの?!意味わからんわ!」


「そうだな、確かに意味わからん。」


同期は酔うと愚痴を漏らす、俺はその反対でマトモに思考ができず相槌を打つだけになる。


「だからぁ!

俺は、もう結婚したいんですよぉ!」


「うんうん、そうだね。」


急に話が変わるのも酔っぱらいの特徴だ。


「お前も女なんだから結婚しろとか言われてないの?」


「うんうん…うん?」


同期はもうダメらしい、完全に酔ってパーになってる。

男の俺がどう見たら女に見えるんだ。


「俺とタメな筈なのにそんなロリっこ体型で、うちの場所の女性は全員お前に母性を感じてんだからなぁ?!」


「すいませーん、お会計お願いします〜。」


もうコイツはダメだ、これ以上一緒に居たら俺まで出来上がってしまう。

同期のカバンから財布を取り出し料金を払う、もちろん割り勘だ。


店を出て支えながら歩く。


「おぉい、辞めろ辞めろ、こんな場所見られたら通報される。たすけてぇー、銀髪ロリ娘に社会的に殺されるぅぅ〜。」


「通報されないよー、タクシー捕まえるだけだよー。」


まだ俺の事をロリッ子だと思ってるらしい、今回はかなり酷い酔い方してるな。


〜〜〜♪


「あ、電話だ。」


「グェ!」


懐に入れていたスマホが鳴り、肩で支えていた同期を落としてスマホを取り出す。


「もしもーー」


『さぁ、今何時でしょうか。』


スマホから聞こえてきたのは女の子の声だった。


「いや、何時って…」


『可愛い妹を1人家に放置で飲み会ですかー?!』


妹?あぁ、リーナの事か。

なんだが違和感が凄い、普通の生活の筈なのに違う気がする。


「ごめん、すぐ帰る…」


『待ってるよー!

今日は一緒に寝てもらうからね!』


「うん…」


視界が揺れて気づいたら家の前に立っていた。

あぁ、これはゆmーー


『おかえり!』


「ん、ただいま。」


あれ?何か忘れた?

まぁいいか、早くご飯作ってあげないと。



〜軍服女神〜


「ゼヒュー、ヒュー…」


「やはり痛みの概念を与えたのは正解だな、痛めつければ動けなくなってリースの方に集中できる。」


代償としてこの体の左腕、魂ですら片手を失ったが新しい上位神が味方になる可能性を考えれば許容範囲だ。

治療に必要な日数は、だいたい10年ぐらいか。


『リースたん…』


さて、今のリースはかなり不安定だ。

脚先から溶けるように消えていっている、何度か再生して溶けてを繰り返し膝下で完全に停滞していた。


『シロクマを連れてきたぞ!

神としての干渉って判定になってかなりギリギリだった。』


『よくやったぞチャラ男!』


我々は君主について何も知らない、だけど何も知らないなら丁度見つかった君主に聞けばいい。


『これは…

僕も初めて見たよ、君主が完成するところなんて…』


「どういう事だ?」


『君達の仮説は間違っていない、この子は神になろうとしている。

だけどそれは君達とは全く別の存在だ、ルールを改竄する権利を持つ完全な神。』


ルールの改竄。

我々のような我の強い神にとってルールにより縛られているおかげで平和が維持されている、それを改竄だと?


『といっても1回だけだよ。

その後は君達のような上位神ぐらいの存在へと変わる。』


「なぜそれを知っている?」


君主の事情を詳しく知っていて、そんな特権があるならシロクマが神になっているはずだ。

だというのに何故ならないのか。


『君主はルールを創り出し、それを管理するシステムとなった、今は亡き唯一神の魂の欠片を持つ存在なんだ。

中でも僕は記憶を引き継いでいる。』


なんだと?


『そんな事は今はどうでもいいんだ、その子は今試練を受けている。

再び神に戻るか、完全に消滅するか、僕達にできる事は祈るだけだ。』

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