第131話 一緒にダンス!

〜エルフ〜


あれから、大体40分くらいずっと抱きしめながら頭を撫でてた。

そのうち落ち着いてきたのか深呼吸を始め、自身の身の危険を感じた。

抱きしめるのをさりげなく辞めて、少し距離取る。


「なんで離れるの?!」

「お風呂、入ってない…」

「じゃあ、今日の夜一緒に入ろう!」

「え…」

「入ろう!!」

「…うん。」


なんて事もありつつ、リーナの機嫌は治ったのだった。


「ふーん♪ふーん♪」


リーナは機嫌治るの早いね、エルフボディだったら最低でも3日は引きずるのに。


今は2人で横並びで座りながら、ピッタリくっ付いている。

歌に合わせてゆっくり揺れるのが心地いい。


ピピピピ


「ん…?」


何処からかアラームが聞こえる、リーナの腕からっぽいな。


「時間だ。

久しぶりにダンスしよう!」


なんの時間だったの?

今からやるのは別にいいんだけど、なんでこの時間?


「ダンス…?」


「姫よ、私と一曲踊っていただけませんか?」


まさかのロールプレイ、リーナの服装は燕尾服っぽい物になってた。


カチ


どうしたらいいかわからず固まってると、私の服装も変えられた。

全体はみえないけど、豪華だけど品のあるドレスを着てる。


待って、ダンスに誘われた時ってどうしたらいいんだ?!

エルフボディ知ってたりする?なら動いていいからさ、お願い。


「……」


動かないのかよ!

なんでだよ、少し前までは頭の中でこうしたい〜、って考えたら勝手に動いてたじゃん!

なんで今回は動いてくれないの…


「いや…?」


ほら!

リーナがロールプレイする余裕無くなってる、少しずつ目から光が消えてってるから!


待て待て、ダメだ…

今回に限ってはエルフボディは使い物にならない事が判明した。

絞り出せ私、知識を、それっぽい事を!


「喜んで…」


右手を差し出す。

引っ張られる様に立ち上がった。


こんな感じで、大丈夫だよね?


「ミュージック。」


ベットが消えて部屋が広くなる、パーティー会場のようになり周りには楽器が出現した。

この部屋は本当になんでもアリだな、私はもう驚かないよ。


うわ、始まる!

もう初心者の私でもわかる、リードしてくれてます。


「あれ?

お姉ちゃん踊るの久しぶり?」


リーナが不思議そうな顔して聞いてきた。


ごめんね。

エルフボディはともかく、私は初めてなんだよ。


「ワン、トゥー、スリー。」


リズムを教えてくれてる、

ありがとう…


「…お姉ちゃん。」


「な、に…?」


一曲踊り終わった時、少し微笑み目を合わせて言ってきた。


「また踊れる様になるまで、練習しよっか!」


NOとは言わせない圧を感じたよ。



ーーーーー


寂しい…


お世話係のお姉さんが来てからだいぶ経った。

最後にわかれてからリーナとは会えず、ご飯を持ってくる人にイジワルされるだけの毎日。


リーナとは会う前の生活に戻ったんだ。

一つだけ違うのはお姉さんが居ること、でも話しかける事はない。ずっと椅子に座って目を閉じながら過ごしてる。


夜遅い時間に透明な膜の中で眠ってるみたいだけど、私が起きて活動すると直ぐに起き上がる。


私以外にも、此処に居るはずなのに何も変わらない。


『ん〜〜♪ん〜〜♪』


あまりの寂しさに、教えてもらった歌を歌う。

こんな事しても意味なんかないし、お姉さんがイラついちゃうかもしれないのに、私はリーナとの繋がりを求めてしまう。


『それは王女様に教えてもらった、のですか?』


『!』


お姉さんが話しかけてくれた。

舞い上がりそうになる気持ちを抑える、また拒絶された時が辛いから。


その質問には控えめに頷く。


『そうなんですか。

その歌はもう少しテンポが速いですよ。』


そう言ってまた目をつぶり、ぴくりとも動かない。

歌にアドバイスをしてくれたのは、ただの気まぐれなのかな。


『ん〜〜♪ん〜〜♪』


私の歌声はリーナには全然及ばない。


それどころか歌詞ですらない。

それでも私の歌を五月蝿いと言わないし、アドバイスまでくれた、お姉さんの歌をいつか聞けるといいな。


ーーーーー



〜白仁朱音〜


「ふわぁ〜…」


「朱音ちゃん、眠そうだね〜。」


姉さんにあくびを見られた、不覚!


まぁ眠い理由はわかってるんですよね。

毎日夜中まで守護者の事を調べるのを、もう3日間続けてますから。


1日の睡眠時間は驚異の4時間!

完全に睡眠不足!


「夜眠れてないの?」


「えぇ、楽しいです。」


「…自分で何言ってるのか理解できてる?」


「えぇ、もちろんです。」


姉さんはたまにですけど変な事を言いますね。

そんなところも素敵です。


「私が好きな食べ物は?」


「リースちゃん。」


「くっ!微妙に間違ってない…!」


「バカやってないで早く食べな。

それと朱音はちゃんと寝るんだよ、リースが心配するからね。」


リースちゃんに心配掛けるのはダメだ。

私達の事を見れる状況かわかりませんが、もし見れるなら安心できる様な姿を見せないと!


「ごちそうさまでした…」


「はい、朱音は上にいって休みな。

直ぐに横になるのはダメだからな?」


「椅子に、座ってますよ。」


15分、いや10分は座ってましょう、それ以上は厳しい気がします。


「階段気をつけるんだよ!」


「はーい…」


足元がふらつく。

きちんと手すりを掴んでゆっくり、ゆっくり…




「朱音ちゃんとお母さん、ちゃんと会話が成立している!

なんで?」

「さぁ?」

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