第127話 門の無力化 

〜神様〜


椅子に座り紅茶を飲むご老人、その姿はどことなく身分が高い、そんな印象を受ける。


ふぅ〜。

リースたんに会いたい、リーナちゃんとイチャイチャしてるとこ見たい…


まぁ考えてる事は別だが。


「そのクッキーくれ。」


「いいよ〜。」


儂の作った魔道具をフル稼働させても、良いところまで行くんじゃが逃げられて結局見つからんかった…


「そのクッキーくれ。」


「いいよ〜。」


作戦会議という名のお茶休憩中。

今回に関しては話し合っても意味などない、見つけるか見つけないか、探し出す方法を提案し、ガンバ!と言われ終了する。

たまに意見を求めるが解決策が出る事も稀である。


「なぁなぁ、あの部屋を無効化する方法あると思う?」


「「ない。」」


こんな感じ。


リースたんとリーナちゃんは、そこら辺の下級神と同じぐらい強いし、儂とチャラ男の魔道具も持ってる。

放置してても大きな怪我をしたりはしないとは思うが…


「そもそもさ、あの部屋はどうして作ったの?」


「あれは『〇〇しないと出れない部屋』を作った時の副産物だな。

好きすぎて監禁しちゃう、ってシチュエーションに使えると思ってあの倉庫に入れてた。」


「なんだそれ…」


今思ったが、あの倉庫にあった魔道具の大半はリーナちゃんに合ってるかもしれんのぉ。


「そろそろ探索に戻るぞー。」


「「はーい。」」


お茶会をしていた机を放置し元の作業位置へと移動する。


チャラ男以外は魔力を込めながら望遠鏡を覗き、すごく不思議な光景が広がっている。


見つからんのぉ。


覗いている景色は、森の中から急に海へ空へと視点がどんどん移動する。

本来なら、見つけたい場所か人物を想像しながら覗けば映るはず。


「はぁ…」


儂とチャラ男、こんなに見つからないレベルの魔道具を作った覚えはないんじゃが。

複数の魔道具を合わせたかのぉ?


「ん?」


「どうしたロリ女神。」


「!」ゲシッ!


脚で蹴られた。

仕方ないけどいい加減慣れてほしいのぉ…


「それで、どうしてんじゃ?」


「見間違いかもしれないんだけど、一瞬灰色の異界門が映ったんだよ。」


「門…あぁ、あれか。」


アレの色が変わるなんて聞いた事ないぞ、新しくできたとかなら別じゃが。


「日本の門、異常無し!」


念の為にチャラ男が調べ始めた。

手を動かし世界中の門の確認をしていく、日本を1番初めにその後に他を見ていくが、だんだんとスピードが遅くなる。


「いやマジじゃん。

灰色、というより石になってね?」


「え、本当だったのか?」


「一瞬で見分けた僕すごくね?」


望遠鏡から離れチャラ男の元へ、

画面には綺麗な装飾がついていた門が灰色になった姿だった。


「なんでこんなになってるんじゃ?」


「僕はわかんないな。」


「この前やったゲームに似た様な事が起こったな、敵の兵器無効化したら石っぽくなったし、あの門も使えなくなったんじゃね?」


やっぱりチャラ男は最高の親友じゃな、

儂の求める答えを毎回くれる。


しかし無効化って事は向こう側が諦めたのか、

いや待てよ?日本にある門に異常はないって言っておったな。


「チャラ男、儂とポジション変われ。」


「え〜、まぁいいけどよ。」


「悪いのぉ…」


嫌そうな顔してるのぉ。

チャラ男のやってた事は偽リースたんを動かすのと地上の監視っていう、めっちゃ楽な事だから交代したくなかったんだじゃろ。


リースたんが見つかる前に襲撃が始まったらどうするか…

異界門が1つに絞られたという事は負担が集中するという事、魔法使い達を集めておくか。


『この門は無効化された。

唯一残っている門へと向かえ、そこを守るのだ。』


石板に記入する、と。

これで魔法使い達が集まるじゃろ。



〜エルフ〜


ん…


目が覚める、この部屋の中には私1人しか居ない。

リーナはどこに行ったんだろう。


「さむ、い…?」


此処で過ごして寒さとか暑さはあまり感じなかったはず、なのに今は肌寒くてタオルケットとか布団がほしい。

あ、抱きつかれた時は暑かったけどね。


「……」


この部屋で1人になってたのは1番初めに目が覚めた時、外から歌が聞こえて今みたいに無音じゃなかった。


でも今は何も聞こえない、物音も私が体をちょっと動かしたりしないと聞こえない。


…何も聞こえないのは不安になる。


今なら脱出できるかもと考えたが、首輪に繋がってるチェーンが短くなっててベットから降りられても扉には届かない。


「リーナァ…」


こんな空間では寂しさで少しも待てず、扉に向かって声を出してリーナちゃんを呼んでみる。

もしかしたら、なに〜?って扉がすぐに開くかもしれない…


「……」


待っても来ない。


ベットの上で体を丸めて目を閉じる。

気分転換に楽しかったり嬉しかったことを思い浮かべる。


琴音さんと一緒に寝た事、うどんを作ってもらった事、オムライス作った事。


楽しかった記憶がどんどん浮かぶのと同時に、会いたいという気持ちが溢れ出る。

思い返せばこの体になってから1人になった事など殆どない、現世にいる時は琴音さん達が居てくれたし、眠った後も神様達と楽しく過ごしてた。


泣くほどではないが寂しい。

確かエルフボディの設定に『寂しがりや』というのがあったし、それが1人で過ごして少し気持ちが落ちる原因だろう。


私は目を閉じて楽しい記憶を思い浮かべてリーナちゃんが帰ってくるのを待ち続けるのだった。

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