第126話 リーナのイジワル!

〜エルフ〜


椅子も机も食器まで全部消え、部屋にはまたベットだけ。


「ふへへ、良い匂い…」


苦しぃ…


私はそのベットの上で、リーナに凄い力で抱き締められてます。

ちょっと暑い…


「また会えて良かったぁ…

あの人が言ってたのは嘘じゃなかった。」


「あの人…?」


疑問の呟きに私の胸元から顔が離れ、上目遣いで見てくる。


「再会した時に私を案内したお爺ちゃんの事だよ。

お姉ちゃんと2人で暮らせるんじゃ

って、言ってたのに変な結界に閉じ込められて…

もう絶対に消してやろう、って考えてたけど色々貰ったから許したんだ。」


おう、神様の事だったか…


勢いよく話すリーナは、私から見て少しだけ怒ってるように見える。

それと色々貰ったって部分が気になる、貰ったって事は神様がこの状況を作ったのか?それなら安心なんだけど。


「お姉ちゃんの首輪も貰ったんだぁ〜。」


「そうなんだ…」


「これ、凄いんだ。

例えばね…」


指でなぞる様に首輪に触りだした、前から後ろへゆっくりと移動し真後ろを触った時、


カチッ


と音がした。


「ーーー!」


声が!


何をしたのか聞こうとしたのに、口がパクパクするだけで声が出ない。


「パクパクしてて可愛い…」


「ーー!」フルフル


首を振って戻して欲しいと伝えようと頑張る、だけど伝わってなさそう。


「なぁに?」


口パクで声を戻して、とお願いし続けたがリーナは怪しく微笑むだけ。

もしかしてなくても楽しんでるな?


「じゃあゲームして成功したら戻してあげよう、やる?」


「!」コクコク


戻すための条件に特に考えることも無くすぐに飛びつく、リーナの提案するゲームだし命には関わらないはず、

どんなゲームやらされるのかわからないけど…


「ルール説明〜!」


パチパチと拍手をしながら、ゲームの内容説明が始まる。


「これを背中に乗せたまま、四足歩行で私のところまで来る。

簡単でしょ?」


「?」


そう言いながら取り出したのは、10cmくらいの透明な箱。

重さにもよるけど、結構簡単そうだな。


「じゃあ乗せるから動かないでね〜?」


「ー!」


え、重!

いや箱自体が実際に重い訳じゃない、ケルベロスとの戦闘中に起こった上から圧がかかったやつに似てる。

だけど威力は比にならない、正直腕を立ててるのでギリギリ。


グニィ…


その圧に加えて、ベットが柔らかいから手が沈んでうまくバランスが取れない!


「此処までだよー!

頑張ってー!」


「!」


いつのまにかベットが伸びリーナまでの距離は5メートルぐらいになってた、

バランスを取るのに必死で気づかなかったよ…


「スタート〜!

時間は無制限、落としたらその場からやり直し頑張れ〜!」


やるか…


「ーー!」


大声で気合を入れながらゆっくり進んでいく、まぁ声は出ないけど。


「がんばれ〜、がんばれ〜!」


腕が、プルプルしてきた…

まだまだリーナは遠い。


「ーー…」


髪の毛が絡まる…


体感で20分ぐらい歩き続けた。

圧による妨害、フワフワのベット、この2つをなんとか乗り越えもうすぐそこまで来た。


頭突きするみたいにリーナに飛びつく。


「はーい、おめでと〜!」


背中に置いてあった箱が取られて、とても強かった圧が消える。


「戻すね。」


首後ろに手が回されまた

カチッ

と聞こえた。


喋られるようになったのがわかって一言文句言おうと考えたが、その瞬間に悲しみが襲ってくる。


ヤバイ涙が溢れ…


「リーナの、イジワル!うわぁぁ!」


エルフボディがこんなに声出して泣くのは初めて、自分自身の事なのにちょっとビックリしてる。


「よく出来たね!

お姉ちゃん流石だよ。」


「ひどいよぉ…

違うと、思ってた、のにぃ!」


「凄いね。

よく出来たね。」


私の頭が撫でられる、少しずつ気持ちが落ち着いていく。

撫でられるのがとても安心する。


「うぇぇぇ…」


「疲れたよね、少し寝よっか。

私の歌も聞く?」


「ひっ、うん…えぐ…」


「いくよ。

〜〜〜♪」


頭を抱かれてベットに横になる。

この匂いとリズムすごく安心する、前にもこんな事があったような気がする…



「ふふ、順調…」



ーーーーー


今日は扉が開いた、リーナが来たみたい。


『来たよー!』


リーナは箱のようなよく分からない物を持っていた。


『今日はね、カリンバを持ってきたよ!』


『?』


『あれ、知らない?これは楽器だよ!』


カリンバという楽器らしい。


『これはねー、此処を弾くと』


ポーン…


『こんな感じで音が鳴るんだよ!』


『…!』


今まで聞いた事がない音だった。

綺麗で、清んでて、落ち着く。


『これをタイミングよく鳴らしていくの!

聞いてて?』


ポン ポポーン


リーナは練習中みたいで所々詰まっていたけれど、リズムはとても落ち着き心地よかった。


『本当は歌うんだよ。』


歌うって事がなにかを教えてもらった。


いつかリーナの演奏が上手になったら、リーナの演奏で私が歌う約束をした。

こんど歌詞付きの楽譜を持ってきてくれるらしい。


『あっ、もうこんな時間!

私帰るね!またこんど!』


もう帰っちゃうのか…

リーナが来てくれる日は時間が早く進んじゃう…


『……』


寒い、な…


1人になった部屋は一気に寒くなる。


『ん〜〜♪ ん〜♪』


今日は私が初めて楽器を見た日、そして歌詞はないけど歌を初めて歌った日だった。


ーーーーー

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