第236話 何やっても上手くいかない

〜エルフ〜


「……」zzz


グゥ…


『リースたーん、そろそろ起きてくれ〜。』


うるさい…

フワフワ、気持ちいい…


『うーむ…』

『幸いその空間は君主により保護されているそうだし、あと半日ぐらいは休ませていいんじゃないか?

ダンジョンでは気を抜けなかっただろうし。』

『そうだな、我々も少し休もう。』

「何かあればすぐに連絡するよ。」

『君主よ、感謝する。』


静かに、なった…zzz


ーーーーー


「はっ!」


「おや、起きたかい?」


久しぶりに安心してかつ、めっちゃ快適に眠れた…


「リーナ、は…?」


「僕の下に居るよ。」


下…?

あっ、シロクマさんの腕の下からリーナの頭が見えてる。


「……」zzz


なんか気持ち良さそうに寝てるし、まだ放置でいいよね。


にしてもフワフワだよなぁ。

このフワフワが無くなるなんて世界の損失、なるべく戦いたくない。


「エルフのお姉ちゃんの方が起きたよ。」


『あと1時間後から作戦再開だ、もう少し休んでいろ。

充分休憩をとったなら君主からどういう話をしたのかを聞くといい。』


「君主…?」


「僕の事だよ。」


シロクマさんのことか!

君主とかはよく分からないけど、まぁ味方っぽいしどうでもいいや。


「どんなこと、話したの…?」


「色々だね。

例えばーー」


この後、結構色々と教えてくれたんだけど難しすぎてほとんど理解できなかったんだよね。

まぁ、必要な情報はシロクマさんが味方って事とこの空間ならゆっくり休めるってことだね。


「それにしても、君の魂は珍しいね。」


「ん…?」


「君の魂は僕と同じ君主に近いよ。」


シロクマさんに聞いた話だと、君主って神様に限りなく近い存在だよね?

私は元は普通の人間だよ?


「納得いってなさそうだね。」


「うん…」


「多分だけど前世が君主だったんだろうね。

でも器と魂に少し差がある、今のままじゃ全力を出せないと思うよ。」


全力…

言われてみれば、コレが本気ダァ!って全力は出せたことないかも。


ピンチになってヤバいと思って手加減は無くして戦う事はあったけど、全力かって言われると違うかも。


「どうすれば、出せる…?」


「さぁ?」


は?なんだこのシロクマ。


「僕も君みたいな存在は初めて見たんだ、なんとなくこうじゃないかなぁ?みたいにはわかるけど、流石に対策までは分からない。

ごめんね、お詫びにモフモフしていいよ。」


んー、微妙に納得せざるおえないけどちょっと腹立つ!


「くっ…

モフモフ、すぎる…!」


「ここに閉じ込められた僕が出来る事は自らの毛のケアだけだからね!

もう誰にも負けない自信があるよ!」


私とエルフボディは、このモフモフに逆らえない…!


「ふへへ…」


「ふっ、また1人僕の毛皮の虜にしてしまったようだね。

…懐かしいな。」


懐かしい…

もしかしてシロクマさんをモフモフしてた人?が居たのかもしれない。


「友達…?」


「懐かしいって言ったことかい?

それならイエスでありノーだよ、まだこの世界に神がいなかった時、世界に生まれた生命と共に暮らしていたんだ。」


そう語り始めたシロクマは何処か遠くを眺めて、少し寂しそうだった。


「寒い夜は皆んなが僕にくっついて眠っていたんだ、そのうち僕の毛皮でないと眠れなくなってね。

君を見ていたらその子達を思い出したんだ。」


…コレは触れていい事なのだろうか、懐かしいって言ってたしもうその子達は居ないってことだもんね。


「質問の答えにイエスでありノーって答えた訳は、あの子達は友達ではなく家族だったからだよ。」


「そうなんだ…」


でもなんとなくわかるな。

シロクマさんが家族だったら、暖かくて毎日が楽しいと思う…



〜うまくいかない神〜


「なぜだ…

なぜ私があの空間に干渉できない、それに奴らが入ってだいぶ経ったぞ?!

君主は勝ったのか?!負けたのか?!どっちなんだ!!」


自らを制約魔法でこの世界に縛る事で強化したというのに、ペン・ギンは相手を消耗させるどころか秒で壊滅させられ、ダンジョンに放った奴は余裕で撃破され、君主はどうなったか分からん!


他の神達と協力して作戦を立てたというのに上手くいかない!


『落ち着け。』


「これが落ち着いていられるか!

他の神とも連絡が取れなくなってる、一蓮托生のアイツらが逃げるとは思わないが裏切りを疑ってしまうよ…」


『その事なんだが…』


我の盟友の声が暗くなった。


『どうやら他の神は封印されたか殺されたらしい。』


「な、なに?!」


『エルフ達が攻めてきたお前の世界に現れた黒い魔物、アレが他の奴らの世界にも現れて最低限の力を維持できなくなったんだ。』


信仰心は力の弱い下級の神になればなるほど必要だ、力の強い上位の神なら自分の概念から力を引き出せる。

つまり信仰する人が減れば、神としての立場を維持できなくなり休眠したり消滅するしかないのだ。


「俺達は、アイツらの為にも勝たなくちゃならない。」


『…そうだな。』


「だが、流石に勝てないのはもう理解してる。」


『俺は最期まで付き合ってやるよ。』


「ありがとう、最期に攻めてきてる奴らだけは道連れにしてやる…!」



何をやっても上手くいかず、追い詰められた神達は最期に覚悟を決めた。

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