第229話 デート 6

〜エルフ〜


「〜〜〜♪」


久しぶりに体が全く言う事を聞かない。

これはなんとなく聞きたかった質問をしてからずっとだ、でもテンションが高くて幸せな気持ちで溢れてるから悪いことではない。


動けないのだけは、なにかやらかすんじゃないかと不安だけどね!


「あれは…!」


「んー?

アイス食べたいの?」


車で販売してるアイスクリーム屋さん。

寒くなってきたとはいえ、公園の敷地内だからかそこそこ売れてる。


「んー、今は大丈夫…」


「そっかー。」


公園でずっと歩いてたらいつの間にか太陽が少し沈み始め、あと少しで夕方。

夜ご飯の時間も近いし我慢。


「そろそろ観覧車に行こうか!」


「うん、行こう…」


今日はすごく癒されたなぁ。


何故かずっと見続けられた水族館から始まり、神様が積極的に監視しなくても世界は平和だって事がわかったり、公園でエルフボディをリフレッシュ。

あの性格の悪い空間でたまったストレスが全部綺麗に消えたね。


「ふぁぁ…」


「眠くなってきちゃった?」


「うん…

リフレッシュ…」


考えてる事がエルフボディの言葉っぽくなって勝手に喋る。


そういえば、今晩からまた異世界侵略なのかな?


「うぅ〜…」フラフラ


「大丈夫?私に乗る?」


「う、うん…」


一日中動いてたとはいえエルフボディが疲れて眠くなるなんて珍しいな。

琴音さんに甘えておんぶしてもらう。


「やっぱりリースちゃんは軽いね。

これからもう少し食べたほうがいいかも?」


「そう、かなぁ…」


神様の事だし、

『リースたんは少女ボディこそ至高!』

とか言って、姿は変わらないようにしてる気がするなぁ。


「食べたいなって思った料理があったら私に言って、なんでも作ってあげるからね〜。」


「ありがと…」


あ〜、眠い…


「ごめん、少し…」


「いいよ〜。

着いたら起こすね〜。」


「うゆ…」


ーーーーー


「リースちゃーん、着いたよー。」


「ふぇ…?」


神様ワールドには飛ばなかったのか。

まぁ、多分神様達もどうするか話すので忙しいんだろうね。


「チケットは買ってあるから、次の次で乗れると思うよ。」


「楽しみ…」


今は完全に夕方で綺麗な景色が見えるはず。

もしかしたら半分ぐらい動いた所で太陽が沈んで夜景になるかもしれない、本当に楽しみだ。


「次の方どうぞー。」


目の前はカップル、後ろもカップル。


「次だね〜。」


ここら辺では有名なデートスポットなんだろう、親子も居るけど、カップルの方が多い。


そういえば周りから見たら私と琴音さんの関係ってどう見えてるんだ?


姉妹には見られないだろうし、歳の離れた友達とか?


いや、身長差が激しすぎてそれは無いな。


まず大人っぽく見える琴音さんが、ワンチャン小学生でも通じる私とどうやって知り合うんだよ。


なんて考えながら観覧車に乗って琴音さんと横並びに座る。

この観覧車は2、30分くらいで一周する。


「綺麗だね〜。」


まだ乗って3分も経ってないんですけど!

でもこの観覧車があるおかげか、周りに高い建物とかが無いから普段見れない景色ではある。


「リースちゃん。」


「んゅ…?」


「結婚とは違うか、ずっと一緒…は変わらないし、なんて言えばいいんだろ。」


「…?」


琴音さん、急になに言ってるんだろ?

これはもしかして…


「えっと、同居人?

うん、同居人からランクアップしたいなって思って…」


緊張してる?

というか琴音さんがしようとしてる事はなんとなく察したけど、全て声として出てるから残念な感じになっちゃってる。


よくよく考えれば、この2人きりのお出かけってデートだったのでは?!

そう考えると、もはや告白以外あり得ないこの状況にも納得がいく。


ヤバイ、顔がニヤける。

この状況でニヤけるのはダメ、無表情、無表情を維持するんだ!



〜白仁琴音〜


えまーじぇんしー えまーじぇんしー


自分でも何を言ってるのかわからない。

そして何を言いたいのかもわからなくなってしまった…!


「……」


声を掛けてからかなり経ってしまったのもあって、心なしかリースちゃんの目がジトーってなってる気もする。


観覧車もあと少しで半分、ヤバイ太陽が完全に沈む!

ムードも何もなくなってしまう!


「あー、えっとね。

その、ね…」


告白の言葉、考えておくべきだった。

付き合うって言うのはちょっと違う気がするし仮に断られたら立ち直れない、ずっと一緒はしょっちゅう言ってるし軽く見られちゃう気がするの!


「琴音…」


「はい!

なんでしょうか!」


終わった…

何も言わない私に痺れを切らしたんだろう、これから私はどうなるのか…


「ちょっと待って…」


スー ハー


私から顔を背けて深呼吸を始めた。


「よし…

いくよ?」


「う、うん!」


何が来るんだ?!


「好きです。

私とずっと共にあり続けてください。」


「……」


リースちゃんと一緒に過ごしてきて、ここまでスラスラと話すリースちゃんは初めてだ。

そして私は衝撃で動けなくなっていた。


「琴音…?」


はっ!

すぐに答えを返さなくては、でもどういう風に返せばいいのか…


いや、そんな深く考えなくていいんだ。


「もちろん、これからもよろしくね。

リースちゃん。」


「よろしく、琴音…!」


私に飛び付くように抱きついてきたリースちゃんを受け止める。


外の景色は太陽が沈んで綺麗な夜景へと変わった。

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