第142話 真面目vs撮影

白仁朱音しらにあかね


「始まりましたね。」


「私達も準備しましょうか。」


目の前では、リースちゃんとリーナが戦ってます。

部屋の中で篭りながら


「いい?

できるだけ弱らせてから、声掛けする。そうすれば戻るかも。」


「それしか無いですか?」


「多分ね。」


私達は戦うリーナのサポートを頼まれました。


私は渡された道具でリースちゃんの動きを止めて、友美さんはリーナの強化らしいです。

らしいって言うのは、持ってる道具が楽器なんですよ。しかも勝手に音が鳴って演奏しています。


「瓦礫が飛んでくるかもなので、ちゃんと前を見ていた方がいいですよ。」


「わかりました。」


でも、これ見て避けれるんでしょうか。

2人の動きは早すぎて…


「あれ?」


「どうしました?」


普通に見える。

確かに速いんですけど、細かい動き以外は見えますし、こちら側に来る強い風も雰囲気でわかります。


「友美さん、私リースちゃん達の動きが見えるんです。」


私の言葉に少し驚いた様子の友美さん、2人の方向を見ながら


「確かに、かなりしっかりと見えます。

私達が受け取った魔道具の力でしょうか?」


考えられる原因は、やっぱりリーナに渡された魔道具ですね。


私が渡された物は全部で4つ。

リースちゃんを捕まえるための鎖

体が少し丈夫になるアクセサリー


あとの2つはよくわからない。

説明されても結果を曲げるとか、溜め込むとか、私には理解できなかった。


「アハハハ!

こっちだよリーナ。」


「そのノリ、お姉ちゃんにはすっごく似合わない、やめた方がいいかも。」


私もそう思います。

リースちゃんの、そんな笑顔は見たくなかったです。


「ひどいよー。」


棒読みだ、全く心がこもってません。


「ねぇ。

お姉ちゃんを返してくれない?」


「私、お姉ちゃんだよ?」


「それは嘘。

私は忌子について調べた。世界に干渉でき魔力を大量に得る代わりに、悪意に支配される。」


「そうなの?!」


「心が弱ったりすると支配されるんだよ。」


真面目な話しながら戦ってる…

お互いに全く当たらないし、疲れを感じてもいなさそう。


「この調子なら、なんとかなりそうですね。」


「それはどうでしょうか。」


安心しかけてたんですけど?!

私が見る限りだと、2人は互角ですし私の鎖さえ決まれば勝てると思ったんですけど、もしかしてやばいんですかね。


「リース様は明らかに手加減していますね、攻撃をしていません。

その証拠にリーナには怪我が全くありませんし、リース様は守りに徹しています。」


「!」


言われてから気づきました。

確かにリースちゃんが攻撃している所は見たことありませんし、魔法も全然関係のない場所に飛んだりしていました。


「これは一筋縄では行きません。」


不安を感じながらも、鎖へ魔力を込めて準備を進める。


あっ、そういえば偽リースちゃんを操っていた奴はどうなったんでしょうか。

もし見ているのなら、私達のサポートして欲しいですね。


「伏せて!」


飛んできた瓦礫をしゃがんで避ける。

今のはリースちゃんの声でした。リースちゃんの状態が変わっても、私の事を覚えてくれていたんだと少し嬉しくなってしまいました。



〜神様〜


『危ないよ〜。

それしまってよ、怪我しちゃうよ?』


『私は腕一本くらい余裕で治せる。

痛いかもだけど、お姉ちゃんの為だから、我慢して欲しいな。』


ふむ、演技してる感じは無いし、緊張感があって最高の作品が出来上がりそうじゃ。

しかし、あの人間2人組は強力な魔道具渡されてるとはいえ、闇堕ちリースたん相手によく戦えているのぉ。


『友美さん、私たち何すればいいんでしょうか。』


『魔道具のチャージが終わるまで待機でしょう。

勇気があるなら、あそこに透明ボール投げつけるのはどうでしょうか。』


『やりますかー。

はい、友美さんも。』


少し離れた所からの攻撃じゃが、あの2人が争ってる余波とか普通に避けておる。

あれ人間に避けられると思わないだが…


『イタッ!』


魔法使いじゃ無い方が被弾するも軽傷…

いや、なんでじゃ?


リーナの魔法だったが、あんなん普通の人間に命中したら運良くて骨折、殆ど即死じゃぞ。


「強化?

いや、補強かの?」


素のスペックがかなり上がっておる。

濃密な魔力に触れ続けたせいか?


「ワンチャン、愛による覚醒とか!」


いやぁ、それだったらロマンあるのぉ。


『ワオ…』


『捕まえたけど、どうしたら戻ってくれるんだろ。』


おぉ、リースたんが鎖に捕まっとる。


『んー、硬い!』


こう、なんと言ったらいいか…

すごくエr


まぁ、今はそんな事考えてる場合じゃないか。


今のリーナは少し油断しておるが、その鎖ではリースたんを抑え続けることはできんぞ。


ピキ…


ほら、もう鎖が引きちぎられ始めたぞ。


あの状態のリースたんの動きを封じるには、

部屋の効果を最大限使って、魔法でリースたんのスペックを落とさなければできんな。


『リーナ!

この鎖壊れそうです!』


『魔力を込めて耐えて!』


『ウッ!

すいません、無理です!』


やっぱりな。

手助けするべきか、もう少し動画を撮っておきたい気持ちもあるんじゃが。


リーナが居る限り、死人が出る事は無いじゃろうし。

リースたんの状態も儂の方で解除できる。


『これ使って!』


もうしばらく撮影してからまた考えるかの。

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