第145話 うっ、胃が…

〜国の偉い人〜


「秘書、もう私はダメかもしれない。」


「はいはい。

次はこの書類をお願いしますね。」


秘書が冷たい…

もうこの役職辞めたい、ここ最近の私の平均睡眠時間は驚異の3時間だからね?


「新しく4名、優秀な者をスカウトしてきました。

ただ、海外からの引き抜きなのでスパイ対策のため軟禁状態ですが。」


それ外交問題にならない?


「それは助かるよ。」


まぁ秘書の事だし大丈夫でしょう。


それより、秘書の繋がりが多すぎて底が見えない。

何処かの王族とか皇族じゃないよね?もしくは秘密結社の幹部とか…


そんな訳ないか!

いやぁ、ちょっと私疲れてたかもしれない、冷静に考えればそんなアニメみたいな事ある訳ないのに。


「はい、はい…了解です。」


でも秘書の正体は気になるな。

昔興味本位で探った事があるんだけど、速攻バレて睡眠時間1時間まで減らされてからは触れないようにしている。


「アメリカの魔法使い達がそろそろ到着するようです。」


「もう来るの?」


「はい。

向こうの政治家との会談、魔法使い達の顔合わせ、研究者の秘匿、スパイ対策。

やる事が更に増えました。」


まじか…


「…総理の退職届は何処に届ければいいんだっけ?」


「通すか通さないかは私の権限です。

早く働きなさい。」


秘書 権限 ヤバい 理由

で、検索っと…調べても出る訳ないか…


やるか、エナドリエナドリ…


美味い。


「そうだ。

いろんな部署から引き抜いてるけど、そっちの仕事は回ってるのか?」


「えぇ、もちろん。

ギリギリのラインはしっかりと見極めてます。」


ん?ギリギリのライン?

あっ…


「優秀な人材を最低限残し、無能を排除したので効率はかなり良いはずです。

ただ、ヘルプがこちらへ回ってくるでしょう。」


ヘルプ?!

まさか、こっちの人材が減っt……


「がっ!

胃、胃がぁ…」


「これ薬です。

早く飲んで働いてください。」


出たよ、秘書の持ってる謎の薬。

凄く効くんだけど、どんな成分なのか聞いても教えてくれない。


多分ヤバい薬。


「これも補充しないとですね。」


「私はもうその薬を飲みたくないよ…」


「確かに、少し飲み過ぎですね。

このままでは、役付けだけでなく薬漬けにもなってしまいます。」


「……」


うわぁ…

私が不甲斐ないせいで秘書に負担を掛けたんだ、私のせいで秘書が少しおかしくなってしまった!


「君疲れてるんだ。

少し仮眠してくるといい。」


「そこはゆっくり休めじゃないんですか?」


何も言わずにニッコリと笑う。

これだけで秘書には伝わるだろう。そう、君がいないと大変な事になるからごめん、と。


「…ほんと、働くのってクソですよね。」


「そうだな…」


コンコン


ノック、誰か来る予定あったか?


「来ましたね。」


秘書は知ってたのか…

教えてくれてもいいのに。


「どうぞ。」


「し、失礼します…」


入ってきたのはスーツを着た女性。

体震えてるんだけど、大丈夫?


「本日から、共に…ヒュッ…」


「ゆっくりで大丈夫ですよ?

落ち着いてください。」


そうそう、ゆっくりで。


「えっ、と、一緒に…ヒッ」


なんで私の顔見て怖がるんですかねぇ…


「こら!顔が怖いんですよ。

そんなに見つめて、ナインちゃんが可哀想だと思わないんですか?」


秘書さん?!

あなたそんな感じだったっけ?


「だい、大丈夫…

ナインです。よろしく、お願いします…」


「うん、よろしく。」


ナインさんか、秘書の勧誘だし少しビビりでも優秀なんだろうな。


少し経って……


「おい!

誰だよこの資料まとめた奴、とんだ無能じゃねぇか!」


それ私なんだよなぁ。

黙ってることもできるけど、すぐバレるだろうし恐る恐る手を挙げる。


「お前かよクソ!

付箋貼ったからそのように修正しろ、

3分以内だ、やれ!」


「わかりました!」


コ・ワ・イ

仕事すると性格変わるのかぁ…



〜カマー〜


『つまり、そちらの戦力では守護者に勝つのは難しいと?』


「えぇ、その通りです。」


『そうか…』


もう何回目か分からない会議。

何度も何度も話し合って、最終的な結論は守護者を排除する事は不可能ということ。


遅すぎる!

現場の私が無理だって言ってるんだから、本当に無理なのよ!


「増員を、いや…」


新しい戦力が来ても、有象無象なら意味がない。


私ですら苦労する守護者に加えて、第二の守護者まで現れたんだから。


戦力的にはどっちも強い、脳筋騎士2人とエイラと互角の戦いを繰り広げてたわ。

エイラが言うには、手加減されてたらしいけどね。


『なんだ?』


「なんでもないわ。

それよりどうするの?元の計画は既に破綻してる、このまま戦っても戦力を削られるだけよ。」


通信の向こう側は騒ついている。


恐らく、強行しようとする派閥と現状を維持して情報を集める派閥で揉めてるんでしょうね。


『鎮まれ…』


あの方だわ。

この会議の代表。私この人、少し苦手なのよね…


『カマー、拠点の建設状況はどうなっている。』


「後1ヶ月もあれば、要塞規模の物が出来上がるかと。」


『わかった。

皆聞いたな?1ヶ月後までは現状維持とする、カマーの隊には引き続き戦力をできるだけ削ってもらう。

意見のある者は?』


貴方に意見できる人がいる訳ないわ。


『では決まりだ。

今回の会議は終了とする。』


プツ…


「よっしゃぁぁ!

やっと終わったわ!」


今回も長い会議だったわ。

よし、現状維持と情報収集頑張りましょう。


あとエイラのメンタルケアもね…

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