第130話 偉い人と偉い人と胃薬

〜神様〜


儂らの2日間の全力捜索にも関わらず、リースたんはいまだに見つかっていない。


チャラ男はいつも通りなのだが、儂とロリ女神がリースたん不足で手が震える禁断症状が出始めた。

なぜロリ女神まで?

そんなに強固な関わりあったかのぉ…


見つからず落ち込んでいる神様は、珍しく現世の携帯で電話している。


『行方不明…ですか?』


「そうなんじゃよ。」


根回しタイム!

万が一の時、動けるようにするのは大事じゃからの。ある程度情報は共有せねば。


相手は凄く偉い人である『ファースト』。

神様からの電話はワンコールのうちにからなず出る、協力者の鏡。


「また襲撃来た時に守護者が現れなかったら、ネットとかテレビで叩かれるかもしれんじゃろ?」


『それを阻止する準備を?』


「概ねその通り。

それと出来るだけ被害が出ないようにして欲しい、守護者が悲しむからの。」


『かしこまりました。』


持つべきものは権力のある協力者。

神様がお願いしたい事の説明は終わり、他に話す事合ったかなと考える。

普段なら直ぐにでも切るところだが、最近あまり構ってないと思い、協力してくれてるし偶には雑談するか、という気持ちで通話を続けている。


「そういえば、他の奴らはどうなってるんじゃ?」


ここで言う他の奴らとは数字持ち達のこと。


『ケイトとナインがぶつかりかけましたが、襲撃が起こり、数字持ち達には特に影響なく終了いたしました。』


「そうか…」


話す事がない!

おかしいのぉ、儂こんなに喋れなかったっけ?


ファーストと神様の関係は、報告か指示を出す会話しかしない程度。

つまり上司と部下の関係なのである。急に上司が話しかけてくる、普段の関係次第だが少し怖いだろう。


「何か、聞きたいことはあるかのぉ?」


気まず過ぎる上司からの問い掛け。


『…では1つ、

守護者を拉致した存在について、教えていただければ…』


「守護者の妹。

拉致した理由は、詳しくは話せんが悲しいすれ違いなんじゃよ。」


『教えてくださりありがとうございます。』


「……」


『……』


再び無言の時間が過ぎる。


なんか、いらない気を回してしまった感じじゃな。


残念じゃ…

関わり合って間も無い頃は沢山話したが、儂らと違い、寿命のある人間にとって時間というのは残酷じゃの、嫌でも変わってしまう。


まぁコイツには寿命ないんじゃけどな!


「よし、それじゃあお疲れ。

頼んだぞ?」


『はっ!お任せください。』


神様が通話切る、神様からでないとずっと繋がったままになってしまうのだ。


「ふぅ…

戻るか、サボってるのがロリ女神にバレそうじゃ。」



日本の偉い人元・国の偉い人


「あぁ〜…」


回っている扇風機に向かって声を出す謎の遊び、皆も一度はやった事があるだろう。


「一国の首相が、そんな子供みたいな事しないでください。」


「すまん…」


だが大人になり、しかも仕事場で立場ある者がやる事など見た事ない。


「今回の撮影を強行したマスコミですが、どのような罰をお考えですか?

一応候補をいくつか考えておきましたが。」


強行したマスコミか。

守護者とケルベロスの戦いを妨害したとして会社ごと、もの凄い勢いで燃えている。幸いにも暴動などにはなっておらず、ひとまず安心している。


だが放置するわけにもいかない、ネットでは指示を出した者やアナウンサー、果てはカメラマンまで特定しようとする動きがある。

そんなことは決して許されない。罰はルールの元、正しく与えられるべきだからだ。


「ちなみに候補は?」


「守護者の魔法を知ってしまった件もありますし、軍属とする、という罰です。」


「じゃあそれで。」


ぶっちゃけ私が考えるよりも、秘書が考えた案を採用した方が全部上手く回るんだ。

私はお飾りの首相なんだよ。


「はぁ…

自暴自棄気味にならないでください、私は貴方の事を認めてるんです。」


初耳なんだが、私を認めている…

秘書が、あの秘書が?!


「守護者に凛とした姿で立ち向かい。」


あ、仕事の話じゃなくて。

立ち振る舞いの話だったのか、それなら納得だ。


「国際会議で堂々と出来る図太さ。」


ん?


「何を考えてるかわからないポーカーフェイス、なのに無駄に圧を与える顔!」


ちょっと…怪しいな、

本当に認めてるのか?


疑惑の視線に気づいたのか、秘書にしては珍しく少しだけ焦りながら話を止めようとしている。


「とにかく!

貴方にしかできない仕事もあります。それに私はあくまでサポートです、何か思った事があれば直ぐに言ってください、最適解を共に探しましょう。」


「あっはい。」


圧がすごいな。

まぁ実際に私は目の前の秘書に政治関係はおんぶに抱っこ状態だからな、これからも頼りにしていますよ。


…なんで首相になろうって思ったんだ。


思い返してみれば流されてここまで来た。

議員になったのは親の七光、偶然自分の意見が通り日本が少しだけ豊かになった、その功績でどんどん上へと、


こんな偶然があり得るのか?


「問題は次です。」


秘書は外で待機していた数名を呼び、ホワイトボードの前へと立つ。


「海外から魔法使い達が来ます。

魔法使い382人と、それぞれの国のサポートとして400人の総勢782人。

日本の魔法使いも合わせると884名になります、これは海外からの寄付もあり、日本へ新しく特区を設けることになりました。」


やっと落ち着けると思っていたんだがなぁ…


昨晩の事である。

海外の国家、魔法使いが現れた国から魔法使いを派遣するため準備をしてもらいたい、との連絡が。


直ぐに調べ、海外にある異界門の全てが機能を失った事と、門の機能が残った日本を守れと石板で指示が出たのが理由らしい。

もちろん魔法使い全員を送るわけではない、それぞれの国で50人ちょい。


これについては国会で議論をしている暇はなく、特例として首相の判断で動かせる。


だが、


「その話の前に胃薬は何処かな?」


「2番目の棚です。」


「ありがとう」


首相は度重なる仕事が忙しく、

疲労が溜まり、目の下の隈は消えず、まるでゾンビのように変わってしまっている!

ストレスで胃も痛くなり、すっかり胃薬とお友達になっていた。


(でも、アレで会議の時は顔色よくなるのが意味わかりませんよね。)


目の下にうっすらと隈が出来始めた秘書は、少し嫉妬した。

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