第230話 あ、やば!

〜エルフ〜


「足元に気を…!

気をつけてお降りくださ〜い。」


観覧車から降りるときに声を掛けてきたスタッフさん、私と琴音さんを見て言葉が止まったあと優しい声に変わった。


その理由は間違いなくお姫様抱っこされてる私を見たから、多分関係を察したんだろうなって。


それにしても告白、やっちまったな…

私が雰囲気に呑まれたせいで全く制御ができず、エルフボディの自由に行動させてしまった。


その結果、琴音さんに告白して距離がさらに縮まった。

これは良いことだけど…


あれ?デメリット無いな。


なんか琴音さんにくっ付きながら、やっちゃったってずっと考えてたけど、よくよく考えたら特にデメリットはないどころか私の調子が良くなる。


「…なんか帰りたくないなぁ〜。」


そのセリフは嫌な予感しかしないからやめてくれ。


「ママさん、ご飯作ってる…」


「だよねぇ〜。

残念だけど、今日は帰ろっか。」


「うん…」


なんで私まで落ち込む?!

今日帰らないで琴音さんと2人で過ごしたら何が起こるかエルフボディも理解してるはずなのに…!


まさかエルフボディはいつでもOK的な?


…はたしてそれは神様的にはセーフなのだろうか、もしアウトで琴音さんにペナルティとかあったら嫌だよ。


て違う!

そういう事を考える前に私的にアウトだわ!


「「「ザワザワ」」」


ん?あ、やべ。

私ずっと琴音さんにお姫様抱っこされてるから周りから視線を集めてる。


「琴音…私、歩く…」


「んー?

私はぜんぜん大丈夫だよー、心配してくれてありがとうね〜。」


違う、そうじゃないんだよ琴音さん。

ほとんど好意的な物で生暖かい視線とはいえ、周りの視線が少し痛いんだよ。


「歩く、から…」


「今日の夜ご飯はなんだろうね。」


見事なスルー。

聞こえていないわけじゃないけど、無意識でスルーしてる感じがする。


諦めて抱っこされたままになってよう。


「あっ!

どうしようリースちゃん、お土産買ってない!」


「どうしよ…」


でも今から買うのって難しいよね。

ほら、水族館ならあまり見ない珍しいお菓子買えたかもだけど、今から寄って帰る時間はない。


「仕方ない…」


「やっぱりそうだよねぇ…」


ーーーーー


家の近くまで帰ってきた。


あれからずっと視線を集めていたおかげか、恥ずかしいって思わなくなってしまった。

たぶん一時的に羞恥心がバグってる。


「んー?!?!

家からなんかやばいオーラが出てるな。」


「え…?」


「あれ?リースちゃん見えない?」


オーラって言われても暗くてよくわからないな。


もしかして神?

いや、ヤバいって言うぐらいならリーナから連絡が来てるはずだし神様達も黙ってない。


そして琴音さんの家にやばいオーラを出せる存在は…


「リーナ、か…」


リーナだけで、理由としては…


「リースちゃんを拉致同然で連れ出した事と、書き置きを読んで怒ってるんだろうなぁ。」


書き置き?


「なんて、書いた…?」


「えっと確か〜、

『リースちゃんと2人きりで!デートに行って来ます。

精一杯楽しんでから、夜ご飯には帰る予定なので心配しないでください。

ps、携帯はミュートしてるので反応は絶対にしません、ごめんなさい。』

って感じだったはず。」


煽ってるじゃん。

特に2人きりでを強調してるし、たぶんリーナはブチギレだろうなぁ。


それにしても、こんな書き置きを置いて行ってたらリーナから連絡が来てもおかしくないけど来なかったな。


「まぁ私達は堂々と恋人になりましたって帰ればいいんだよ。」


それは私が言って成立する事であって、琴音さんは言われる側では?


「そうだね…!」


エルフボディは同意してるみたいだ。


「お、そろそろリースちゃんもわかるんじゃないかな。」


近づいていくと琴音さんの言っていたオーラに気づいた。

なんか黒くてヤバイけど、どちらかというと落ち込んでる感じがする。


「入るかー。」


ガチャ


「「ただいまー/…」」


リビングへ行って私達が見たのは、ソファで倒れる朱音さんと机に突っ伏してるリーナだった。


「おかえり。

リースはこの2人どうにかしてやってくれ。」


私にどうしろと。


琴音さんの腕から降りて2人の様子を観察する。

ぁぁぁ〜、って小さく言ってる。例えるなら家に帰れるか怪しいぐらい泥酔してる人っぽい。


「診断名、リースちゃん要素欠乏症。」


なに言ってんだ。


「たぶんリースちゃんがギューって抱きしめれば復活すると思うよ。」


「ほんと…?」


「ほんとほんと、大体1分ぐらいかな?」


まぁ、それぐらいなら治るか分からなくてもやってみでもいいかな。

リーナは本当に復帰したらちょっと面倒そうだから朱音さんから。


「えい…」


だ、抱きつく。

ソファで横になってるから抱きつきにくい…


「いっそのこと朱音ちゃんの上に乗っちゃえばいいと思うよ。」


「そっか…」


少し重いかもだけど頑張ってね。


上に乗ると私の髪の毛が朱音さんの顔に枝垂れかかった、心なしか呼吸音が大きくなった気がする。


「ぅぁ…」


少しずつだけど焦点があってくる朱音さん、まじか本当に治ってるよ。


「はっ!

私はいったい…」


「お、朱音ちゃん起きたねー。」


エルフボディの安全性について神様と話し合う必要があるかもしれないな。

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